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野田一成『 患者は知らない医者の真実 』|記者から医者に転身した著者が見た医療の現実とは?


NHK記者から医者になってわかった、医療現場の事情

「患者の話を聞かない医者」と「医者を信用しない患者」。

勤務医は底辺労働者?

大病院はなぜ並ぶ?

ジェネリックは高くつく?(帯)

 

「NHKの記者から医者に転身」。私が本書を手に取ったキッカケは、作者の「異色の経歴」に興味を持ったことがはじまりです。

軽い気持ちで読み始めた私でしたが、読み終わった後に思ったのは、「この作品は皆が読むべき」ということ。

今回のコラムでは、ヒット作になっている本書について、その魅力を紹介したいと思います。

 

ジャーナリストと医者の両方の目から見た「医療の現実」

本書の作者・野田一成さんは、6年半NHKの記者をつとめ、退職し、医学部医学科に入学、現在は勤務医として仕事をしています。

野田さんは、「医師と一般の人」の間には、考え方や感じ方に大きな開きがあることを感じているといいます。

ジャーナリストと医者の両方の目から見た「医療の現実」とはいったいどのようなものなのでしょうか?

 

本書では以下のようなエピソードが収録されています。

・「名医」とは、いったいどんな医者なのか?

・その検査、治療、薬は本当に必要か?

・「かかりつけ医」の大きなメリット

・紹介状なしに大病院を受診する時、追加料金がかかるのはひどい?

・医者とのコミュニケーション

・セカンドオピニオンとは何か?

・上手な病院の受診方法

・ジェネリック医薬品をどう選択するか

・薬の副作用から健康を守るために

 

私にとっては、これらのエピソードはすべて初耳、目から鱗の情報でした。

患者が抱えている「素朴な疑問」をわかりやすく、公平な視点で答えている作品に仕上がっているので、ためになること間違いなしの一冊といえるでしょう。

 

名医は学歴で決まる?博士号は金看板?

「へー」と感心したエピソードは山ほどあったのですが、ネタバレは最小限に抑えたいと思いますので、あるエピソードをひとつだけ紹介したいと思います。

現在、全国に医学部医学科は80あるのだそうです。半数以上が国立大学法人であり、医学部の入学試験の難易度としては、東京大学理科三類、京都大学、大阪大学がトップとされています。

私は、上記に挙げたような難易度の高い大学の医学部卒業の医者=優秀なのだと、勝手に思い込んでいました。でも、その思い込みは、本書によって覆されることとなりました。

医師の技術を定量的に推し量る尺度は思いあたりませんが、出身大学による違いはないと、私は断言できます。(p45)

 

医学部のカリキュラムは大学毎に異なりますが、医師になるために学ばなければならない知識の量は膨大で、どの大学も医学一般知識の教育と国家試験対策を欠かすことはできません。各大学が特色を出そうとしているとはいえ、大筋で類似したカリキュラムが行われており、医学部を卒業したての各大学の医師の力はドングリの背比べ状態といえます。(p46)

 

では、「優秀な医師」とそうでない医師の差は、どのようにして生まれるのでしょうか。

 

差がつくのは、医師となり、どのようなトレーニングを受けたかということに尽きます。個人的な意見ですが、とくに駆け出しの時代に大勢の患者さんを診療し場数を踏んだ医師が、のちに特定分野の専門家になっても優秀だと感じています。(p46)

これは企業勤めのサラリーマンでもいえることですよね。

新人の時の立ち居振る舞いを見ると、将来有望かどうかがわかります。出身大学の偏差値が高くても、皆が優秀なわけではありません。一部上場の大企業に勤務している人が皆優秀でしょうか?そうではないはずです。中小零細企業にも優秀な人材はたくさんいます。

医療現場においてもそれは例外ではないということですね。

 

医学博士号は優秀な医師の証?

また、作者は『医学博士号』についても言及しています。

「博士号がある医師とない医師では技術に差があるのか?」という疑問に対して、このように答えています。

 

基礎的な研究は、新しい医療技術や新薬の開発に欠かせないものであり、私は研究や博士号取得を否定するつもりはまったくありません。しかし、医療機関の宣伝広告に「医学博士○○○」と記載されていても、それが患者さんにとって必ずしも意味のあるものではないことを知っておいていただければと思います。(p48-49)

 

医学博士はたんなる資格と捉えていいということです。

また、作者は、佐藤秀峰さんの『ブラックジャックによろしく』も引き合いに出しています。「ゴッドハンド」と呼ばれる大学教授が、ふだんはウナギの解剖と研究しかしておらず、手術室で患者に切開を加えた後すぐに研究に戻ってしまう……。

このエピソードをご存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

医師の行っている研究が、必ずしも患者の医療に直結しているわけではない。これらを知らなかった私にとっては大きな収穫となりました。

 

改めて「医療」を考えることができる一冊

いかがでしたでしょうか。

本書『患者は知らない医者の真実』を読むことは、医療について考えるいいきっかけになると思います。ぜひとも参考にしてみてくださいね。

 


今回ご紹介した『 患者は知らない医者の真実 』

患者は知らない医者の真実
野田一成(著)、ディスカヴァー・トゥエンティワン


 

人間の本質や医療の実態が垣間見える医療小説もおすすめです。
リアルな描写で息を呑む面白さ!

 

ライター

飯田 萌
フリーランスのライター。一児のママ。出産前まではリクルートで結婚情報誌を担当。現在はWeb媒体にて書籍、音楽、育児など幅広く執筆中。影響を受けた作家は白石一文。趣味はスイーツを愉しむこととドラマ鑑賞。