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司馬遼太郎作品で学ぶ! 戦国時代・幕末の歴史


更新日:2020/1/20

司馬遼太郎作品で学ぶ! 戦国時代・幕末の歴史

日本の歴史小説の第一人者である司馬遼太郎氏。
その作品の魅力は、鋭い視点の歴史考察です。誰もが知っている歴史上の人物はもちろん、あまり知られていない人物も魅力的に描かれます。

ここでは司馬遼太郎作品のうち、戦国時代、そして幕末が舞台のおすすめ作品ご紹介します。

教科書でなんとなく名前だけ知っていた人物たちも、司馬氏の小説を読めば印象が大きく変わるはずです。

 

 

戦国時代が舞台の小説1
『国盗り物語』

『国盗り物語』表紙

国盗り物語
新潮社

『新史太閤記』『関ヶ原』とともに、「戦国三部作」の1つとなる作品です。

油売りから美濃一国を取り仕切る大名になり上がった「マムシの道三」の異名を持つ斎藤道三と、「うつけ者」と称されながらも奇想天外で型破りな思想で天下を狙った織田信長。
異端児と呼ばれた2人の戦国大名の生涯を描いた作品です。

義理の父子という関係にあった道三と信長。物語の橋渡しになっているのは、道三に仕え、のちに信長の忠実な家臣となりながらも最後には裏切ることになる明智光秀。
後半は光秀の視点で語られ、なぜ信長を裏切ったのかという核心にも迫っています。

 

戦国時代が舞台の小説2
『新史太閤記』

『新史太閤記』表紙

新史太閤記
新潮社

貧しい農民の家に生まれながらも仕官し、やがて天下統一を果たした豊臣秀吉の生涯を描いた作品です。

その風貌から「猿」と呼ばれ、幼い頃から周囲の人たちに蔑まれながらも前だけを見つめて陽気に生きてきた秀吉。
戦国武将一の“人たらし”と呼ばれた秀吉を「尾張の商人気質」と捉え、司馬氏が愛情たっぷりにテンポよく描いています。

『国盗り物語』とあわせて読むと、織田信長の気質との対比がはっきりと見えてきて非常に興味深い作品ですよ。

 

戦国時代が舞台の小説3
『関ヶ原』

『関ヶ原』表紙

関ヶ原
新潮社

混沌とした戦国時代に終止符を打ち、徳川300年という平和な時代のきっかけとなった関ヶ原の戦い。
この戦いは、徳川家康と石田三成の頭脳戦だったことでも知られていますが、開始から決着がつくまでわずか6時間程度だったと言います。

その要因は、参謀として忠義を尽くした人物と戦いに至るまでの両者の駆け引きでした。

時代の嫌われ者であり、戦いの敗者である石田光成に焦点を当てた作品です。司馬氏らしい独自の視点で描かれいます。

 

戦国時代が舞台の小説4
『城塞』

『城塞』表紙

城塞
新潮社

『関ヶ原』の続編にあたる作品。
関ヶ原の戦いから、大坂の陣へ至る豊臣家の終焉への軌跡を描いています。

関ヶ原の戦いで敗者となりながらも、大坂城で存続し続けた豊臣家。
秀吉の子・秀頼と久しぶりに対面した家康は、その成長ぶりに脅威を覚え、密かに豊臣家を滅亡させることを決意します。

本作品の見どころは、豊臣家を精神的にジワジワと追いつめる家康の策略とそれに翻弄される豊臣家の情けなさ。
真田幸村や後藤又兵衛といった忠実な家臣たちが豊臣家存続のために奔走。しかし、無能な上層部の人間にことごとく潰され、万策尽き果てた状態のなかで大坂冬の陣を迎えます。

 

戦国時代が舞台の小説5
『覇王の家』

『覇王の家』表紙

覇王の家
新潮社

天下の覇者となり徳川270年の礎を築いた徳川家康。しかし、その生涯はあまり知られていないのではないでしょうか。

『覇王の家』は、“三河武士”の気質を強く持ち、得体の知れない「タヌキおやじ」として名高い家康の人物像を司馬氏らしい独自の視点で捉えた作品です。

家康の生涯を描きながらも、核となる関ヶ原と大坂の陣には触れられていません。『関ヶ原』と『城塞』とあわせて読むことで、家康という人物により迫ることができるでしょう。

 

戦国時代が舞台の小説6
『播磨灘物語』

『播磨灘物語』表紙

播磨灘物語
講談社

類まれな先見性と高い知略を持ち、参謀として豊臣秀吉の天下統一に大きく貢献した黒田官兵衛(黒田孝高)。本作は、そんな黒田官兵衛の生涯と黒田家について描いた作品です。

官兵衛ほどの軍師がなぜ天下を取ろうとしなかったのか? 黒田家の人間は自分を冷静な目で見つめ、自分自身の器を良く知っていたと言います。

数々の武将たちに一目置かれ恐れられるほどの人物でありながら、野心を持たず主君のもとで軍師として淡々と生きた人物像が良く描かれた作品です。

 

戦国時代が舞台の小説7
『功名が辻』

『功名が辻』表紙

功名が辻
文藝春秋

歴史の舞台ではあまり表立って登場しない武将の山内一豊に焦点を当てた歴史小説です。2006年のNHK大河ドラマとしても取り上げられました。

主人公は一豊の妻の千代。「ぼろぼろ伊右衛門」と呼ばれうだつの上がらなかった武士から初代土佐藩主にまでなり上がった一豊を内助の功で支えた賢妻として名高い人物です。

本作品は、妻の度胸と愛嬌に支えられ、手を取り合って出世した夫婦愛を痛快に描いています。

 

