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近視の原因は読書ではない? 近視に関する新発見


myopia-discovery読書には良いことも多いですが、悪いこともあります。その代表例が「目が悪くなること」です。日常においても、メガネというのは、学者や勉強、読書といったイメージを想起させるシンボルとして使われている場面に遭遇することも珍しいことではないと思います。

こうしたメガネに関する固定観念の背後にあるのは、「近くを見続けると目が悪く(近視に)なる」という考えではないでしょうか。実際、私も近視もちですが、ゲームや読書のせいだと考えていました。しかし、近視に関する調査が進むと、面白いことがわかってきました。

 

1.日本は近視大国

近視の発生には地域差があり、世界で近視が多い地域はアジアです。

アメリカでは、若年層のおよそ半数が近視であるのに対し、中国の若者の90%が近視で、韓国の19歳以下の近視発生率は実に95%だと報告されています。シンガポールや日本も例外ではなく、10代後半の時点で約80%が近視です。2050年には世界人口の半数が近視となるという報告もなされ、これから近視はますます増えていくことが予想されております。

 

2.近視の原因は眼軸長にあり

ganzikucyou近視の主な原因は、眼軸が伸びることです。目は水晶体の厚さを調整することで眼軸長を伸縮させ、遠くのものや近くのものにピントを合わせます。

眼軸長とは、角膜から網膜までの長さのことで、眼軸長が長すぎてしまうと、遠くのものにピントを合わせようとして水晶体を薄くしても、網膜の前に焦点が来てしまいぼやけてしまいます。この状態が眼軸性近視と呼ばれる一般的な近視です。近視が進行し、レンズ度数がマイナス8D(ディオプター)をこえた状態は「強度近視」に分類され、網膜剥離や緑内障のリスクファクターとなります。

 

もう一つの近視のタイプとしては、水晶体の屈折異常が原因の「屈折性近視」があります。以降は、より一般的な「眼軸性近視」について述べていきます。

 

3.眼軸長の決定要因

では、眼軸長が伸びる原因はなんでしょうか。これまでは「遺伝」と「近くを見過ぎること」が主な原因と考えられてきました。まずは「遺伝」について見ていきましょう。遺伝はたしかに眼軸長の決定要因にはなりますが、しかし完全に遺伝によって決まるわけでもないようです。そのことを示すものとしてイヌイットの例が挙げられます。

1969年、アラスカのイヌイットを調査したところ、大人世代では131分の2に近視発生が確認されたのに対し、子供世代では半数以上が近視であることがわかったのです。遺伝による変化にしては急激すぎるため、この近視の増加を遺伝的要因に帰することはできません。当時イヌイットの生活様式も変化していたことも鑑みると、なにか後天的要因が近視に影響していることが考えられます。それでは、その後天的要因とは「近くを見過ぎる」ことが原因でしょうか。

歴史的に近視の原因として、「近くを見過ぎること」を挙げたのは、天文学者ヨハネス・ケプラーでした。ケプラーはひどい近視を持っていました。彼は、目の構造についての研究を残しており、自身の近視の原因は著述をするときに眼を近づけすぎたためである、と考えました。以降、読書やテレビなど、近くを見過ぎることが原因であると一般的に信じられていますが、直接の因果関係を証明した論文はなく、近視の原因であるとははっきりいえないようです。また、よく本を読む人が近視になるという相関関係はあるものの、これは読書が近視をもたらすというよりも、むしろ近視だから読書に向かう、という因果関係の逆転によっても説明できるため、読書を近視の原因であるという結論を結びつけることはできません。

ちなみに、スマートフォンやパソコンが原因であるとはよく言われることですがスマホ登場以前から近視の増加はみられ、とくにスマホやパソコンが近視要因になっていることを示す科学的に有力な調査は現れていません。

以上をまとめると、「遺伝」は近視の原因となりますが、すべてを説明することはできず、一方で、「近くを見過ぎること」は近視の後天的原因であると考えられていますが、科学的な論拠に乏しい、ということになります。それでは他に原因があるのでしょうか。近年の近視研究の結果からは、近視と相関関係のある新しい原因が浮上しました。

 

4.近視と太陽光の関係

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2007年のオハイオ市立大学がおこなった、子供を対象にした追跡調査の結果、「屋外活動」に費やした時間が長い子供ほど近視の発生が抑えられる、という関係がわかりました。この結果はオーストラリアでおこなわれた、別の研究とも合致し、屋外活動が近視を防ぐのではないか、という意見が2000年代後半から有力視されています。なぜ屋外活動が近視を防ぐかについては、「太陽光を浴びるから」という意見が強いですが、一方で「外にでると遠くを見る頻度が多いから」という意見もあります。

その後、日照と近視の関係を調べるため、2009年のドイツのチュービンゲン工科大学が、ひよこを使った実験をおこないました。実験は、明かりの強さのみがことなる二つのひよこのグループを作り、対照実験をおこなうというもので、明かりの強いグループで近視の発生が有意に減少した、という結論に至っています。ほかの動物を使った実験でも、光の近視防止効果が観測されています。
なぜ光が近視を抑えるか、についてはまだはっきりした説明は与えられていません。有力な仮説は、光によって網膜でドーパミンが分泌され、このドーパミンが眼軸の伸びを防ぐというものです。この仮説を支持するものとして、ひよこの目にドーパミン抑制剤を導入すると、光による近視発生の減少がみられなくなる、という実験結果があります。

 

5.近視に関する、近年の調査結果

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屋外活動と近視の関係について、人間の子供を対象にした調査が盛んになっています。中国や台湾の子供を対象におこなわれた調査では、屋外活動の時間を長くすることで、そうでないグループより近視の発生が抑えられることがわかっています。
しかし、前述の通り、光が近視を抑えるメカニズムはまだ仮説の段階ですし、調査に用いる外出時間のデータは自己申告のアンケートによって得られたもので、正確性に欠けるという批判もあります。また、目が未だ成長段階にある子供に関する調査のみで、大人に対して外出することが、はたして効果があるかどうかも不明です。今後の研究が期待されます。

 

まとめ
読書は近視を招かない?

この記事では、読書で気になる「近視」の話題を取り扱いました。私も読書やパソコンなどのデスクワークが近視につながる、とあたりまえのように考えていましたが、意外にも、近年の近視実験からは否定な結論が得られています。代わりに登場したのが、「太陽光」というのもまた意外な感じです。というのも太陽光の含む紫外線は目に悪いものとして知られ、目に良いというイメージとは全く対極にある存在だと思っていたからです。

今の所は、近視と外出時間の関係がわかっているものの、メカニズムは不透明で、大人の近視に効果があるかもわかっていません。しかし、外出することの効果はなにも、目に限った話ではありません。外出すれば運動不足の解消にもなりますし、太陽光を浴びることは鬱病の予防・改善にも効果的です。
読書が直接近視につながることはありませんが、読書に夢中になるあまり、家にこもってしまいがちなのも事実。気分転換がてら、外の明るい場所で本を読んだり、すこし遠くの書店まで歩いて行ったりしてみてはいかがでしょうか。