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近視の原因は読書ではない? 近視に関する新発見


更新日:2016/4/7

読書には良いことも多いですが、悪いこともあります。

その代表例が「目が悪くなること」です。

日常においても「メガネ」とは、学者や勉強、読書といったイメージを想起させるシンボルとして使われていることが多いと思います。

こうしたメガネに関する固定観念の背後にあるのは、「近くを見続けると目が悪く(近視に)なる」という考えではないでしょうか。
実際私も近視もちですが、ゲームや読書のせいだと考えていました。

しかし、近視に関する調査が進むと、面白いことがわかってきました。

 

1.日本は近視大国

近視の発生には地域差があり、世界でもその人口が多い地域はアジアです。

アメリカでは、若年層のおよそ半数が近視であるのに対し、中国の若者はなんと90%が近視。さらに韓国の19歳以下の近視発生率は、実に95%だと報告されています。
もちろん、シンガポールや日本も例外ではありません。

2050年には世界人口の半数が近視となるという報告もなされ、これから近視はますます増えていくことが予想されています。

 

2.近視の原因は眼軸長にあり

近視の主な原因は、眼軸が伸びることです。
目は水晶体の厚さを調整することで眼軸長を伸縮させ、遠くのものや近くのものにピントを合わせます。

眼軸長とは、角膜から網膜までの長さのこと。
眼軸長が長すぎると、遠くのものにピントを合わせようとして水晶体を薄くしても、網膜の前に焦点が来てしまいぼやけてしまいます。
この状態が「眼軸性近視」と呼ばれる一般的な近視です。

 

近視が進行し、レンズ度数がマイナス8D(ディオプター)をこえた状態は「強度近視」に分類され、網膜剥離や緑内障のリスクファクターとなります。

もう一つの近視のタイプとしては、水晶体の屈折異常が原因の「屈折性近視」。以降は、より一般的な「眼軸性近視」について述べていきます。

 

3.眼軸長の決定要因

では、眼軸長が伸びる原因はなんでしょうか。まずは「遺伝」について見ていきましょう。

遺伝はたしかに眼軸長の決定要因にはなりますが、完全に遺伝によって決まるわけでもないようです。そのことを示すものとしてイヌイットの例が挙げられます。

1969年、アラスカのイヌイットを調査したところ、大人世代では131分の2に近視発生が確認されたのに対し、子供世代では半数以上が近視であることがわかりました。
遺伝による変化にしては急激すぎるため、この近視の増加を遺伝的要因に帰することはできません。

当時イヌイットの生活様式も変化していたことも鑑みると、なにか後天的要因が近視に影響していることが考えられます。

それでは、その後天的要因とは「近くを見過ぎる」ことが原因でしょうか。

 

歴史的な近視の原因として「近くを見過ぎること」を挙げたのは、天文学者ヨハネス・ケプラーでした。

ケプラーはひどい近視を持っていました。彼は目の構造についての研究を残しており、自身の近視の原因は「著述をするときに眼を近づけすぎたためである」と考えました。
以降、読書やテレビなど、近くを見過ぎることが原因であると一般的に信じられています。

しかし、直接の因果関係を証明した論文はなく、近視の原因であるとははっきりいえないようです。

 

ちなみに、スマートフォンやパソコンが近視の原因であるとよく言われていますね。
しかし、スマホの登場以前から近視の増加はみられ、とくにスマホやパソコンが近視要因になっていることを示す科学的に有力な調査は現れていません。

 

以上をまとめると、「遺伝」は近視の原因となります。しかしこれではすべてを説明することはできないようです。

一方で、「近くを見過ぎること」は近視の後天的原因であると考えられていますが、科学的な論拠に乏しい、ということになります。

それでは他に原因があるのでしょうか。近年の近視研究の結果からは、近視と相関関係のある新しい原因が浮上しました。

 

4.近視と太陽光の関係

2007年のオハイオ市立大学が子供を対象にしたおこなった追跡調査の結果、「屋外活動」に費やした時間が長い子供ほど近視の発生が抑えられることがわかりました。

この結果はオーストラリアでおこなわれた別の研究とも合致し、屋外活動が近視を防ぐのではないかという意見が2000年代後半から有力視されています。

なぜ屋外活動が近視を防ぐかについては、「太陽光を浴びるから」という意見が強いですが、一方で「外にでると遠くを見る頻度が多いから」という意見もあります。

 

その後、日照と近視の関係を調べるため、2009年のドイツのチュービンゲン工科大学がヒヨコを使った実験をおこないました。

実験は、明かりの強さのみが異なる2つのヒヨコのグループを作り対照実験をおこなうというものです
そして「明かりの強いグループで近視の発生が有意に減少した」という結論に至っています。

なぜ光が近視を抑えるか、についてはまだはっきりした説明は与えられていません。

有力な仮説は、光によって網膜でドーパミンが分泌され、眼軸の伸びを防ぐというものです。
この仮説を支持するものとしてヒヨコの目にドーパミン抑制剤を導入すると、光による近視発生の減少がみられなくなるという実験結果があります。

 

5.近視に関する、近年の調査結果

屋外活動と近視の関係について、人間の子供を対象にした調査が盛んになっています。

中国や台湾の子供を対象におこなわれた調査では、屋外活動の時間を長くすることで、そうでないグループより近視の発生が抑えられることがわかっています。

しかし前述の通り、光が近視を抑えるメカニズムはまだ仮説の段階。調査に用いる外出時間のデータは自己申告のアンケートによって得られたもので、正確性に欠けるという批判もあります。

また、目が成長段階にある子供に関する調査のみで、大人に対して効果があるかどうかも不明です。今後の研究が期待されますね。

 

まとめ
読書は近視を招かない?

私も読書やパソコンなどのデスクワークが近視につながると考えていましたが、近年の近視実験からは否定な結論が得られていることが分かりました。
代わりに登場したのが、「太陽光」というのもまた意外な感じです。

というのも、紫外線は目に悪いものだと思っていたからです。

今のところは近視と外出時間の関係がわかっているものの、メカニズムは不透明。大人の近視に効果があるかもわかっていません。

しかし、外出することの効果はなにも目に限った話ではありません。外出すれば運動不足の解消にもなりますし、太陽光を浴びることは鬱病の予防・改善にも効果的です。

 

読書が直接近視につながることはありませんが、読書に夢中になるあまり、家にこもってしまいがちなのも事実。

気分転換に明るい場所で本を読んだり、すこし遠くの書店まで歩いて行ったりしてみてはいかがでしょうか。

 

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