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世界一長い小説と日本一長い小説とは?


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みなさんがはじめて読んだ小説はなんでしょうか。私はたしか『人間失格』だったと思います。えっ、理由?薄いからです。

読書遍歴の多くは薄くて短い本から始まるものですよね。まさか大河小説として知られるトルストイの『戦争と平和』で小説ライフのスタートを飾った…なんて人はいないでしょう。100ページ、200ページ、300ページとしだいにステップアップしていく方が多いのではないでしょうか。しかし、分厚い本にももちろん終わりはあります。

そもそも、もっとも長い小説はなんなのでしょうか。
調べてみると『戦争と平和』が可愛く見えるほどのモンスター級の小説が見つかりました。

 

「世界一長い小説」はどのくらい長い?

♦『失われた時を求めて』À la recherche du temps perdu(1913~1927)
著者:マルセル・プルースト

『失われた時を求めて』は「読んだことはないけど知っている」の代表格ではないでしょうか。かくいう私も、あまりの長さに恐れをなして、1ページも読んだことがなく、「マドレーヌを食べて昔を思いだす話」程度の認識しか持っておりません。

どのぐらい長いかというと、(Wikipedia情報で恐縮ですが)フランス語原書で3,000ページ、日本語訳では400字詰め原稿用紙10,000枚だそうです。ギネスブックで「世界最長の小説」として認められており、その文字数は9,609,000に登ります。全七部からなり、それぞれにスターウォーズばりのかっこいい表題が付けられています。参考までに挙げると、第一部『スワン家の方へ』、第二部『花咲く乙女たちのかげに』、第三部『ゲルマントのほう』第四部『ソドムとゴモラ』、第五部『囚われの女』、第六部『逃げ去る女』、第七部『見出された時』となっています。

これだけの大作ですが、文学史的評価は高く、また多くの読者を獲得しています。もちろん日本も例外ではありません。その証拠に、1930年代の初訳からコンスタントに新訳が登場し、2010年には吉川一義訳の岩波文庫版のシリーズがスタートし、同じ時期に高遠弘美訳で光文社古典新訳文庫の出版も出ています。

ちなみに、この作品のあまりの長さを風刺した、 “Summarize Proust Competition”(プルースト要約選手権)というモンティ・パイソンのスケッチが存在します。その長さは日本人をもうんざりさせたのか、Google検索では『失われた時を求めて』を入力すると、「失われた時を求めて 長い」がサジェストされます。

どうでもいいですが、私は『失われた時間』とは、読者がこの大作を読みきるために費やした時間を指しており、『失われた時を求めて』とは読後の虚脱感を揶揄しているのではないかと邪推しております。

失われた時を求めて』(岩波文庫)
失われた時を求めて』(光文社古典新訳文庫)

 

♦『ル・グラン・シリュス』 Artamene ou le Grand Cyrus (1649~1653)
著者:マドレーヌ・ド・スキュデリー

ギネスブックではプルーストの『失われた時を求めて』が世界最長の小説として登録されていますが、実はさらに長い小説があります。『ル・グラン・シリュス』は女性作家マドレーヌ・ド・スキュデリーが、兄ジョルジュ・ド・スキュデリーの名前で出版した17世紀フランスの大大大長編。全10巻からなり、その総語数はなんと約2,000,000語。

プロットもかなり複雑で、登場人物は400を数え、100を超える場面が交錯する、並大抵の気力では太刀打ちできない作品です。膨大な長さにもかかわらず、フランス文学史における価値は高く、ネット上では、全文に注釈を施したテキストがアップされており、無料で読むことができます。(http://www.artamene.org/)※ただし、フランス語。

また、フランス語が読めても、(読破するという意味で)なかなか読めません。ちなみに全文をあげているこのサイト、 “making the unreadable readable”、すなわち「読めない本を読めるようにする」ことを理念に掲げています。

 


 

世界一長いとは言えなくとも、負けず劣らず長い作品は『戦争と平和』に限らず多く存在します。その中から、長さと文学価値を持った作品をいくつかピックアップします。

♦『特性のない男』Der Mann ohne Eigenschaften(1930~未完)
著者:ロベルト・ムージル

オーストリアの作家ムージルが残した唯一の長編小説ですが、未完に終わっています。その長さだけではなく、晦渋な文章、広すぎる話題も相俟って、読破が困難な作品です。日本語翻訳も出ており、加藤二郎訳が入手しやすいようです。ドイツ文学圏では、Arno Schmidt作のZettel’s Traumが1,334ページ、トマス・マンの『ヨセフとその兄弟』Joseph und seine Brüderが1,492ページの長さを誇ります。
特性のない男』(ムージル著作集 松籟社刊)

♦『非現実の王国で』In The Realms of the Unreal
著者:ヘンリー・ダーガー

謎多き作家ヘンリー・ダーガー(1892-1973)の15,000ページ、全15巻に及ぶ大長編で、未だまとまった形では刊行されていない作品です。ダーガー19歳の時に執筆を開始し、死の直前まで執筆が続けられた、まさにライフ・ワーク。彼は作品を公表せず、『非現実の王国で』もまた、彼の死後に「発見」されました。続編『シカゴのさらなる冒険』 Crazy House: Further Adventures in Chicagoもまた、10,000ページ近い超大作になっています。

 

日本一長い小説は?

ここまで海外の小説を紹介してきましたが、では日本一長い小説はなんでしょうか。滝沢馬琴の古典『南総里見八犬伝』でしょうか。中里介山の『大菩薩峠』でしょうか。

調べてみると、栗本薫の『グイン・サーガ』という100巻を超える作品だそうです。2004年、ギネスブック「世界最長の小説」への申請がなされましたが、残念ながら未完であることを理由に、却下されています。また、日本一長い時代小説は『大菩薩峠』ではなく、山岡荘八の『徳川家康』だそうです。

グイン・サーガ』(ハヤカワ文庫JA)

 

世界一長いタイトルの作品は?

デフォー作の『ロビンソン・クルーソー』の初版につけられたタイトルはかなり長いことで知られています。そのタイトルはこちらです。

The Life and Strange Surprizing Adventures of Robinson Crusoe, Of York, Mariner: Who lived Eight and Twenty Years, all alone in an un-inhabited Island on the Coast of America, near the Mouth of the Great River of Oroonoque; Having been cast on Shore by Shipwreck, wherein all the Men perished but himself. With An Account how he was at last as strangely deliver’d by Pyrates.
(自分以外の全員が犠牲になった難破で岸辺に投げ出され、アメリカの浜辺、オルーノクという大河の河口近くの無人島で28年もたった一人で暮らし、最後には奇跡的に海賊船に助けられたヨーク出身の船乗りロビンソン・クルーソーの生涯と不思議で驚きに満ちた冒険についての記述)

ロビンソン・クルーソー』(岩波文庫)

 

タイトルだけで物語の内容がしっかり読み取れてしまうほどの長さですね。
モンスター級の小説、みなさんもチャレンジしてみはいかがでしょうか。

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