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鴻上尚史『孤独と不安のレッスン』|価値観を変えて、より良い人生を。


更新日:2016/5/10

今、あなたは、一人でこの記事を読んでいるかと思います。あなたは一人です。

仮に、あなたは自分の部屋で、この記事を読んでいるとします。
部屋には誰もおらず、あなたは一人です。孤独です。

 

次に、教室や会社にいると想像してみてください。

周囲は、気心知れた仲間同士でワイワイとランチタイムを楽しんでいます。その喧騒の中、あなたは一人で昼食をとっています。
あなたは一人です。孤独です。

 

両者とも孤独なのは同じです。が、孤独の感じ方が違うはずです。

後者において、恥ずかしいと思ったり、みじめだと感じる人は少なくないと思います。一人で食事をとっている自分が、どう思われているか不安になる人もいるでしょう。

もうお分かりですね。苦しいのは、孤独である状態ではないのです。
「一人はみじめだ」という思い込みが、他人を求めてしまうことが、苦しいのです。

 

孤独と不安を感じることなく生きることは不可能です。それならば、孤独と不安を友としようじゃないか。そして、より良い人生を生きていこうじゃないか。
というのが、今回ご紹介する本『孤独と不安のレッスン』。

今回のコラムでは、本書に掲載されている23のエッセンスのうち、3つを紹介します。

 

「本物の孤独」のススメ

『孤独と不安のレッスン』表紙

孤独と不安のレッスン
鴻上尚史(著)、大和書房

本書は、このような冒頭部分から始まります。

孤独には、「本当の孤独」と「ニセモノの孤独」があります。
「本当の孤独」とは、例えば、この本を読み終わった後、一人で、「孤独ってなんだろう?」と考えることのできる孤独です。

「ニセモノの孤独」とは、本を閉じた後、たとえば、すぐに誰かに電話やメールをします。一人であること、孤独であることが、みじめで、淋しくて、耐えられないと思っている孤独です。
(はじめに・p3)

 

「本当の孤独」は一言で言うと、自身との対話です。自身との対話のメリットとは何なのでしょうか。

 

自身との対話は「自分が本当は何をしたいのか」を露わにしてくれます。

また、インプットしたものを噛みしめる時間となり、あなたの成長に繋がります。どんなに良い本を読んでも、インプットを重ねても、一人で噛みしめる時間がないと自分のものにはならないからです。

「本当の孤独」は恐ろしいものではありません。むしろ、あなたに幾多の価値を与えてくれることなのです。

 

そうは言っても、身近な場所で、一人になってもいいと思える勇気を持つことは難しいかもしれません。
それならば、知り合いのいない土地で恥ずかしくない孤独を体験してみるのはどうでしょうか。

スマートフォンを弄り、虚飾し、画面の向こう側の誰かに向かって言葉を投げかける。
その行為は「ニセモノの孤独」の権化でしかないということを、本書を読めば知ることができるはずです。

「ニセモノの孤独」を断ち「本当の孤独」を知ることは、生き方をうんと楽にしてくれることでしょう。

 

「悩むこと」を「考えること」にシフトし、不安を軽減する

生きているといろんなことが起こるのが、人生です。常にあなたの周りに存在する、心配や不安という感情。どう折り合いをつけていけばいいのでしょうか。

 

著者は自身に問いかけるべきだと言います。

「今、あなたが抱えている問題を、あなたは考えていますか、それとも悩んでいますか?」
「その問題は、トラブルですか、不安そのものですか?」と。

 

なぜなら「考えること」と「悩むこと」、「不安」と「トラブル」は似て非なるものだからです。

著者の言葉を借りてみましょう。

悩むとあっという間に時間が過ぎます。そして、何も生まれていません。「どうしようかなあ…」と堂々巡りを続けるだけです。
考える場合は、時間が過ぎたら過ぎただけ、何かが残ります。とりあえず、何かやるべきこと・アイデアが生まれるのです。(p104)

不安とトラブルは違います。
トラブルは、問題が具体的なのです。
けれど、不安には、じつは、やることはありません。(p96-97)

 

とはいえ、悩んでも仕方がないと分かっていても、ついつい悩んでしまう人はいるでしょう。

それなら、「悩む」ことを「考える」にシフトするのはどうでしょうか。考えると、やるべきことやアイデアが生まれます。

それらを一つ一つ実現していくことで、いつのまにか不安が消え去っているはずです。

 

自分の想像力が自分を一番傷つけていると知り、不安を軽減する

少し、考えてみてください。

あなたが、信頼している人から直接悪口を言われることと、信頼している人が悪口を言っていたよと友達から聞かされること。
どちらが苦しくて、傷つくことだと思いますか?

 

前者の「直接悪口を言われる」方が、激しくショックを受けるかもしれません。

ですが、よくよく考えてみると、後者の方が長く深く傷つくことなのではないでしょうか。

信頼している人は、どんな風に自分のことを言っていたのだろう?何と言われていたのだろう?これからどうすればいいのだろう?と、無限ループに陥ります。

 

本書ではこの2つの違いについて、以下のように言及しています。

目の前であなたの悪口を言うのは、直接、殴られたり切られたりした外傷のようなダメージです。
が、「山田さんがあなたの悪口を言ってたよ」と聞くのは、毒を飲まされたようなダメージです。
外傷は、派手なダメージですが、じつは、毒薬に比べて回復は早いのです。

ですが、毒は、放っておけば、いつまでも効き続けます。
それは、あなたの想像力に終わりがないからです。あなたの想像力は、あなたが一番傷つく妄想をあなたに与えるのです。

あなたの想像力が、妄想を大きく育てるのです。(p121)

 

不安を大きくするのは、あなたの想像力でしかありません。自分で勝手に自分を縛りつけ、苦しくなっているのです。
つまり、逆の発想をすれば、不安は自分次第でコントロールが可能ということです。

不安で仕方がなくなったら、自分の思い込みが行き過ぎているのでは?と振り返る。
そうすると不安は少し軽減されるので、気が楽になるということを本書では教えてくれます。

 

それでも「ひとりはみじめ」と思ってしまうあなたに、読んでほしい

私が初めて本書を読んだとき、「本当の孤独」を真に理解することができませんでした。
なぜなら、どれだけ考えても「ひとりはみじめ」と思ってしまうからでした。

 

「ひとりはみじめ」という考えを消すこと。
「友達が多い人は魅力的な人」「友達が多いことは無条件でよいこと」と勘違いしてしまうこと。

それらの思い込みを消すのは容易くはありません。

 

この理由は本書でも書かれていますが、私たちは無意識に「友達が多いことは無条件でよいこと。友達が一人もいないことは、無条件で悪いこと」という価値観を刷り込まれているからです。

それは、幼いころから 「一年生になったら、友達100人できるかな♪」と歌わされ、大人たちに「友達できた?」とお約束のように聞かれることからも明らかです。

そんな私たちが「ひとりはみじめ」という考えを消すのは、難しいに決まっています。それでも、ぜひ本書を読んでほしいと思います。

 

自分の心がけ次第で、孤独と不安は友になり「ひとり」を楽しんで生きていけるのです。

本書で「孤独と不安のレッスン」を体験し、より良い人生を送ってくださいね。

今回ご紹介した書籍

孤独と不安のレッスン
鴻上尚史(著)、大和書房