ゴシック小説 とは? 幻想的なおすすめゴシック小説
更新日:2019/11/4
ときに小説は、現実にはない不思議な世界を疑似体験させてくれます。
ここで紹介するのは、西洋的で美しいけれども、どこか虚ろな世界をかもしだす「 ゴシック小説 」。
日本の幽霊や妖怪の存在する世界とも、また普通のファンタジーとも違った楽しみを見つけられるはずです。
不思議で幻想的。そんな、読者を魅了するゴシック小説の世界を体験してみませんか?
ゴシック小説 とは?
「ゴシック」とは、主に12世紀後半から15世紀にかけての、中世ヨーロッパの建築様式や美術を表した言葉。
ゴシック小説とは、そんな中世の芸術を背景にした作品のことです。
18世紀末~19世紀頃に流行し、ゴシックロマンス、ゴシックホラー、ゴシックミステリーなど、同じゴシック小説でもそのジャンルは多岐にわたります。
その魅力は、不思議で幻想的な世界。また、古城、廃墟、お屋敷、幽霊などがこのジャンルには欠かせない存在です。
それでは、ゴシック小説にはどんな作品があるのか? おすすめ作品をご紹介していきます。
吸血鬼の原点!
『吸血鬼ドラキュラ』
『吸血鬼ドラキュラ』
ブラム・ストーカー(著)、東京創元社ほか
人の生き血を吸って生きる不死の存在「吸血鬼」。
そんな吸血鬼を扱った作品で、今でも多くのファンに愛されているのが、ブラム・ストーカーのゴシックホラー『吸血鬼ドラキュラ』です。
作品の舞台は1800年代の終わり。城に住むドラキュラ伯爵と、吸血鬼を退治しようとするヴァン・ヘルシング教授たちとの攻防が描かれます。
吸血鬼を題材にはしているものの、それが作中で姿を現すことはほとんどありません。人々の手紙や手記によって物語は進み、吸血鬼について語られるのです。
吸血鬼が何を考えて行動しているのか分からない……そんな不気味さが恐怖心をあおります。想像力を掻き立てられること間違いなしです!
本当の「怪物」は誰なのか?
『フランケンシュタイン』
『フランケンシュタイン』
メアリー・シェリー(著)、新潮社ほか
命を自在に操ろうと計画するヴィクター・フランケンシュタインは、墓から死体を掘り返し、それらをつなぎ合わせることでついに「人間」を完成させます。
しかしその「人間」は、人より優れた知能と体力を持つものの、容姿はなんとも醜い怪物のようでした……。
本作は、怪物の恐ろしさに逃亡したフランケンシュタインと、彼を追う怪物の物語。その見た目のせいで恐れられ、孤独の中でいきる怪物はなんとも哀れです……。
フランケンシュタインと聞くと、首に大きなボルトが刺さった、顔に傷がある怪物を想像するかもしれません。しかし実は、フランケンシュタインとは怪物を作った人の名前なんです。
怪物に名前はありません。それもまた、より怪物の孤独を強く感じさせます。
ゴシックミステリーの傑作
『忘れられた花園』
『忘れられた花園』
ケイト・モートン(著)、東京創元社
上下2巻にわたる長編『忘れられた花園』。
1880年代~1910年頃、1975年あたり、2005年あたりの、イギリスの3つの時間軸が交差します。
オーストラリアについた船に取り残されていた4歳の少女ネル、祖母のネルを看取った孫娘のカサンドラ、ネルの持つ本の作者イライザ。彼女たちの時を越えた物語です。
ネルはなぜ船に取り残されていたのか、亡き祖母は何を伝えたかったのか、どんな秘密と謎を抱えていたのか……?
驚きの展開から始まる物語ですが、とても不思議な雰囲気をまとっています。
ゴシックの世界で繰り広げられる1つのミステリー。幻想的で美しい作品ですが、読後は切なくなってしまいました。
幽霊屋敷に起こる異常現象
『丘の屋敷』
『丘の屋敷』
シャーリイ・ジャクスン(著)、東京創元社
本物の幽霊屋敷を探していた、「哲学博士」と呼ばれるモンタギュー博士。
彼が見つけた妖しい屋敷を舞台に、そこに集められた異常現象を研究するエレーナ、セオドラ、ルークらの様子が描かれます。
少しずつ人が破綻に向かっていくさま、差し迫る恐怖、そして心理描写が秀逸な作品。物語には常に不穏な空気がつきまといます。
邪悪なお屋敷の中で、徐々に狂気に蝕まれていくエレーナ。壊れていくほどに明るい性格になっていく姿がなんとも怖かったです。
スプラッタ作品のようなホラー小説とは違い、じんわりとした恐怖を味わいたい方におすすめです。
ゴシックロマンスのゴーストストーリー
『領主館の花嫁たち』
『領主館の花嫁たち』
クリスチアナ・ブランド(著)、東京創元社
1840年。主人から結婚の許しを得られず、恋人に別れを告げられたリチャードは絶望し、自ら死を選びます。
そして、その場に居合わせたリチャードの姉レノーラが、弟の骸を抱きながらヒルボーン家への呪いを口にしました……。
舞台は1840年の領主館。ヒルボーン家の昔話をベースに、過去の恨みによる「呪い」によって、館に住まう一族が破滅していくさまが描かれます。
双子の姉妹の家庭教師をすることになり、館を訪れたテティ。ところが、館で起こる怪奇現象によって彼女も双子の姉妹も徐々に崩壊していきます。
人々の愛や憎しみも絡み、物語は終焉へ。その結末には言葉が詰まります。
森がおかしくさせるのか、呪いのせいか
『暗い森の少女』
『暗い森の少女』
ジョン・ソール(著)、早川書房
森で起きた惨殺な事件の後、エリザベスの妹セーラは精神的にふさぎ込んでしまった。時は流れ、森では子供たちが消えてしまう現象が相次ぎ――。
いわゆる憑き物系のゴシックホラー作品。とある名家に伝わる怨念が、セーラに取り憑いてしまうのです。
暗くて妖しい森に、旧家、そして呪いと、ゴシック小説の要素がたっぷり。王道的な作品です。
終始不気味で妖しい世界。そして、暗くて残酷な雰囲気に、読者はぐっと引き込まれるはずです。
ゴシックの独特な世界に浸ろう
屋敷や旧家など、どれも美しさと同時に妖しさを感じさせるゴシック小説。
不穏な空気に包まれたゴシック小説独特の世界を、ぜひ味わってみてくださいね。
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ライター:モトムラ