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吉本ばなな おすすめ小説|あなたの疲れた心を癒やす一冊を


更新日:2019/12/6

吉本ばなな おすすめ小説

世界中にファンを抱える、日本を代表する作家の吉本ばななさん。

吉本さんの作品は、英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語など、多数の言語に翻訳され、世界中の文学賞を受賞しています。

今回のコラムでは、吉本さんの代表作『キッチン』はもとより、おすすめ作品をご紹介します。

 

 『キッチン』

『キッチン』表紙

キッチン
角川書店ほか

吉本さんの代表作であり、「私がこの世でいちばん好きな場所は台所だと思う」という書き出しが有名な一冊です。

主人公のみかげは、祖母が亡くなったのをきっかけに、大学生の雄一と、ゲイバーを経営する母(元・父)のえり子さんと同居するようになります。
2人と過ごす淡々とした静かな日常が、みかげの心を少しずつ回復させていく、癒やしの物語です。

大切な人を亡くした後も、人は生きていかなくてはならない。悲しみと共存して生きるためには、どうすればいい?
普遍的なテーマに対し、吉本さん独特な答えの1つを導き出しています。それが、人々の共感を生み、感動を与えてくれるんですね。

それに加えて、日常にはなかなかない非現実的なエピソードが物語に面白みを加え、本書をこれほどまでの傑作に仕上げています。

 

『ハネムーン』

『ハネムーン』表紙

ハネムーン
中央公論新社

10代で結婚した2人を取り巻く日常の物語。

高校時代に、隣人で幼なじみの裕志と結婚したまなか。裕志の両親はとある宗教に没入しており、裕志は心に深い傷を負っていました。一方のまなかも生きづらさを抱えています。
2人で寄り添ってささやかに生きていたのですが、ある日ハネムーンに旅立つことに……。

2人の間を流れるあたたかい空気。2つの魂の共鳴、なんて表現は陳腐かもしれませんが、互いの魂を救済し合う姿には心が打たれます。

隣にいるだけで安心でき、癒やされていく。こんな夫婦になりたいと思う方は多いかもしれませんね。

 

『哀しい予感』

『哀しい予感』表紙

哀しい予感
幻冬舎ほか

美しい黒髪の女性の表紙が印象的な、ファンタジーでもあり恋愛小説でもある作品。

主人公は、19歳の女の子、弥生。弥生は幸福な中流家庭で育ちましたが、幼少期の記憶がなく、何かが欠けている……そんな感覚をずっと持っていました。
その感覚を思い出しそうになったある日、弥生は家出して、変わり者のおばのところへ向かいます。そして、失っていた記憶を取り戻していくのです。

個人的には、吉本さんの作品で特に好きな一冊です。
ピュアで切なくて。作品の中に漂う空気が独特で、物悲しさと寂しさ、希望が同居している、不思議な作品です。

まるで、幻を見ているような……これまでに味わったことのないような気持ちになることができますよ。

 

『TUGUMI』

『TUGUMI』表紙

TUGUMI
中央公論新社

山本周五郎賞を受賞した青春小説です。

主人公のまりあと、粗暴な性格で病弱な美少女つぐみ。強烈な個性を持つ彼女に、まりあは振り回され続けながらも、何かと気をかけていました。

大人がすでに失ってしまった10代ならではの透明感。有り体の表現かもしれませんが、儚く、ヒリヒリしていて、美しい。
まるで映画を見ているような描写には、きっと恍惚感を感じるはずです。夢を見ているような非日常的な作品です。

 

 『アムリタ』

『アムリタ』表紙

アムリタ
新潮社ほか

紫式部文学賞受賞作。

どんなことがあっても、日常は続くという事実をテーマにした作品です。
ときには、それが苦痛に感じることがあるかもしれません。ですが、日常が続くのはやはり救いなのだと、本書を読んで強く感じました。

何気ない日常の中にある「生きててよかった」と思える瞬間が切り取られていて、読んでいると涙がこぼれそうになります。

 

また、本書は作者によるあとがき(自殺志願者へのメッセージ)にも感銘を受けました。

くだらなく重く思える日常を大切にしてほしい。自分に自信を持たせられることだけに同意してほしい。そして、できることなら私の本を読んでいる数時間だけ、自殺のことを忘れてほしい
(下巻 p306-307より)

忙しい毎日に疲れた時に、ぜひとも手に取っていただきたい作品です。

 

あなたを癒やす一冊を……

世界中に支持されている作家、吉本ばななさん。
読むと「あぁ、吉本さんらしい表現だな」と思わされる美しい言い回しは、あなたの疲れた心を癒やしてくれるはずです。

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ライター:飯田 萌