ひと味違った「辞典」4選|こんな辞典があったんだ!
更新日:2018/7/16
知的好奇心をくすぐる「辞典」。
ネット文化の現代であれば、検索エンジンやオンライン辞典、SNSなどで情報収集をする方が多いと思いますが、久々に「辞典」を手に取ってみるのも趣深いものです。
紙媒体の「辞典」の醍醐味は、なんといっても、パラパラめくって何気無しに開いたページに、新しい発見をした時でしょう。
ネット検索のように、あらかじめ知っているキーワードだけでなく、初めて聞くキーワードに出会うことができるのが面白さのひとつです。
そこで、今回のコラムでは「辞典」をピックアップしました。
ただし、普通の辞典ではなく、ひと味違った「辞典」であること。専門的な分野に特化した「辞典」であること。また、エッセイ風のものではなく、あくまでも「辞典」であり、かつ索引がついているものを選びました。
ぜひ手に取ってパラパラお楽しみください。
空を見るのが楽しくなる!
『風と雲のことば辞典』
『風と雲のことば辞典』
倉嶋厚(監修)、講談社
日本の空には、こんなにも多彩な表情があるー。雲と霧との違いは?「花散らし」のほんとうの意味は?気象現象のほか、比喩表現、ことわざも多数収録。また季語から漢詩、詩歌、歌謡曲に至るまで、尽きるところのない空にまつわる表現を豊富な引用で伝える。最先端の気象用語解説や、災害への備えも加えた決定版の「読む辞典」。文庫書き下ろし。(表紙裏)
空を見るのが楽しくなる1冊。
しまき雲、蝶々雲、鯖雲、青東風(あおごち)、黄雀風(こうじゃくふう)……。
本書を監修している倉嶋厚さんは、長年気象庁に勤務し、NHKの気象キャスターを務め、日本の空を見つめてきた理学博士。
「風」にまつわることば1,040語と、「雲」にまつわることば611語が収録されています。古代詩歌の美しい言い回しから、漁業者や航海者の素朴な船方ことば、日本各地で言い伝えられてきた方言など、心に残ることばの宝庫である1冊。
巻末には「季語索引」も付いているので、俳句や短歌に興味がある方にとっては大いに参考になるはずです。
興味のある方は、姉妹編『雨のことば辞典』と一緒にどうぞ。
忘れてはいけない美しい日本語
『美しい日本語の辞典』
『美しい日本語の辞典』
小学館辞典編集部(編者)、小学館
味わい深い日本語を「後世に残したい日本語」「自然を友として」「擬音語・擬態語」の項目別に集大成。
「後世に残したい日本語」日本人として知っておきたい懐かしい日本語2100語を収録。
「自然を友として」自然と深い関わりのある美しい日本語を、和歌・俳句などの実例とともに収録しました。
「擬音語・擬態語」様子・状態別に分類して示しました。
カラー口絵「日本の色」117色つき。(帯)
日本人として忘れてはいけないことばを再確認するための辞典。
菊日和(きくびより)、篠突雨(しのつくあめ)、十六夜(いざよい)、病葉(わくらば)、さやさや……。パッと開いたページに書かれている、さまざまな美しい言葉。
日本人が長い年月をかけて育んできた、美しいことばを会話や文章に織り交ぜることによって、表現をより豊かにすることができるはずです。
日本語が大きく変化している今だからこそ、ぜひ活用したい1冊です。
文学好きにもおすすめ!
『音の表現辞典』
『音の表現辞典』
中村明(著)、東京堂出版
音声(声の大・小・囁、太・細、明・暗、乾・湿、冷・温…)、口調(鋭、荒、強、怒、哀、甘…)、音響(人間の涙、息、歯、胃、鼓動、足音…。動物の声、鳥の羽音…。生活音、風・雨・海・雷などの自然音、楽器の音、落下音…)など、音源やトピックなどに分類配列。(帯)
音の表現に特化した辞典。
「音」という言葉は、音(ね)、声(こえ)、音声、音響、音色、口調などさまざまな意味を持ちます。古来より、人々はさまざまな音声・音響をどう語り、微妙なニュアンスの差をどう表現してきたのでしょうか。
本書では、近代現代の多くの文学作品から採用した表現例を中心に、日本語の慣用表現が収録されています。
たとえば「大声」。芥川龍之介は「森羅殿も崩れる程、凄まじい声で喚きました」、夏目漱石は「目盛りに破れ鐘をつく様な声を出して」、葉山嘉樹は「頭の上から、ハンマーででも打ち下したように怒鳴りつけた」。
文学好きな方であれば間違いなく楽しめることでしょう。
日本語の驚くほど多様な表現を味わうことができる1冊ですよ。
猫が好きなら知っておきたい!
『俳句・短歌・川柳と共に味わう 猫の国語辞典』
『俳句・短歌・川柳と共に味わう 猫の国語辞典』
佛渕健悟・小暮正子(編者)、三省堂
器量がよくても悪くても、自分の猫が一番かわいい。
一茶も子規も、万太郎も、こんなに猫を愛していたなんて。
涼み猫、恋猫、捨て猫、こたつ猫・・・
猫のいる四季折々の風景が、滋味とおかしみたっぷりに描かれている「読んで楽しい辞典」です。(帯)
「猫が詠まれた句」2,400句と、「猫に関する言葉」を集めた国語辞典。
猫に特化した辞典ということで、インテリアとしても使え、とにかく癒やされます。
「春日猫」という春の季語。「撫で物」というのは猫のこと。「猫またぎ」はまずい魚のこと……。私は「猫に関する言葉」がこれほどたくさんあったことに驚きました。
このゆるい感じがたまりません。愛らしく気まぐれな猫たちが、どのように言葉で記されてきたのか。さまざまな猫に出会えるため、猫好きな方にはぜひ読んでいただきたい1冊です。
ほかとはひと味違った辞典たち
興味のあるものはありましたでしょうか? 紙ならではの辞書をぜひ楽しんでみてくださいね!
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さらに以下の特集では、「こんな事典もあったんだ!」という驚きのテーマもあるかも!変わった事典・大全を集めました~!
今回ご紹介したひと味違った辞書
『風と雲のことば辞典』
倉嶋厚(監修)、講談社
『雨のことば辞典』
倉嶋厚、原田稔(編者)、講談社
『美しい日本語の辞典』
小学館辞典編集部(編者)
『音の表現辞典』
中村明(著)、東京堂出版
『俳句・短歌・川柳と共に味わう 猫の国語辞典』
佛渕健悟・小暮正子(編者)、三省堂