『2050年の技術 英『エコノミスト』誌は予測する』|数年後、世の中はどうなる?
更新日:2018/1/21
『2050年の技術 英『エコノミスト』誌は予測する』
英『エコノミスト』編集部(著)、文藝春秋
長期的視点でモノを考えると得るものが多い。本書はそんな発想から生まれた。二〇五〇年を予測することで、今後世界を形作るうえで核となる力は何か、ということがわかる。(中略)
当然ながら、二〇五〇年のテクノロジーがどのようなものか、完全な形で知ることはできない。三〇年前にアップル、アマゾン、フェイスブック、グーグルが席巻する今日の状況を見通すことが不可能であったのと同じように。
それでも、質の高い予測を試みるのは知的刺激に富む作業だ。今回は『エコノミスト』誌のジャーナリストに加えて、科学者、起業家、研究者、SF作家の協力を仰いだ。こうして本書は実に多様な視点から今後数十年にわたり技術がどのような発展を遂げ、われわれにどのような影響を及ぼすかを見通すものとなった。―編集長 ダニエル・フランクリン(p10)
本書は、「〇〇年後の世の中はどうなっているだろう?」誰もが一度は考えたことがあるテーマを深く掘り下げた一冊。
『エコノミスト』誌による書籍なので、内容は簡単ではありません。
ですが、ドラえもんやSF小説といった近未来を描いた作品や、新しいものが好きな方(私はその一人です)ならば、心躍らせワクワクしながら読んでいただけることでしょう。
知的好奇心をくすぐられる『2050年の技術』
本書は、三部制・各六章の、計十八章にて成り立っています。
テーマは、タイトル通り「2050年の技術(テクノロジー)」。
作中には、バーチャル・リアリティ、AI(人工知能)、自動運転車、民間の宇宙旅行、遺伝集編集など、人類にとっての新たな未来がぎゅっと詰まっています。
本書が取り扱う内容の一例を挙げてみましょう。
・テクノロジーがもたらす可能性とは、リスクとは(人間の脳とインターネットが接続、ARを眼球に組み込む……など)
・テクノロジーが基幹産業にもたらす変化(農業はテクノロジーによってどのように変化する?医療はどう変わる?……など)
・投資家は新たなテクノロジーをどうやって見つけるのか、今は何に投資しているのか。
とにかく知的好奇心をくすぐられる良書なのです。
2050年、人間の脳はインターネットに接続する
今回のコラムでは、個人的にかなりの衝撃だった第6章「政府が『脳』に侵入する」を取り上げたいと思います。
2050年、人間の脳はインターネットに接続され、図書館、スーパーコンピュータ、宇宙望遠鏡と直結するようになるかもしれません。本章の一部を引用してみたいと思います。
かつて臓器を作るには、培養皿で細胞から組織を育てるしかなかった。それが今では、自動車や航空機、スマートフォンの部品のように、細胞は臓器の形をした骨格(足場)に、
3Dプリンターを使って正確に配置できるようになった。われわれの身体もある種の骨格である。まもなく、病気になったり老朽化した組織を新しいものと交換し、メンテナンスできるようになるだろう。また、ウェットウェア(人間の脳)も、いずれアップデート可能になるだろう。(p128)
2017年の現在では、まったく想像がつかない世界ですよね。
でも、アメリカ国防省の研究部門である米国防高騰研究計画局(DARPA)を中心に、脳へのデジタル出入力システムが開発されているのは事実なのだとか。脳とデジタル装置がつながれば、もしかすると、失ってしまった聴覚や視覚を取り戻すことができるかもしれません。
再生医療は日進月歩の勢いで発展し続けています。
ただ、同時に、スパムやマルウエア、ウイルスも一緒に取り込んでしまうリスクがあるので、実際に導入されるためにはまだまだ時間はかかるようです……。
このように、本書では最先端のテクノロジーが約400ページにわたって披露されています。興味のある方はぜひお手にとってみてくださいね。
姉妹編もぜひチェックを
なお、本書の姉妹編『2050年の世界』では、人間動態や宗教から、経済、文化まで、幅広い分野における『メガチェンジ』を取り上げています。もし興味がある方はそちらも読んでみてはいかがでしょう?
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