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文豪人気投票No.1!太宰治について


こんにちは!コラムスタッフ・アオノです。

2017年10月にブックオフオンラインの公式Twitter(@bookoffonline)で開催した文豪人気投票に、たくさんのご参加、本当にありがとうございました!

結果は、夏目漱石と太宰治、接戦の末、まさかの同点1位!実に熱い3週間でございました。

今回は、文豪人気投票No.1の一人、太宰治について、作品やエピソードも踏まえ、ご紹介します!

 

太宰治とは

太宰治を知らない人はあまりいないと思います。

ですが、どんな人生を送ったか、まではあまり知らなかったりするものですよね。

そこでまずは、太宰治の経歴をおさらいしておきましょう!

 

太宰治はペンネーム

「太宰治」はペンネームで、本名は「津島修治」といいます。

ペンネームの由来については、太宰は色々なことを言っているみたいで諸説ありますが
「万葉集の太宰権帥大伴の何とかっていう人が酒の歌を詠っていて、酒が好きだからここから取った。修治はどちらもおさめる、なので、二つもいらないから治にした」
とインタビューで答えているそうです。

太宰権帥大伴の何とか、という曖昧な言い方がなんとも面白いですが、太宰権帥大伴の何とかさんとは、大伴旅人のことだそうです。

さて、太宰治、出身は青森県津軽群、生まれたのは1909年(明治42年)で、今から108年前のこと。学生の頃から、芥川、泉鏡花、菊池寛などの著書を読み、16歳の時『校友会誌』に処女作「最後の太閤」を発表して、創作活動を始めます。
16歳で雑誌に掲載され、その後文学仲間の友人と同人雑誌『蜃気楼』を創刊……なんとアクティブ!意欲的ですよね。

16歳といえば、現代なら高校生。雑誌に載るような小説を書いた、ともなれば、今だったら大きなニュースになっていたことでしょう!

 

自殺未遂と心中未遂を重ねる日々

太宰といえば、度重なる自殺未遂・心中未遂が有名ですが、20歳の時に、とうとう初めての自殺未遂、カルモチン自殺未遂を起こします。
カルモチンとは、睡眠薬のこと。この時は一命を取り留めました。

翌年、バーの女給・田部あつみ(田部シメ子)と鎌倉でカルモチン心中を図りますが、彼女は亡くなり太宰ひとりが助かります。なんということでしょう……心中しようとして、片方が助かるケースですね。田部あつみは太宰の作品『道化の華』に登場する、心中の相手「園」のモデルになったと言われています。

その後、大学も卒業できず、仕送りも打ち切られそうなので、新聞社の入社試験を受けるも不合格になってしまった太宰は、鎌倉で首つり自殺を図りますが、こちらは未遂で終わります。

その2年後には、内縁の妻、初代の不貞にショックを受け、初代とカルモチン自殺未遂を起こします。こちらも未遂で終わりました。

 

太宰はその人生で、計5回、自殺未遂・心中未遂事件を起こしていると言われており、5回目の心中によりこの世を去っています。

 

芥川賞候補、そして入水自殺へ

急性盲腸炎のため手術を受けた太宰は、腹膜炎を併発します。腹膜炎の痛み止めに打ったパビナールが習慣化し、パビナール中毒に苦しみながらも『逆行』が第一回芥川賞の候補に選ばれました!しかし受賞は叶わず……太宰は結局、一度も芥川賞を獲れませんでした。
井伏鱒二の紹介により、石原美智子と結婚式を挙げ『富獄百景』『葉桜と魔笛』などを発表します。
そして、1948年『人間失格』を書き終えたのち、山崎富栄と玉川上水に入水し、39歳で、その生涯を閉じました。

39年の人生ですが、なんてドラマチックなのでしょう。数々の名作を世に残し、未だにファンの多い太宰治作品は、このような人生から生まれた作品なのですね。

 

さて、経歴をおさらいしただけでも、これだけ壮絶な太宰の人生。

その経歴のせいか、数々のエピソードが語り継がれる太宰ですが、その中から3つ、私が特に面白いと思ったエピソードをご紹介します。

 

『走れメロス』と熱海事件

太宰の代表作といえば『走れメロス』。
みなさま読んだことがありますか? 教科書にも載っている代表作なので、読んだことがある方も多いと思います。

『走れメロス』とは、町の人を苦しめる暴君ディオニスにとらえられ処刑されることになったメロスが、妹の結婚式に出席するため、友人セリヌンティウスを人質とし、3日の猶予を願い出て、友の為、ひたすら走る物語。

『走れメロス』は、ドイツ人の詩人フリードリヒ・シラーの詩『人質』をベースとして書かれています。
それとは別に、実は『走れメロス』は、太宰と、太宰の友人 檀一雄との間で起きた「熱海事件」が関係していると言われています。

それでは熱海事件とは、どんな出来事だったのでしょうか?

 

熱海事件とは?

