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倒叙ミステリーとは?犯人がわかっているのに面白い作品10選


倒叙(とうじょ)ミステリーをご存知ですか?
「なんとなくわかるけど、詳しくは知らない」という方も多いのではないでしょうか。
今回は倒叙ミステリーの意味と、正統派ミステリーとは一味違った魅力を味わえるおすすめの10作品をご紹介します。

 

倒叙ミステリーとは?

倒叙ミステリーとは、物語の出だしで犯人や犯行の様子を明かす、通常のミステリー作品とは異なったプロットが特徴です。
その後のストーリーは犯人目線で描かれることが多く、事件解決というゴールに向かって紆余曲折しながら進んでいきます。

テレビドラマでお馴染みの「古畑任三郎シリーズ」や、アメリカで制作された「刑事コロンボ」が倒叙ミステリーにあたります。
人物像が深く掘り下げられるので、読者が犯人に対して愛着を感じやすくなる傾向があります。

 

大倉崇裕『福家警部補の挨拶』

書籍『福家警部補の挨拶』表紙

福家警部補の挨拶
大倉崇裕(著)、東京創元社

「刑事コロンボ」の大ファンという作者が手がけた、正統派倒叙ミステリー小説。
一見、刑事には見えない小柄な風貌の福家警部補が、鋭い観察力を活かし活躍するという王道の設定。
倒叙ものドラマが好きな方に、特におすすめしたいシリーズ作品です。思わずニヤリとしてしまうことでしょう。

作品はいずれも読み切りタイプなので、何作目から読んでも、順番を気にすることなく十分に楽しめます。
犯人目線のスリルと、事件解決の爽快感をどちらも味わえます。

刑事らしくない女性刑事と、どこか憎みきれない犯人たちの駆け引きから目が離せませんよ!

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東野圭吾『容疑者Xの献身』

書籍『容疑者Xの献身』表紙

容疑者Xの献身
東野圭吾(著)、文藝春秋

福山雅治さん主演で2008年に映画化もされた、「ガリレオシリーズ」の3作目。シリーズ作品の中でも、わたしは特にこの作品をおすすめします。

天才物理学者の湯川が警察の捜査に協力する形で活躍する物語。
DV夫から逃げるシングルマザーと一人娘、その隣人である老け顔の数学教師を中心にストーリーは進みます。

登場人物の心情や機微を書くのがうまい東野さんならではの、深く切ない結末に胸を打たれるはず。
また、映画には登場しなかったトリックや、人間関係の伏線・背景が多々あるので、まだ映画しか観ていないという方は、ぜひ読んでみてはいかがでしょうか。

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F・W・クロフツ『クロイドン発12時30分』

書籍『クロイドン発12時30分』表紙

クロイドン発12時30分
F・W・クロフツ(著)、東京創元社ほか

1934年発行の本作は、フランシス・アイルズ作の『殺意』、リチャード・ハル作の『伯母殺人事件』と並んで3大倒叙ミステリーと称されている、倒叙ミステリーの大御所的な作品です。

工場の経営に苦しむ主人公が、遺産相続を狙っておじを暗殺するストーリー。
きちんとアリバイ工作をしたはずの犯罪が、徐々に明るみになっていく過程を楽しむことができます。

海外の古典作品とあって文章が少し難しく、気軽に読めるタイプの小説ではありませんが、しっかり練られた内容と堅実な展開が楽しめますよ。

 

西尾維新『掟上今日子の挑戦状』

書籍『掟上今日子の挑戦状』表紙

掟上今日子の挑戦状
西尾維新(著)、講談社

一晩寝て起きると記憶がリセットされてしまう、超個性的な忘却探偵が主人公のミステリーシリーズ3作目。
ライトノベル作家として知られている西尾さんの持ち味がうまく活かされており、読みやすくも味わいのある作品になっています。

シリーズすべての物語が倒叙ミステリーというわけではありませんが、本作ではそれが楽しめる物語が含まれます。
暗号になっているダイイング・メッセージをテンポよく説いていく様が、非常に爽快なんです!

