村上春樹ファン必読!『グレート・ギャツビー』へのオマージュ『偉大なるデスリフ』
村上春樹さんのファンなら一度は耳にしたことがあるであろう「グレート・ギャツビー」。
本書は、日本ではいまいち有名ではありませんが、海外では非常に愛されている作品であり、「華麗なるギャツビー」という名で1974年・2013年と2度も映画化されています。2013年に公開されたものは、レオナルド・ディカプリオさんが主演で話題となったので、ご存知の人もいるのではないでしょうか。
村上春樹さんは、数々のインタビューで「グレート・ギャツビー」の愛情を語るほどのファンで、本書の翻訳も手がけています。
そして、今回セットで取り上げたいのが、「グレート・ギャツビー」のオマージュ作品である「偉大なるデスリフ」。こちらも村上春樹さんが翻訳したものです。
ぜひセットで読んでみてはいかがでしょうか?但し、セットで読む場合は「グレート・ギャツビー」から読み進めることをおすすめします。
■ご紹介する本
『グレート・ギャツビー』
スコット・フィッツジェラルド【著】、村上春樹【訳】(中央公論新社)
『偉大なるデスリフ』
C.D.B. ブライアン【著】、村上春樹【訳】(中央公論新社)
グレート・ギャツビー
もし「これまでの人生で巡り会ったもっとも重要な本を三冊あげろ」と言われたら、考えるまでもなく答えは決まっている。
この『グレート・ギャツビー』と、ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』と、レイモンド・チャンドラー『ロング・グッドバイ』である。
どれも僕の人生(読書家としての人生、作家としての人生)にとっては不可欠な小説だが、どうしても一冊だけにしろと言われたら、僕はやはり迷うことなく『グレート・ギャツビー』を選ぶ。もし『グレート・ギャツビー』という作品に巡り会わなかったら、僕はたぶん今とは違う小説を書いていたのではあるまいかという気がするほどである(あるいは何も書いていなかったか もしれない。そのへんは純粋な仮説の領域の話だから、もちろん正確なところはわからないわけだが)
(訳者あとがき p333)
自分の翻訳も、翻訳であることの限界を超えるものではないとしつつ、「しかし、それでも僕は一人の翻訳者として、一人の小説家として、『グレート・ギャツビー』という作品の根幹をなすいちばん大事な何かを、そのエッセンスのようなものを、少しでも有効に、少しでも正しく伝えることのできる翻訳の道筋を見いだすべく、精一杯努力をし誠意を尽くした。
(訳者あとがき p337)
「グレート・ギャツビー」の舞台は、ニューヨーク郊外。謎の大富豪・ギャツビーの邸宅では、夜ごと豪華絢爛なパーティーが開催されていました。その華やかな世界の裏側、ギャツビーの心の中には、失った恋人デイズィへの想いが絶えず存在していました。彼女を取り戻そうとする異常な執念。狂気をも感じさせるひたむきさと情熱。ここには、美しくもはかない青春が描かれています。
村上春樹さんいわく、作者のスコット・フィッツジェラルドからは、”文章に対する志の高さ”を得たといいます。
彼の文体は「とにかくうまい、きれい、リズムがいい、流れる。これに尽きる」「だから自分の書く小説の文章もまだ直せると思う。それはフィッツジェラルドの文章が僕にとってスタンダードになっているから」。
村上春樹さんのルーツをたどる上で、避けては通れない作品といえます。
偉大なるデスリフ
大丈夫、ミスタ・ブライアン。僕もこの本が好きです。
この『偉大なるデスリフ』は一九七〇年に発表されたが、痕跡も残さずに消えてしまった。
でも、僕はこの本が好きだね。
これはフィッジェラルド神話の、僕らの世代にしかできない検証なんだ。
(訳者あとがき p346)
「その頃、僕たちはまさしくフィッツジェラルドが創造した“神話”「グレート・ギャツビー」の世界を実現していた」。
豪奢な邸宅で行われる絢爛たるパーティー。主人公デスリフは、美しい女性アリスと恋に落ちます。そして、2人は結婚しますが、デスリフに待ち受けていた現実は幻滅ばかりの苦しい現実でした。
「グレート・ギャツビー」を愛する作者が、オマージュ作品として書き上げた「偉大なるデスリフ」。
残念ながら、世間的にはあまり評価はされず、売れ行きも芳しくありませんでしたが、そんな本書に目をつけたのが村上春樹さんでした。
本書と「グレート・ギャツビー」の一番の違いは、早い段階で主人公がヒロインと結ばれるところ。
とはいえ、ハッピーエンドで終わるのではなく、結婚生活の苦しみが描かれており、美しくもはかない世界観は「グレート・ギャツビー」と似通っているといえます。
「グレート・ギャツビー」と「偉大なるデスリフ」を読み比べてみよう
本家本元とオマージュ作品。読み比べてみると見えてくる世界もあります。あなたはどちらが好きでしょうか?
■今回ご紹介した本
『グレート・ギャツビー』
スコット・フィッツジェラルド【著】、村上春樹【訳】(中央公論新社)
『偉大なるデスリフ』
C.D.B. ブライアン【著】、村上春樹【訳】(中央公論新社)
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