芥川賞と直木賞の違いって?|それぞれの違いとおすすめ作品紹介
更新日:2018/8/27
毎年、1月と7月に同時発表される芥川賞と直木賞。
どちらも「有名な賞」ということは知っていても、何が違うのか知らない方も多いのではないでしょうか。
ここでは、芥川賞と直木賞はそれぞれどんな賞なのか、何が違うのかをご紹介していきます。
芥川賞とは
芥川賞は正式には、「芥川龍之介賞」といいます。
「芥川龍之介賞」という名前ではありますが、実はこの賞、芥川龍之介が創設した賞ではありません。
芥川賞を創設したのは、芥川龍之介の友人で「文藝春秋」の創設者の菊池寛。この賞は、芥川龍之介の功績を記念してつくられた賞なのです。
受賞作品は、文藝春秋に事務所がある「公益財団法人 日本文学振興会」の選考委員により決定されます。
【関連記事】芥川賞のびっくりエピソード
直木賞とは
直木賞の正式名称は「直木三十五賞」。「なおきさんじゅうごしょう」と読みます。
芥川龍之介にくらべて知名度は高くはありませんが、直木三十五も作家であり、菊池寛の友人です。
1935年、直木賞は芥川賞と同時に創設されました。選考の時期や、受賞者に贈られるものも芥川賞と変わりません。
【関連記事】直木賞・直木三十五とは、どんな賞で誰なのか?
芥川賞と直木賞の違いとは
選考メンバーが違うものの、創設時期や副賞などに違いはありません。
では一体、芥川賞と直木賞は何が違うのでしょうか。
■芥川賞
対象者……新人作家
対象作品……短編~中編(明確な規定はない)
対象ジャンル……純文学(「芸術性」や「形式」が重んじられた文学作品)
受賞作品の掲載雑誌……「文藝春秋」
2015年上半期(第153回)の芥川賞は、お笑い芸人でもある又吉直樹氏が受賞したことで話題になりましたよね。
そのときの選考委員、山田詠美氏が「又吉くんうらやましい」と発言したように、新人や若手作家のときにしか受賞のチャンスがないのです。
■直木賞
対象者……中堅作家、またはベテラン
対象作品……短編~長編作品
対象ジャンル……大衆小説(「芸術性」よりも「娯楽性」に重きを置いた小説)
受賞作品の掲載雑誌……「オール読物」
もともとは直木賞も新人作家に贈られていましたが、徐々に中堅作家に贈られる賞になりました。
ちなみにどちらも、公募による賞ではありません。
「よし、この作品を芥川賞に応募しよう!」といったことはできないのですね……。
受賞作を読んでみよう!
芥川賞と直木賞の違いがわかったところで、ぜひ受賞作を読んでみてください!
筆者がぜひ読んでほしいと思う作品をご紹介します。
■芥川賞おすすめ作品
『送り火』
高橋弘希(著)、文藝春秋
2018年上半期(第159回)芥川賞は、高橋弘希氏の『送り火』。東京から東北に引っ越した中学生の暴力的な遊びが横行する日常を描いた作品です。
繊細で、不吉の描写が上手い、純文学の王道と評価されています。
『火花』
又吉直樹(著)、文藝春秋
お笑い芸人である又吉直樹氏が受賞したことで話題となった『火花』。売れない芸人が天才・神谷に惹かれ弟子入りを志願するという物語。
深みがありながらも読みやすく、純文学といわれると構えてしまう人にもおすすめです。
『苦役列車』
西村賢太(著)、新潮社
芥川賞を受賞すると人生が一変するといわれています。『苦役列車』の作者である西村賢太氏も、芥川賞の受賞で有名になりました。
プライドが高く他人を見下している男の、生きる日々を描いた作品です。
■直木賞おすすめ作品
『ファーストラヴ』
島本理生(著)、文藝春秋
2018年上半期(第159回)直木賞を受賞した島本理生氏の『ファーストラヴ』。
父親を殺害した女子大生の動機を臨床心理士の女性が明らかにしていく作品で、文章の繊細さや深さ、リアリティの高さが評価されました。
『プラナリア』
山本文緒(著)、文藝春秋
「無職」をテーマに描かれた短編集。人生に悩む女性たちの葛藤や日常を、リアルに切り取った作品です。
なんだかスッキリしない終わり方なのに、なんとなく共感してしまうことでしょう。
『下町ロケット』
池井戸潤(著)、小学館ほか
直木賞はエンターテイメント作品が対象なだけに、ドラマ化や映画化でも成功している作品も少なくありません。
なかでも話題となったのが池井戸潤氏の『下町ロケット』。
中小企業の社長が、会社の社員とともに試練を乗り越えながら生き延びていく物語。非常に痛快な小説です。
文学作品に触れるきっかけに
芥川賞や直木賞は、作家にとってスターダムに上がるきっかけになります。
しかし、普段本を読まない人にとっては、本を手にとるきっかけになるひとつではないでしょうか。気になった作品があれば、ぜひ読んでみてくださね。
過去の芥川賞・直木賞受賞作はこちらをチェック!