戦国時代が舞台の小説8
『戦雲の夢』

『戦雲の夢』表紙

戦雲の夢
講談社

長曾我部元親の土佐22万石を受け継いだ長曾我部盛親もまた、有力大名の1人です。しかし、そんな盛親を主人公にした小説はほとんどありません。

悲運ともとれる人生を歩む武将なのですが、そんな彼の人生をあえて選んで小説にしているのが司馬氏ならではです。

戦国の世を違った視点から考えてみたい、いわゆる敗者となった武将の人生を知りたい、そんな方にぴったりです。

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幕末が舞台の小説1
『竜馬がゆく』

『竜馬がゆく』表紙

竜馬がゆく
文藝春秋

幕末の英雄として名高い坂本龍馬の生涯を描いた『竜馬がゆく』。龍馬が単なる維新の立て役者ではなく、“英雄”と称えられている理由がよく分かる作品です。
ちなみに本作の主人公の名前は、史実の“龍馬”ではなく“竜馬”となっています。

どこか人を惹きつけて止まない竜馬の人間性や、己を貫き通すカッコいい生き方、彼を取り巻く人間模様などをテンポよく描いており、長編ながらサクサクと読める作品です。

 

幕末が舞台の小説2
『世に棲む日日』

『世に棲む日日』表紙

世に棲む日日
文藝春秋

松下村塾を主宰した幕末の思想家の吉田松陰と、その教え子で、奇兵隊を結成し長州征伐を指揮した高杉晋作の生涯を描いた長編小説。

尊王攘夷という同じ思想を持ちながら、生涯教育者として人に教えることに徹した吉田松陰と、その教えを実行に移して戦いに身を投じた高杉晋作。
長州を代表する2人の志士と、それを取り巻く若き志士たちの群像を生き生きと描いています。

 

幕末が舞台の小説3
『花神』

『花神』表紙

花神
新潮社

靖国神社の参道の真ん中に高々と立っている銅像。この銅像が、一体誰なのかご存知でしょうか?
その人物こそ、日本陸軍の事実上の創始者と言われ、この物語の主人公である大村益次郎です。

村医者の息子として生まれ、医学や蘭学のほか、兵学や建築学などを広く学んだ益次郎。しかしその後、益次郎が頭角を現したのは、医者としてではなく兵法家としての才能でした。

益次郎は「暑いですね」と挨拶されると、「夏が暑いのは当然」と返すような人物。周囲から変人と敬遠されていた人物を魅力的に描いているのは、司馬氏ならではだと感じました。

 

幕末が舞台の小説4
『峠』

『峠』表紙


新潮社

一般的にはほとんど知られていないような偉人を取り上げるのも、司馬作品の面白さです。

この物語の主人公は河井継之助。戊辰戦争のなかで最大の激戦となった北越戦争で、長岡軍を指揮し新政府と戦った人物です。

戊辰戦争の勃発に伴い、各藩は新政府側につくか、旧幕府側につくかの選択を迫られます。河井が取ったのは長岡藩の武装中立でした。
しかし、新政府との交渉は決裂し、長岡藩は自藩を守るために新政府との戦いを余儀なくされるのです。

司馬氏らしいテンポで、物語の序盤からぐいぐいと物語に引き込まれました。

 

幕末が舞台の小説5
『最後の将軍』

『最後の将軍』表紙

最後の将軍
文藝春秋

徳川幕府最後の将軍として知られる徳川慶喜。しかし、その人物像についてはあまり知られていません。
実際に、大政奉還の立て役者として知られる勝海舟に言いくるめられた無能な将軍というイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。

しかしこの作品で、司馬氏はまったく異なる捉え方をしています。
慶喜は初代将軍の家康に匹敵するほどの才知と先見性を持っており、新政権にスムーズに移行するために自ら江戸幕府に終止符を打ったと言うのです。

徳川慶喜の視点で時代の終わりを捉えることで、今までとはまったく異なる大政奉還を見ることができる作品です。

 

幕末が舞台の小説6
『新選組血風録』

『新選組血風録』表紙

新選組血風録
角川書店ほか

尊王攘夷を掲げた維新の志士たちが集結した京都の治安を守るため、戊辰戦争で新政府と最後まで戦った新選組。
本作は、幕府を守るために集まった隊士たち生きざまを、15のエピソードで描いた連作短編集です。

ひとつひとつが完結している短編集なので読みやすく、司馬作品の入門書としてもおすすめ。硬派で冷徹な殺戮集団のイメージが強い新選組の隊士の人間臭い一面が垣間見られる作品です。

 

幕末が舞台の小説7
『燃えよ剣』

『燃えよ剣』表紙

燃えよ剣
新潮社

新選組の副長として知られる土方歳三。局長の近藤勇を支えるとともに、新選組を最強の剣豪集団にするために鍛え上げた張本人の半生を描いています。

秩序を守るために厳しい戒律を定め、破ったものはたとえ幹部であっても容赦なく切腹させたことから「鬼の副長」の異名を持ち、新選組に生涯を捧げた男。

武州石田村の “バラガキ”と呼ばれ、最期まで“喧嘩家”としての自分を貫き通した男の美学が共感を呼びました。司馬作品の最高傑作とも評され、多くの人に支持されている作品です。

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司馬遼太郎作品で歴史を学ぼう!

好きな時代を尋ねたとき、戦国時代、幕末と答える人は多いはず。

300年近く続いた武士の世から新時代の幕開けとなる時代の変化を、司馬遼太郎氏は実に魅力的に描いています。
この激動の時代を、司馬作品からぜひ学んでみてください。

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ライター:ブックオフオンライン編集部

 

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