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買うか、買わないか。本を買うメリットとは?


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“買うか買わないか―――”。 本屋で必ず行き当たる問題です。お財布に余裕があるなら良いですが、生活費や家のローン、少ないお小遣い、何につけても世知辛い世の中にあって、本を買うという行為は、あたかもハムレットに劣らぬ実存的問題となっています。かたや、本を買うか否かの問題が切実なあまり、本を買った後のことを冷静に考えることができず、積ん読になることもしばしば。

そこで、私の経験と、世の賢人たちのアドバイスを参考に、本を買う基準となるような“本を買うことのメリット”を考えてみました。

 

1.所有できる

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「なにを当たり前な」というようなことですが、人間の所有欲、コレクター精神はものすごいものです。

世の賢人たちも、本を所有する喜びを語っています。こころみに、齋藤孝さんの著書から引用してみましょう。

齋藤さんは、『読書力』(岩波新書)において「本は借りるものではなく、買って読むものだ」と主張しています。齋藤さんによると、本は背表紙が大切で、自分の本棚に並ぶ本の背表紙を見ることが、脳への刺激となり、読書体験を記憶にとどめる上で効果的である、といっています。また、本棚をもつ喜びについて、

「自分の本棚を持つのは楽しい。自分の世界が広がっていく様子が手に取るようにわかるからだ。」(『読書力』p.70)

「本来は過ぎ去って跡形もなく消え去っていってしまう砂のような時間が、しっかりと本という形でそこに凝縮されて残っている。その安心感がうれしかった。」(『読書力』p.71)

と述べていらっしゃいます。読書好きなら誰しも、こうした安心感を本棚から感じたことがあるのではないでしょうか。

 

2.再読できる

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「図書館に行っても再読はできるじゃないか」。…その通りです。

しかし、ふと読みたくなったときに手元にある、ということは重要です。しかも、かつて読んだ本と同じ本で再読したほうが、再読の効果が高いです。というのは、シミのあるページは覚えやすいといった類の話があるように、ちょっとした本の物理的特徴が記憶の引き出しを開く鍵になるからです。

例として、ギッシング著『ヘンリ・ライクロフトの私記』春-12章を挙げてみます。(岩波文庫 平井正穂訳)

「自分の本よりも図書館から借りた本でよんだ方が書物はよめるという人がいるのも私は知っている。だがこれは私には理解できないことだ。たとえば、私は香をかいだだけで自分の本の一冊一冊がすぐ分かるのである。ただ鼻先をページの中につっ込んだだけで、私にはすべてのことがぴーんとくるのだ。」(p.46)

程度の差こそあれ、みなこうした経験はあるのではないでしょうか。こうした本そのものの魅力は電子書籍にはないものです。

本の内容に対してのより深い理解のために再読が必要な方も多いのではないでしょうか。再読の重要性については、ショーペンハウアー氏やヘッセ氏ら、古今多くの読書の達人が述べていることですが、ラフカディオ・ハーン氏は “On Reading”(読書について)においてこのことを簡潔に述べています。

ハーン氏は、「良書の尺度は、一度だけしか読みたいと思わないか、それとも、さらに繰り返して読みたくなるかどうか」であり、真の良書とは「読む回数をかさねるほどに、われわれは新しい意義と新しい美を見出すもの」であると述べています。

 

3.マーキングができる

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本にラインを引く派、引かない派の議論はさておき、可能性の問題として、本を借りる時点でマーキングという選択肢は消失します。まれに、図書館の本に書き込みがあったりしますが褒められた行為ではありません。

本を買うことはすなわち、「マーキングの権利を購入する」ということでもあります。マーキングについて、再び斎藤孝さんの読書術を紹介します。

斎藤さんが、『読書力』のなかで紹介しているのは、三色ボールペンによるマーキング法です。「おもしろい:緑」「まあ大事:青」「すごく大事:赤」と、印象と各色を対応させるマーキング法で、マーキングを通じて読解力も鍛えられるそうです。マーキングのメリットはやはり、ともすれば受け身がちになる読書行為を、積極的行為に転じることができるという点にあるでしょうか。

 

4.読む動機になる

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本は読むものですが、なかなか読めないものです。テレビもおもしろい、ネットもおもしろいといった世の中にあって、なかなか精神を緊張させる読書は後手に回りがちです。しかし、本を買うこと、つまり身銭を切って買った本には、借りた本にはないインセンティブ(刺激・動機)があります。つまり「せっかく買ったのに、読まないのはもったいない」というあの気持ちです。

さらには、読まずに置かれたかわいそうな本が目に入ると、無言の圧力を感じます。「なぜ山に登るのか。そこに山があるからだ」の精神のように、読んでない本があると、読みたくなるものです。「積ん読」の山があると制覇したくなるのが人情だと、私は思います。

 

5.慎重に選ぶ

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本は安いと言われますが、そうポンポンと買うわけにはいきません。それに、書籍そのもののコストにとどまらず、読むためにかかる時間も勘定しなければいけません。

「書物を買い求めるのは結構なことであろう。ただしついでにそれを読む時間も、買い求めることができればである。」とは、ショウペンハウアー氏の有名な言葉。(『読書について』岩波文庫 斎藤忍随訳)

といわけで、本を買うとなると、慎重に選びます。たとえば古典作品を買うのであれば、各出版社が競って同じタイトルの本を出版していますので、本の装丁、訳者、校正、出版年などを考えます。それだけでその本に詳しくなりますし、選びに選んで買った本には、借りた本にはない、愛着が感じられるものです。

やはり、人間たるもの、費用と愛情は密接な関係にあるものだと思います。貧乏作家だったヘンリ・ライクロフト氏扮する、ギッシングの言葉を借りれば「犠牲を払ったために生じる特別な愛着の念をもってこの本を遇しているというわけである。」(注:この本とは、ライクロフト氏が金銭面で苦しい時に買った、シェイクスピアの本を指しています。)

 

おわりに

買うか買わないかという問題について、ハムレットのような煮え切らなさとまどろっこしさで、私見を述べてきました。

結局のところ、五分考えればわかることを、仰々しく述べてきたわけですが、実際に「本を買う」ことについて考える機会はあまりないことですから、少しばかり考えることも有益ではないでしょうか。みなさまの中で一人でも、「本を買う」ことについて思いを巡らせていただけたならば、うれしいです。

 

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