辻村深月おすすめ小説・エッセイ10選! 読むべき名作の数々
更新日:2019/12/25
第147回 直木三十五賞や本屋大賞2018などを受賞。映画『ドラえもん のび太の月面探査記』では脚本を担当するなど、大人気の作家、辻村深月さん。
透明感のある文章が魅力的で、なかでも少年少女など、若者の心情を描く表現は「見事」の一言に尽きます。
また、同じ登場人物が他の作品に登場することがあり、読者を惹きつけてやみません。
ここでは、そんな辻村深月さんの作品の中から、特におすすめしたい作品をピックアップしました。
ぜひお気に入りの作品を見付けてくださいね。
『スロウハイツの神様』
『スロウハイツの神様』
講談社
チヨダ・コーキの書いた小説のせいで殺し合いがおこなわれた。
そんな事件があって以来、執筆活動ができなくなっていたコーキは、脚本家の赤羽がオーナーを務めるアパート「スロウハイツ」で暮らしていた。
クリエイターの卵たちが自由な生活を送っているスロウハイツ。ある日空室だった201号室に新しい住人がやってくると、彼らの生活に変化が――。
上巻は個性豊かな登場人物たちそれぞれの視点で、淡々と物語は進んでいきます。
どうか、ここであきらめないでください! 下巻で怒涛の伏線回収が始まります。びっくりするようなところにも繋がりがあるなど、驚きの連続でした。
『かがみの孤城』
『かがみの孤城』
ポプラ社
いじめが原因で学校に行けなくなったこころは、突然光り出した鏡の中に潜り込んでみる。
鏡の先には城があった。そこにはオオカミさまと名乗る少女と、6人の中学生が集まっていて――。
2018年の本屋大賞を受賞した作品。孤独や葛藤を抱えるこころたちが、城のなかで学校の在り方や友達について模索し考えていく物語です。
不登校になった少年少女たちの心の機微が、辻村さんらしい丁寧かつ繊細なタッチで描かれています。
かなり分厚い作品ですが、伏線が回収されていく様が非常に気持ちよく、ラストまで一気に駆け抜けました。
『凍りのくじら』
『凍りのくじら』
講談社
藤子・F・不二雄を愛する写真家の芦沢光が失踪。それから5年が経ったある日、娘の理帆子は図書館で1人の青年に出会った。
彼に少しずつ心を開いていく理帆子だが――。
父の名を継いだ理帆子の過去を追いながら、彼女の成長を描く『凍りのくじら』。
『ドラえもん』へのオマージュが詰まっており、さまざまな場面でドラえもんのひみつ道具が登場します。
始めは暗くて重苦しい雰囲気がありますが、徐々に温かな空気に包まれていきます。
もっと周りに頼ったり、弱い自分を見せたりしてもいい……。いつも我慢してしまう方に特に読んでほしいです。
『冷たい校舎の時は止まる』
『冷たい校舎の時は止まる』
講談社
雪の降る日、8人の高校生が学校に閉じ込められる。
8人は、他に誰もいない教室のなかで、学園祭の日に死んだ同級生のことを思い出していた。でも、なぜかその同級生の顔も名前も思い出せなくて――。
辻村さんのデビュー作であり、第31回メフィスト賞を受賞した作品。
8人全員の悩みや葛藤がじっくりと描かれるためかなりスローテンポですが、後半は一気に加速します。
時間が止まったなかで、それぞれの記憶をつなぎ合わせていくのですが、そこには衝撃の展開が……。
小説の世界にどっぷりと浸りたい方におすすめです。
『ロードムービー』
『ロードムービー』
講談社
辻村さん初の短編集。家出を決意した2人の少年を描く表題作『ロードムービー』のほか、4作が収録されています。『冷たい校舎の時は止まる』のスピンオフにあたる作品です。
子供たちの不安やもどかしさが丁寧に描かれており、読者の心に響きます。本当に、辻村さんはなぜこんなにも子供の心情を描くのが上手いのでしょうか……。
派手な演出はないものの、ぐっと心に響き涙がこぼれます。そして、どの物語からも懐かしさを感じられますよ。
『子どもたちは夜と遊ぶ』
『子どもたちは夜と遊ぶ』
講談社
大学受験を控えた高校生が行方不明になった。その事件の真実を知る木村浅葱は、誰にも知られることなく、謎の存在「i」の姿を追い求めていくが――。
かなり重たく、心をえぐられる作品。できれば心の準備をしてから読むと良いと思います。
たくさんの伏線、謎が謎を呼ぶ展開、日常に潜む「死」の気配。怖くて怖くて、だからこそ一気に読んでしまうはず!
辻村作品の中で、特にダークな作品です。
『ぼくのメジャースプーン』
『ぼくのメジャースプーン』
講談社
学校で飼われていたうさぎが殺される事件が起きる。
ある特殊能力を持つ小学4年生の「ぼく」は、事件をきっかけに心を閉ざしてしまったふみちゃんを救おうとするが――。
大切な子を救うために、ある能力を使って犯人への復讐を決意する「ぼく」。犯人にどんな結末が待っているのか? と一気に読み進められます。
近年問題になっているネットでの誹謗中傷や動物虐待などの要素が盛り込まれており、「大切な人を傷つけられたとき、自分ならどうするか?」そんなことを深く考えさせられました。
『名前探しの放課後』
『名前探しの放課後』
講談社
過去にタイムリープした依田いつかは、クラスメイトの坂崎あすなに相談した。同級生の誰かが自殺する。だけど誰なのかが思い出せない――。
果たして自殺するのは誰なのか? 2人は探し始める。
これから自殺する生徒を探しながら、さまざまな人々の悩みや葛藤を描く青春SFミステリー。
高校生たちの感情が細かく表現されていて、読んでいてどんどん引き込まれます。当時の自分ことを考えながら読んで、なんだか懐かしい気持ちになりました。
『鍵のない夢を見る』
『鍵のない夢を見る』
文藝春秋
第147回 直木賞受賞作。
窃盗、放火、逃亡、殺人、誘拐……さまざまな「犯罪」をテーマに、孤独な女性たちの心理を巧みに描いています。
ストレスが日々少しずつ溜まっていく様子はなんともリアル。普通に生きている人でも、犯罪者になるかもしれない……と、考えさせられました。
読んでいて辛い気持ちになるのに、読む手が止まらなくなる。そんな深い作品です。
『図書室で暮らしたい』
『図書室で暮らしたい』
講談社
辻村さんの好きなものが好きなだけ詰め込まれたエッセイ。その内容は、小説はもちろん、漫画や映画、食べ物など多岐にわたります。
読んでいて楽しい、それでいてほっこりするお話ばかり。なかでも好きな食べ物に関するエッセイは、その細やかな表現に胸が躍りました。
辻村さんの子供の頃の思い出や、作家を目指したきっかけも垣間見えてきますよ。
一度読めば、辻村作品をもっと好きになる!
辻村さんの作品には、作品同士がリンクしているものがあります。さまざまな作品を読んで、その繋がりを見付けるのも楽しいですよ。
もちろんそれぞれを単体で読んでも素晴らしい魅力に溢れています。ぜひお気に入りの作品を見付けてくださいね。
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ライター:ブックオフオンラインコラム編集部