ブックオフオンラインコラム

ブックオフオンライントップへ

ブックオフオンラインコラム > 本に出会う > 絵本・児童書 > アンパンマンだけじゃない!心に響く、やなせたかしの絵本

アンパンマンだけじゃない!心に響く、やなせたかしの絵本


更新日:2020/1/24

やなせたかしの絵本

「アンパンマン」の生みの親である、やなせたかしさん。2013年に亡くなるまで、多くの絵本を発表しています。

元々は漫画家を目指していたそうですが、ヒット作に恵まれず、編集者や舞台演出家、作詞家としてさまざまな仕事をしていたそうです。
絵本を手掛けたのは1960年後半のことで、「アンパンマン」もこのころ出版されました。

やなせさんの絵本には、子供向けとは思えないものが多くあります。
今は絶大な人気を誇る「アンパンマン」も、当初は「自分の顔をちぎってあげるという描写はグロテスクで残酷だ」と非難を浴びたのだとか。

しかしどの物語にも共通しているものは「愛」、そして「絆」なんです。

ここでは、そんなやなせたかしさんの、ぜひ読んで欲しい絵本をご紹介したいと思います。

 

子供向けとは思えない衝撃作
『チリンのすず』

『チリンのすず』表紙

チリンのすず
フレーベル館

ある日、オオカミのウォーに襲われた子羊のチリンをかばい、母親が命を落としてしまいます。
敵を討つため、素性を隠してウォーに弟子入り志願をしたチリンですが、親の仇であるはずのウォーに、親愛の情を感じるようになっていき――。

 

敵討ちという題材は珍しくないものですが、『チリンのすず』は一味違います。
あろうことかチリンは、憎い敵であるはずのウォーに弟子入りし、親子のような絆で結ばれてしまうのです。

結末は、子供向けとは思えないほど衝撃的。私はこの絵本を読んだ後しばらく涙が止まらず、ぼーっとしてしまいました……。
生きることについて、とても深く考えさせられる作品です。

 

優しさに溢れている悲劇の物語
『やさしいライオン』

『やさしいライオン』表紙

やさしいライオン
フレーベル館

動物園でいつも震えていたライオンのブルブルは、母親のように接してくれる犬のムクムクのおかげで、優しく立派に育ちます。しかしあるとき、都会の動物園へ移されることに……。

彼らが離れ離れになってから数年後。懐かしい子守歌が聞こえた気がしたブルブルは、ムクムクに会いたい一心で檻から逃げ出してしまい――。

 

みなしごのブルブルと、母親の代わりにブルブルを育てたムクムク。人間の都合で離れ離れになってしまった2匹の絆を描いたお話です。

いくら優しくても、ライオンはライオン。人間からすれば、脱走した肉食獣は脅威でしかありません。では、ブルブルとムクムクの目線で見たら……?

人間の身勝手さをこれでもかと感じました。やなせさんの動物への愛情を感じる、切なくて優しい物語です。

【関連記事】親子の固い絆を描く! やなせたかし最初の絵本『やさしいライオン』

 

誰かのために愛を捧げる
『ガンバリルおじさんのまめスープ』

 『ガンバリルおじさんのまめスープ』表紙

ガンバリルおじさんのまめスープ
フレーベル館

雪に閉ざされた峠の一軒家に、1人で住んでいるガンバリルおじさん。困った人を見ると自分が持っているものを何でも分け与えてしまうので、洋服も食べ物もどんどんなくなってしまいます。

ある日、1杯分だけ残った豆スープに感謝をするガンバリルおじさんの元に、雪で真っ白になった旅人がやってきました。ガンバリルおじさんは、すかさず豆スープをあげてしまうのですが――。

 

「ガンバリルおじさん」シリーズの1冊。誰かのために尽くし捧げる、愛に包まれたこの絵本は、子供に読み聞かせたくなること間違いなしです。
どんなに貧乏になっても、1杯のスープに幸せを感じて感謝することができるガンバリルおじさんは本当に素敵ですね。

ところで「困っている人がいると自分の顔を差し出す」ところが、アンパンマンに似ていますね。ガンバリルおじさんのビジュアルも、なんだかアンパンマンに似ている気がします。

 

種族を超えた母子の愛
『ハルのふえ』

『ハルのふえ』表紙

ハルのふえ
小学館

森に捨てられていた人間の赤ちゃん育てるため、人間に化けたタヌキのハル。パルと名付けられた赤ちゃんはすくすく育っていきました。

そんなある日、音楽家のチョコパンがパルの才能に目を付け、本格的な音楽の勉強をさせたいと申し出ます。ハルは寂しさを感じながらも、パルを思い送り出すのですが――。

 

やなせさんが90歳を超えてから手掛けたという『ハルのふえ』。タヌキと人間の、種族を超えた親子愛がテーマの作品です。

種族が違っても、母が子供を想う気持ちは同じということがよくわかります。想像もしなかった結末には、「そうきたか!」と感心してしまいました。

 

いじめや差別問題に通じる絵本
『キラキラ』

『キラキラ』表紙

キラキラ
フレーベル館

目が1つ、毛むくじゃらで恐ろしい姿をしているキラキラは、高い山の中に住んでいます。人々はキラキラを恐れ、山に近づこうとしませんでした。

そこで立ち上がったのが、キルとキリという勇ましい兄弟です。
ある日、弟のキリはキラキラを倒すために1人で山の中へ入ります。弟を心配し、山へ登った兄のキル。そこで目にしたのものは――。

 

山に住んでいる怪物キラキラと、その麓に住む兄弟の物語。先入観の恐ろしさをまざまざと見せつけてくれる作品です。

子供の世界でも大人の世界でも、相手のことをよく知ろうとせずに、先入観だけで排除するような行動をとってしまうことがありますよね。
異端に見える相手でも、視点を変えて見れば自分たちと同じなのかもしれない。そんなことに気づかせてくれます。

1人でも多くの人に読んでもらいたい絵本です。

 

子供も大人も読んで欲しい。やなせたかしさんの絵本

「アンパンマン」の他にも多くの絵本を執筆した、やなせたかしさん。悲劇で終わる物語もありますが、作品の根底にあるのは、やはり「愛」や「絆」です。

やなせさんが大切にしていたものを、絵本たちから感じてみてくださいね。

【おすすめ記事】子供に読み聞かせしたい色褪せぬ名作絵本

ライター:タテヤマ