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オムニバス本のすすめ|あなたの視野を広げる!


みなさんは普段、どんなジャンルの本を読むでしょうか。

読書をしばらく続けていくと、しだいに読む本のジャンルに傾向が生まれてきますよね。しかし、あまりにジャンルに偏りがあると、新しい本との出会いが失われてしまいます。

 

そこで今回おすすめしたいのが、オムニバス本(アンソロジー本)です。

筆者は、自分の読書の守備範囲を広める上でオムニバス本にお世話になってきました。筆者の経験も交えながら、オムニバス本の長所を紹介していきたいと思います。

 

1.オムニバス本の長所

オムニバス本とは、ある特定テーマのもと、様々な著者の文章を集めた本のことを指します。

なかにはなんとなく避けている方もいるかもしれませんが、オムニバス本には長所がいっぱいあるんですよ。

 

◆色々な文体に触れることができる

新しい作家にトライするときに苦戦してしまう原因のひとつに、「文体に手こずること」が挙げられます。
しかし、さまざまな文体にも慣れておくことは、読書ライフにおいて大きな武器になるんです。

色々な文体を知っているということは、色々な思考回路を持っていることを意味します。

日常生活においても、相手の話を聞いたり、議論したりするときに、色々な言い回しや場面にふさわしい文体を知っていると、理解の助けになります。
人間的に奥行きのある人は、かたい文体からユーモアある柔らかい文体まで、幅広く使いこなせるものです。

 

◆自分の世界が広がる

オムニバス本を読むことを勧める最大の理由は「興味の幅が広がる」という点です。

オムニバス本を通じて自分の知らない世界を知ることは、謙虚になる機会になりますし、新しい視点を獲得することにもつながります。

多様化していく社会において、色々な分野に通じ、自分とは異なる視点を知ることは非常に重要なことではないでしょうか。

 

◆短時間で気軽に読める

机に向かう時間がなくても、手軽に読めてしまうこともオムニバスの良いところ。電車一駅分の時間でつまみ読みできる気軽さは、オムニバス本ならではです。

 

◆挫折しにくい

オムニバス本に収録される作品というのは、ある長い作品のハイライトであったり、短くてオチのある作品だったりします。つまり、一気に読ませる作品が多いのです。

ですから、長い小説のように複雑な人物関係を覚える必要もありませんし、「120ページ読んだけど挫折した」という経験をしなくても済みますよ。

 

2.おすすめのオムニバス本シリーズ

オムニバス本のネックは、本屋ではあまりメインストリームとして扱われないということ。
また書店では目立ちにくく、著者名による分類外に該当するために見つけにくいということです。

そこで参考のために、いくつか代表的なオムニバスシリーズをまとめてみました。普通の文庫本だけではなく、大学受験用の学習参考書も挙げています。

 

■ちくま書房のオムニバスシリーズ

「高校生のための〜エッセンス」シリーズ
ちくま書房

まずは、ちくま書房から出ている「高校生のための〜エッセンス」シリーズです。

「高校生のため」と題しているとおり、受験参考書として編集されているため、新しい世界へいざなうガイドブックとして最適です。

 

『ちくま小説選』には、芥川龍之介の『ピアノ』、高橋源一郎の『さよならクリストファー・ロビン』、ジョージ・オーウェルの『絞首台』など、バラエティー豊かな作品が採録されています。

また、『ちくま評論選』は、センター試験に出るような評論を集めています。

大森荘蔵の過去についての考察『後の祭りを祈る』のほか、村上陽一郎、萱野稔人、大沢真幸といった評論家の文章がテーマ別に並べられています。

評論のテーマも哲学、メディア論、サブカルチャーまで、広く扱われています。また、別冊の解答編は、本文の構造や主要概念を解説したもので、理解度チェックができますよ。

 

高校生のための文章読本
ちくま書房

随筆が読みたいというあなたには、『高校生のための文章読本』がおすすめ。1人3~4ページほどの分量の随筆や小説が収められています。

主な収録作品は、小林秀雄の『人形』、武満徹の『吃音宣言』、ロラン・バルトの『箸』、筒井康隆の『バブリング創世記』。

淀川長治の映画論、吉田秀和の絵画論といった、好きな人でないとあまり読まないジャンルの作品も含まれています。
別冊の『表現への扉』も秀逸で、本文に向かう際の視点を与えてくれ、積極的な読書の助けになりますよ。

 

近代の文章
ちくま書房

時代別にまとめたアンソロジーとしては、『近代の文章』があります。明治から昭和までのエッセンスが時代順に並べられ、巻末には関連する作品年表も。

福沢諭吉の『学問のすすめ』、坪内逍遥の『小説真髄』、二葉亭四迷の『浮雲』、夏目漱石の『夢十夜』など、教科書に載っている有名どころ。
そして、柳田國男の『木綿以前の事』など、有名作家のちょっとマイナーな作品も収録されています。

 

もし古文の基礎が身についているなら、『日本古典読本』と『源氏物語読本』もおすすめ。

語注と全文和訳がついており、学生時代に古文が苦手だったという人も、助動詞などの最低限の知識さえあれば平安時代から江戸時代の知っておきたい古典文学作品を原文で読む事ができます。

⇒『日本古典読本
⇒『源氏物語読本

 

■新潮文庫『日本文学100年の名作』

日本文学100年の名作
新潮社

新潮文庫創刊100年を記念して出版された全10巻の小説アンソロジー集で、その時代を反映した文章を中心とした構成となっています。

プロレタリア文学など、時代別の思想トレンドや、文体の特徴を感じられる点がポイントです。

ドイツ文学者の池内紀氏、評論家の川本三郎氏、編集者の松田哲夫氏が選定を担当しています。

 

■ちくま文庫『名短編』シリーズ

『名短編』シリーズ
ちくま書房

ちょっとマイナーな小説を読みたい通な読者向けには、北村薫、宮部みゆき選定の『名短編』シリーズがおすすめです。

『名短編、ここにあり』、『名短編、さらにあり』、『名短編、ほりだしもの』など、全6冊出版されています。

筆者は最初の2つを読みましたが、ピンと来るもの、よくわからないもの、不気味なものなど、いい意味で脈絡のないセレクション、という印象を受けました。

 

■日榮社現代文テキスト

日榮社という受験参考書の会社があるのをご存知でしょうか。

この日榮社から出ている現代文テキストは、300円という安価ながら、30の抜粋文章を集め、問題を付したもので、アンソロジー本としても活躍します。

問題を解くことで、積極的な読書にもなりますし、気軽にさまざまな文章に触れられる点もgood!

 

オムニバス本は未知へのゲートウェイ

オムニバス本は、思わぬ名作に出会うことができるガイドです。

何を読んだらいいかわからない、という方や、最近読書がマンネリ化してきた、という方は一度オムニバス本を覗いてみてはいかがでしょうか。