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【書評】アップルvs.グーグル —どちらが世界を支配するのか—


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アップルとグーグル、スマートフォン「プラットフォーム戦争」の歴史

現在のスマートフォンの二大勢力であるアップルのiPhone、そしてグーグルのアンドロイドがどのように生まれ、そしてどのように世界に広まっていったのかを克明に描き出している書籍、『アップルvs.グーグル -どちらが世界を支配するのか-』。

今回は、まるで1作のドキュメンタリー映画を見ているような、そのドラマチックな展開の一部をご紹介します。

↓ご紹介する本はこちら↓

アップルvs.グーグル —どちらが世界を支配するのか—

フレッド・ボーゲルスタイン/著
依田卓巳/訳
新潮文庫

 

困難を極めたiPhoneの開発

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アップルとグーグルは、それぞれほぼ同時期に、最初のスマートフォンの開発を進めていました。

最初に世に出たのは、アップルのiPhoneの方でした。iPhoneの開発には、静電式マルチタッチ・スクリーンの商品化や、電波を効率よく送受信させる方法など、アップルにとって困難な試みが数多くありました。本書によれば、初代iPhoneの開発には1億5000万ドル以上が費やされたそうです。(p.62)

2007年1月にジョブズ氏がiPhoneのデモを初お披露目したとき、まだiPhoneはまともに動作しない不完全品でした。このことは、開発がいかに困難をきわめたかを表しています。
それでも、デモは成功をおさめ、24週間後にiPhoneが発売されると、爆発的なヒットを記録します。

iPhoneの初のデモを見て、最も驚いたのは、グーグルのアンドロイド開発チームでした。このときアンドロイドは、ソフトウェアの機能としてはiPhoneを上まわる機能を持っていました。しかし、iPhoneは物理キーボードを廃し、代わりにタッチスクリーンと仮想キーボードという、アンドロイドにはない機能をそなえていました。アンドロイドの開発チームは、そのような革新的なデザインが消費者に受け入れられることはないと考えていたのです。

「アップルが新しい携帯電話を発表するのは知ってたよ。誰もが知ってた。けど、あれほどすばらしいものだとは誰も思ってなかった。」(p.82)

さらにアンドロイドチームにとって重要な問題だったのは、グーグルがこの時点ではiPhoneに協力してもいたということです。

アンドロイドやiPhoneの開発は、両社内でも厳格な秘密主義のもとに行われていました。そのため、アンドロイドチームも、iPhoneにグーグルのソフトウェアが搭載されていることを知らなかったのです。

自分たちがグーグルでアンドロイドを開発しているあいだ、数百メートル離れた別のビルでは、ひと握りのエンジニアがほとんどアップルの出先機関として働いていたのだ。(p.105)

 

かつては「友人同士」だったアップルとグーグルが敵対するまで

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しかし、当時のグーグルがアップルに協力することは自然なことでした。彼らはマイクロソフトという強大な敵に立ち向かう友人どうしだったのです。マイクロソフトはウィンドウズの成功によって世界のPCを支配してしまいました。アップルやグーグルは、モバイルまでもがマイクロソフトに掌握されてしまうことを心配していたのです。

実際、当時グーグルのCEOだったエリック・シュミット氏は、アップルの取締役でもありました。また、グーグルの三首脳のうち、ブリン氏とペイジ氏は、アップルのスティーブ・ジョブズ氏と個人的な交流もありました。ふたりはジョブズ氏に深い敬意を抱いており、ジョブズ氏もふたりの才能を評価していました。

しかしグーグルが2007年に初めてのアンドロイドの紹介ビデオを公開すると、この友情に亀裂が走ります。ジョブズ氏は、アップルの「発明」を彼らが盗もうとしている、と激怒しました。

ジョブズはグーグルの三首脳に、グーグルが使っているマルチタッチ機能についてはアップルが特許を持っている、今度発売されるG1にもしその機能が入っていたら訴訟を起こすと言った。(p.172)

結局、最初のアンドロイド端末「G1」にマルチタッチ機能を搭載することは叶いませんでしたが、アップルの強硬な態度はかえってグーグルの闘争心をあおりました。

そして、象徴的な出来事が起こりました。アップルは、「グーグルボイス」をiPhoneのアプリストアに置くことを拒否し、さらに数日後、シュミット氏がアップルの取締役を辞任すると発表したのです。

両社の敵対関係が周知のものとなると、アンドロイド陣営は、「iPhoneに対抗する」という共通の目的を得て奮起します。

そして、ついにマルチタッチ機能を備えた「ドロイド」を発売。ドロイドは初代iPhoneの売上を上まわるヒット商品となりました。

 

モバイル市場の「プラットフォーム戦争」とメディアの大変革

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iPhoneとアンドロイドの戦いは、勝利した方がシェアと利益を総取りする、「プラットフォーム戦争」と呼ぶべきものでした。

ドロイドのヒットをうけて、アンドロイドは「プラットフォーム戦争」において優位にたちました。端末もOSもアップルが握るiPhoneとは違い、オープンなアンドロイドには、多くのメーカーが参入できました。

そして、クラウドを活用してコンテンツをネットワーク経由でダウンロードできるようになると、もはやユーザーはiTunesを必要としなくなりました。ユーザーに選択の自由が生まれたのです。

しかし、「iPad」が登場すると形勢が逆転します。iPadは、発表当初、「大きいだけのiPhone」と批判されました。しかし実際には、ラップトップに代わる、新しい種類の端末だったのです。

初代iPadが2010年4月の初めに発売されると、当初鈍いように思われた世間の反応は誤解だったことが明らかになった。iPadは最初の一週間で45万台売れ、最初の月で100万台、初年度1900万台の販売記録を打ち立てた。(p.271)

iPadはメディアの反応も変えました。スマートフォンは、映画を有料で購入してもらったり、新聞や雑誌を定期購読してもらうのには画面が小さすぎると考えていましたが、iPadは十分なサイズをそなえていたのです。

メディアはiPad向けに次々とコンテンツを配信し、エンターテイメントの新しい消費方法を生み出しました。iPadはメディアの大変革を起こしたのです。

ジョブズが理解していたのは——そしてグーグル幹部がようやく真剣に注目しはじめたのは——これは単に、どちらが「テクノロジー」の未来を支配するかという争いではないということだった。「メディア」の未来をかけた争いでもあったのだ。(p.313)

 

未来の勝者は誰か?

スマートフォン、そしてタブレット。グーグルとアップルのどちらが、テクノロジーとメディアの未来を手にするか。この本の最終章では、その予測が控えめに暗示されています。

2016年現在では、まだ勝者が決まる様子はありませんが、この本を読みながら自分なりの未来を予測してみるのも楽しいものです。

↓ご紹介した書籍↓

アップルvs.グーグル —どちらが世界を支配するのか—

フレッド・ボーゲルスタイン/著
依田卓巳/訳
新潮文庫

ライター

ラッテ
3度の飯より本が好き。興味のおもむくままに、いろいろな分野の本を読んでいます。特によく読むジャンルは、IT、美術、語学、旅行、インテリア、漫画など。本好きが高じて、書店員をしていたこともあります。