昭和11年の終わり頃、熱海の村上旅館に仕事で行っていた太宰。内縁の妻・初代が、金がない太宰を心配し、友人の檀一雄に、金を持って様子を見に行ってもらえるよう頼みました。
檀が太宰を訪ねたところ、太宰は檀を歓迎し、こともあろうか熱海で豪遊して、初代からもらった金も使い果たしてしまうのです。

太宰は檀に、旅館で待っていてくれるよう頼み、金を工面するため東京へと帰っていきました。しかし数日経っても戻ってこず、痺れを切らした檀が東京に探しに行くと、荻窪の井伏鱒二の家で井伏と将棋を打っていたそうです。

檀が怒ると太宰は「待つ身が辛いかね、待たせる身が辛いかね」と言ったのだとか。

檀は人質みたいなものですよね。これで太宰が急いで帰れば、まさに『走れメロス』!しかし太宰は帰らなかった。そして言い訳じみたことまで言ったのです。

待たせる方も辛いとは思いますが、待つ方はもっと辛かったでしょうね!

メロスとは違い、とんでもない友達ですが『走れメロス』を読んだ檀は、あの熱海の旅行が、太宰が『走れメロス』を書く重要な心情の発端になったのではないかと思い、幸福に思ったと語っています。

メロスのように太宰は帰ってきませんでしたが、檀のその言葉は、まさに「友情」ではないかと、思わずにはいられません。

 

そんな太宰ですが、最近様々な書簡が発見されて、また新たな太宰の顔が見えてきました。

そのひとつが、芥川賞を懇願する手紙です。どのような手紙だったのでしょうか?

 

芥川賞くださいの話

太宰は、最初の芥川賞の選考にて『逆行』が候補にあがったのですが、受賞を逃してしまいました。そこで、太宰が選考員のひとりであった佐藤春夫に、4mもある巻紙の手紙を送りました。
その内容は「佐藤さん、私を忘れないで下さい。私を見殺しにしないで下さい」というもの。つまり「芥川賞をください」という懇願の手紙でした。

受賞させてくれ、という懇願の手紙を送るって、今じゃあまり考えられない話ですよね。
それにしても4m……佐藤春夫もさぞ驚いたことでしょう。

結局、太宰は芥川賞を一度も獲ることができませんでした。

こんなに熱い想いを持っていたのだから、獲ってほしかったですよ、芥川賞……!

 

佐藤春夫に4mもある手紙を書いた太宰は、佐藤春夫だけでなく、同じく選考委員だった川端康成にも、懇願する手紙を書いていました。しかし手紙だけでなく、川端康成に向けて、ある文章を雑誌に掲載したのです。

 

『川端康成へ』

川端康成が太宰の作品を文藝春秋で批評したのを受けて、太宰は、文藝春秋が発行していた雑誌「文藝通信」に文章を掲載しました。

タイトル『川端康成へ』

呼び捨ての上に名指し!すごいですね!そして内容もなかなか過激です。

「事実、私は憤怒に燃えた。幾夜も寝苦しい思ひをした。小鳥を飼ひ、舞踏を見るのがそんなに立派なのか。刺す。さうも思つた。大悪党だと思つた」というもの。

過激な言葉と川端康成への皮肉が綴られていますが、よほど悔しく、よほど腹がたったのでしょうね。

しかし太宰はこの後、あらゆる名作と呼ばれる小説を世に送り出しました。芥川賞が獲れなかったということが、少なからず太宰のその後の創作に影響を及ぼしたことは間違いなさそうです。

だからこそ、沢山の太宰の作品を現代でも読むことができているのかもしれませんね。

最後にわたしのオススメの一作をご紹介します!

 

深い愛と憎しみの物語
『駆け込み訴え』

太宰治の作品の中で、最も発行部数が多いのは『人間失格』であり、今も売れ続けているヒット作です。

ちなみにわたしは『駈込み訴え』が一番好きです!この作品、実は太宰が口述したものがそのまま書き取られた、つまり口述筆記で書かれた作品なのだそうです!

 

『走れメロス』より「駆け込み訴え」
新潮社

 

「申し上げます。申し上げます。旦那さま。あの人は、酷い。酷い。はい。厭な奴です。悪い人です。ああ。我慢ならない。生かして置けねえ。」で始まる短編で、すべて口語で書かれた作品。

ある男が駆け込んできて「あの人」がどんな人で、どんなことをして、自分がその人にどんなことをしてやったのかと、切々と訴える話です。

愛と憎しみは表裏一体であり、愛するがゆえに憎しみが深くなるのだ、と恐ろしく思った一作です。
口語でまくしたてられるように語られる「訴え」の息もつかせぬ疾走感と、なめらかな言葉の運びは爽快です。そして「あの人」の固有名詞は一切出てこないのに、その人物が誰なのかを私たちに教えるその筆力はさすがです。

すべて太宰の口から出た疾走感のある言葉だと知って読むと、ますます興味深い一作。
ぜひ太宰の言葉を感じてみてください。

 

太宰作品を読もう

いかがでしたか?

太宰治ファンのみなさんにとっては、もう知っているよ!というお話もあったかもしれません。
太宰治のエピソードは、パンチがあって私は大好きです。

みなさんは太宰作品で何が一番好きですか?

最近太宰読んでないなぁ……という方も、これを機にぜひまた読んでみてくださいね。

 


今回ご紹介した書籍

走れメロス新潮社