直木賞・直木三十五とは、どんな賞で誰なのか?
更新日:2019/7/18
本好きではなくても、多くの人が知っているであろう文学賞「芥川賞・直木賞」。
『羅生門』などで有名な芥川龍之介もまた知っている人は多いと思いますが、では直木賞の“直木”は、一体誰なのかご存知ですか?
ドキッとした方、ご安心を。私も「直木三十五」と名前に数字が入っているという事しか知りませんでした。
今回は、そんな意外と知らない「直木賞」と「直木三十五」について、また最新の直木賞受賞作もあわせてご紹介します。
直木賞とは?
「直木賞」は通称名であり、正式には「直木三十五賞(なおきさんじゅうごしょう)」といいます。
単行本、各新聞・雑誌として出版された大衆小説の中で最も優秀な作品に贈る賞として、1935年に芥川賞(芥川龍之介賞)とともに創設されました。
創設したのは、文藝春秋の創業者である菊池寛氏です。
直木賞は芥川賞ともに年2回、7月と1月に受賞作が発表されます。また、受賞作として該当する作品がない場合は、「該当作なし」ということもあります。
直木賞について、ザックリとわかりましたでしょうか?
では次は直木三十五とはどんな人物なのか、みていきましょう。
直木賞と芥川賞の違いとは?
直木賞と芥川賞、同時に発表される賞ですが、一体何が違うのでしょうか?
まずひとつにジャンルの違いがあります。
直木賞は「大衆小説」、芥川賞は「純文学」です。
また、作品の長さにも違いがあります。
芥川賞は短編、中編作品が対象でありますが、直木賞は長編も含まれるため、とくに長さは決められていません。
このような名誉ある作品をダブルで受賞したいという誰も成しえたことのないことにチャレンジしたい!と思っても、そもそもジャンルが違うためダブル受賞は無理な話のようです。
しかし、両方の賞の候補に選ばれた過去は4度ありますから(第39回までですが)、叶わなくはないのかもしれませんね。
【より詳しい違いを知りたい方は】芥川賞と直木賞の違いって?
直木三十五(なおき さんじゅうご)とは?
直木三十五(なおき さんじゅうご)
本名:植村宗一(うえむら そういち)
1891年2月12日~1934年2月24日没
出身地:大阪府大阪市
明治から昭和初期に活躍した小説家で、小説の執筆のほかにも脚本や映画監督としても活動した直木三十五。
名前の「三十五」は、本人の年齢がもとになっています。
31歳のときに「直木三十一」という名前でデビューしてから、毎年誕生日を迎えるごとに「三十二」「三十三」……と、ペンネームも変えていたとのこと。
30歳を過ぎると自分の年齢も忘れちゃいますもんね!(ポジティブ)
しかし、名前を読み間違えられることが何度もあり、直木賞の創設者である菊池寛にもペンネームの変えすぎでお叱りを受けたことから「直木三十五」で定着させたそうです。
ちなみに、直木三十五が他界した時の年齢は43歳でした。
名字の「直木」は、本名の「植」を分解したのが由来だそうで、ユーモアのある作家さんだったことが伺えますね。
直木三十五の代表作は?
そんなチャーミング(勝手なキャラ設定)で、名誉ある文学賞の由来となった直木三十五は、一体どんな小説を書いていたのか、気になったので調べてみました。
お由羅騒動を描く『南国太平記』
『南国太平記』
直木三十五(著)、KADOKAWAほか
幕末に薩摩藩で起こったお家騒動、お由羅騒動を描いた物語。映画やドラマ化もされ、映画は10作も作られた直木三十五の代表作です。
あのドラマの原作『黄門廻国記』
言わずと知れた『水戸黄門』の原作!(月形龍之介主演映画作品)。一気にスゴさを感じました。
このほかにも、多くの著書や作品を残しているそうです。
絶版となり、なかなか手に入らない作品も多いかもしれませんが、本好きの方なら一作は読んでおきたい作家さんですね。
第161回 直木賞受賞作品を紹介!
第161回(2019年上半期) 直木三十五賞の受賞作をご紹介します。
第161回受賞『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』
『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』
大島真寿美(著)、文藝春秋
直木賞を受賞したのは、大島真寿美さんの『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』でした!
浄瑠璃作者の近松半二の半生を描いた傑作。
ちなみに『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』は、「うず いもせやまおんなていきん たまむすび」と読みます。
~あらすじ~
父に連れられて観た浄瑠璃に魅せられた成章(半二)は、近松門左衛門の硯を使って浄瑠璃を書くことに。歌舞伎とともに盛り上がっていた浄瑠璃だが、徐々にその人気は衰退していく。
そんな中でも書いて、書いて、書きまくった半二の運命は――。
第161回 直木賞ノミネート作品
このときノミネートされた方は全員女性! これは芥川賞も含め史上初めてのことだそうです。
『平場の月』朝倉かすみ、光文社
『トリニティ』窪美澄、新潮社
『落花』澤田瞳子、中央公論新社
『美しき愚かものたちのタブロー』原田マハ、文藝春秋
『マジカルグランマ』柚木麻子、朝日新聞出版
(50音順、敬称略)
「直木賞」歴代受賞作は、どんな作品がある?
歴代受賞作をかいつまんでご紹介! ※敬称略
■第1回(1935年上半期)
受賞作:『 鶴八鶴次郎』『風流深川唄』『明治一代女』川口松太郎
■第50回(1963年下半期)
受賞作:『巷談 本牧亭』安藤鶴夫、『塵の中』和田芳恵
■第100回(1988年下半期)
受賞作:『東京新大橋雨中図』杉本章子、『熟れてゆく夏』藤堂志津子
■第150回(2013年下半期)
受賞作:『恋歌』朝井まかて、『昭和の犬』姫野カオルコ
■第160回(2018年下半期)
受賞作:『宝島』 真藤順丈
全160回中(2019年5月現在)、受賞作がなかったのは28回、第136回(2006年下半期)以降は「該当作品なし」は出ていません。
歴代直木賞作品を読もう!
当たり前のように耳にしていたけれど、実はよく知らなかった「直木賞」「直木三十五」。
直木賞はベテラン作家の受賞が多く、読書に慣れていない人でも読みやすい作品がたくさんあります。この機会に最新の受賞作はもちろん、過去の作品にも触れてみてはいかがでしょう?
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