『 君たちはどう生きるか 』すべての人に問いかける!あなたは「どう生きる」?
『君たちはどう生きるか』
吉野源三郎(著)、 マガジンハウス
貧困、いじめ、勇気、学問…。今も昔も変わらないテーマに、人間としてどう向き合うべきか。時代を超えた名著、新装版で再び。(表紙裏)
「日本を代表する歴史的名著」とされる吉野源三郎さんの『 君たちはどう生きるか 』 。
1937年に書かれた本書ですが、80年以上経った現在でも愛読者が多く、2017年、初の漫画化が実現しました。また、同時に小説も新装版として発売されました。
すると、発売から4ヶ月も経たないうちに100万部を超えるという快挙を成し遂げたのです。
いったいどのような作品なのでしょうか。
あるべき人間についての問題提起
本書の魅力について、ジャーナリストの池上彰さんが冒頭部分でこのように語っています。
人間としての教養とは何かを示した上で、あるべき人間についての問題提起が登場します。
人がいじめられていたり、暴力を振るわれていたりしたときに、止めようとしても体が動かない。似たような経験をした人は多いはずです。身につまされる話ではないでしょうか。本当の勇気とは何かを考えさせられます。
この本は、そのとき自分はどうすればいいかを、まさに自分の問題として考えることになるのです。(p7)
一冊で「人間としての教養」を身につけることができるだけでなく、「あるべき人間」を考えるきっかけになる作品というのはなかなかないでしょう。
もともとは児童文学として発売された作品ですが、子ども向けという思い込みを捨てて読んでみてください。価値観が広がるのは間違いありません。
時代は違えども、人間は人間。根本の部分に違いはなく、古さを感じさせない点にも脱帽です。
また、本書は何度も何度も読者に問いかけます。「君はどう生きるか」と。
普段生きていると、そのような問題提起を投げかけられることはほとんどありませんよね。だからこそ、本書を読んでいただきたいのです。
本書が、今の自分に向き合う良いきっかけになると確信しているからです。
「コペル君」という名の由来
主人公のコペル君は中学二年生。「コペル君」という名は、本名ではありません。
成績はたいてい一番か二番。人を笑わせて喜ぶ無邪気ないたずらをするのが好きです。元気いっぱいの男の子ですが、自分が小柄であることをかなり気にしているという一面もあります。
キーパーソンとなるのが「叔父さん」。コペル君のお父さんが2年前に亡くなったことを機に、コペル君一家は郊外に引っ越し、近所に住む叔父さんと交流が深まりました。
本書には、各章の最後に必ず「おじさんのNOTE」が載っています。
コペル君が何か新しい経験をする→叔父さんに話をする→話を聞いた叔父さんが、コペル君にメッセージを送る、という構成となっているのです。
潤一君。
今日、君が自動車の中で「人間て、ほんとに分子みたいなものだね」と言ったとき、君は、自分では気づかなかったが、ずいぶん本気だった。
ほんとうに、君の感じたとおり、一人一人の人間はみんな、広いこの世の中の一分子なのだ。みんなが集まって世の中を作っているのだし、みんな世の中の波に動かされて生きているんだ。(p28)
「おじさんのNOTE」は、約5ページほどですが、この世の真理が詰まっていると言っても過言ではありません。
コペルニクスによる地動説、ニュートンのリンゴの話、ナポレオンの運命など、偉人たちを引き合いに出しながら、大切なことを説いています。
たとえば、コペルニクスによる地動説であれば…
自分たちの地球が宇宙の中心だという考えにかじりついていた間、人類には宇宙の本当のことがわからなかったと同様に、自分ばかりを中心にして、物事を判断してゆくと、世の中の本当のことも、ついに知ることができないでしまう。大きな真理は、そういう人の目には、決してうつらないのだ。(p32)
自分たちの地球が広い宇宙の中の天体の一つとして、その中を動いていると説いたコペルニクス。
叔父さんは、天動説と地動説の説明にとどまらず、それが人生にとってどんな影響を与えるのか、といったところまで踏み込んでいます。
自分を中心として世界は回っているのではなく、自分は世の中の一分子だと知る。
その経験を忘れて欲しくないと、叔父さんは潤一くんを「コペル君」と呼ぶようになったのでした。
「日本を代表する歴史的名著」を読もう
ミリオンヒットとなった「 君たちはどう生きるか 」。その面白さをぜひともご自身で体感してみてくださいね。
アンパンマンの作者、やなせたかしさんも「生きるヒント」がたくさん詰まった本を書いています!