トリックだけでなく、登場人物の人間関係や人物像も伺うことのできる内容となっており、シリーズの中でも欠かせない一冊になっています。

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倉知淳 『皇帝と拳銃と』

書籍『皇帝と拳銃と』表紙

皇帝と拳銃と
倉知淳(著)、東京創元社

イケメン刑事と、外見が死神のような刑事のコンビが捜査を重ね、着実に事件を解決していく倒叙ミステリー。本作には短編が4作が収録されています。
倒叙ミステリーの定番である犯人視点で物語が進行していき、犯人が徐々に追い込まれていくスリルを体感できるのが、この作品のおもしろさのポイント。
派手さや華やかさはありませんが、ガッツリと物語に入り込めるはずです。

さらに、4作ともに違ったプロットで作られているので、読者によってイチオシの作品が変わってくるでしょう。
自分にどんな作品が合うかわからない、なんて困っている倒叙ミステリーの初心者にもピッタリですよ。

 

井上真偽『探偵が早すぎる』

書籍『探偵が早すぎる』表紙

探偵が早すぎる
井上真偽(著)、講談社

2018年7月にドラマ化もされたこの作品は、探偵の活躍により殺人が起こらない、異色のミステリーとなっています。
犯人がわかってしまうだけでなく、トリックまで未然に暴かれてしまうというのは究極の倒叙なのではないでしょうか?
さらに、探偵の姿を物語序盤で見かけることができない、ちょっと変わった内容です。

犯人は複数人おり、犯行も複数回練られていきます。
ライトな文体で上下2巻に分かれて展開しいていくので、気軽に読めて読み応えも十分。

ミステリー小説はいろいろ読んできたけど、いつもと違ったテイストの作品が読みたい、なんて気分の玄人さんにもオススメできる作品です。

 

戸松淳矩『うそつき』

書籍『うそつき』表紙

うそつき
戸松淳矩(著)、東京創元社

その場しのぎの嘘を、さらに嘘で誤魔化していく主人公・朋也。彼のついた嘘に、小説家志望の同人サークルの謎が絡まり交差するミステリー作品。
詐欺や盗作といったセンセーショナルな要素を扱っているので、読みやすく感じられるはずです。

サクサク読めるのに、後から何度も読み直したくなる伏線の数々が秀逸。登場人物それぞれのキャラが立っており、しっかりと書き分けもされています。

第58回日本推理作家協会賞を受賞した、戸松さん渾身の一作です。

 

松本清張『遠い接近』

書籍『遠い接近』表紙

遠い接近
松本清張(著)、文藝春秋ほか

第二次世界大戦末期と戦後を舞台とした作品。当時を生きた松本さんだからこそ書けるリアルな物語が魅力です。
30歳を越えて軍に召集された主人公は、医療に関する業務を行う衛生兵として朝鮮半島へ。その間に家族は疎開先で命を絶つという、物語の前半は非常に沈痛な展開を見せます。

過去にドラマ化もされており、第30回芸術祭優秀賞も受賞した本作。
倒叙ミステリーとして物語が動く後半には、フィクションとは思えないリアリティがあります。

話の運び方からオチとなるトリックまで、見事に書き上げられた読み応えのある作品と言えるでしょう。

 

古野まほろ『外田警部、カシオペアに乗る』

書籍『外田警部、カシオペアに乗る』表紙

外田警部、カシオペアに乗る
古野まほろ(著)、光文社

冴えない風貌となまり、ヨレたスーツにコートの外田警部が織りなすコメディタッチの倒叙ミステリーシリーズ。
「刑事コロンボ」のオマージュ作品とも言える本作は、それを彷彿とさせられる倒叙の理論を受け継いだスタンダードな作品でもあります。

主人公が使う愛媛の方言「伊予弁」はどことなくチャーミングな印象で、人情味あふれるキャラにぴったりとマッチ。
日本全国の鉄道路線が舞台となっており、事件解決に向けて動く外田警部の一挙一動から、目が離せません。

 

小島正樹『浜中刑事の妄想と檄運』

書籍『浜中刑事の妄想と檄運』表紙

浜中刑事の妄想と檄運
小島正樹(著)、南雲堂

本作は、天性の強運を武器に、天然系の主人公が事件を解決していく倒叙ミステリーです。
恵まれた資質を持ち、捜査一課の切り札となっている浜中刑事ですが、本人は田舎の交番勤務を希望する控えめな性格。
そんなところが強運を呼び込む一因にもなっているのが皮肉なのですが……。

主人公が倒叙ミステリーの王道とは違ったタイプの人物像なのに加えて、犯人たちにも感情移入しにくい、倒叙型としてはちょっと異質な設定。
物語自体は読みやすく内容も充実しているので、倒叙ミステリー中級者におすすめです。

 

倒叙ミステリーを読もう!

古典から王道、ちょっとイレギュラーなものまで、倒叙ミステリー作品は非常に多彩です。
ジャンルが一括りになっていても、作品の雰囲気やおもしろさはそれぞれなので、気になったものがあればいくつでも読んでみてください!

また、ミステリーには「倒叙」以外にも様々なジャンルがあります。
それぞれ違った魅力があるので、合わせてチェックしてみてはいかがでしょうか?