歌川たいじの衝撃作品5作|読めば価値観が覆る!
漫画家・歌川たいじさんの作品を、みなさまはお読みになったことがあるでしょうか?
一度読むと、その壮絶さに言葉を失います。セクシュアルマイノリティ、児童虐待、毒親、母の借金、肥満体型、いじめ……テーマは多岐に渡りますが、共通しているのは、すべて歌川さんの実話であること。
また、歌川作品で特徴的なのは、味のある絵とコミカルな作風。複雑な過去の中に、見え隠れする笑いと、“希望の光”。読めばきっと、さまざまなことを考えさせられることでしょう。
なお、コミックエッセイ『母さんがどんなに僕を嫌いでも』は「これも学習マンガだ!~世界発見プロジェクト~」(日本財団主催)に選定。今注目を集めています。
ぜひ一度、歌川ワールドを覗いてみてはいかがでしょう?
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じりラブ
『じりラブ』
集英社
歌川さんのデビュー作。ドタバタコメディ調で爆笑必至の作品です。
2001年、自分がゲイであることを会社で公表した歌川さん。
カミングアウト後の周囲の態度は、つい感心してしまうほど、どれもこれもが「リアル」でした。「俺は襲うなよ」と言って笑いをとる男性社員のデリカシーのなさ、ゲイ嫌いの社員の嫌悪感、女子社員の心無いウワサ話……。
2001年、LGBTへの知識が普及していない時代に、ゲイとしてどのように過ごしてきたのでしょうか?立場が変われば見方が変わるように、きっとみなさまの価値観を覆してくれる作品ですよ。
また、LGBTを知る上での入門書としても最適の一冊です。
※LGBTとは、セクシュアル・マイノリティ(性的少数者)の総称のこと
虐待体験を描いた渾身のエッセイ
母さんがどんなに僕を嫌いでも
『母さんがどんなに僕を嫌いでも』
角川グループパブリッシング
歌川さん作品の中で、最もヘヴィ級な問題作。「じりラブ」の次に読むと、その落差に驚くことでしょう。
「心臓がなんどもぎゅうっとなった」と糸井重里さんがコメントを残していますが、まさに読んでいて胸が苦しくなる作品です。
育児放棄、児童虐待。子どもには逃げ場がどこにもありません。自尊心が低く、家でも学校でも嫌われ者だった主人公に差し伸べられた手。自立し家を出た主人公のもとに、老いた母から連絡があり……。
暗黒だった子ども時代、変わっていく未来、母との対峙。本書には歌川さんの半生がすべて詰まっています。壮絶な作品です。
興味のある方は、小・中学生向けに編集された『手記 母さんがどんなに僕を嫌いでも』も一緒にどうぞ。
未来は自分で変えられる
母の形見は借金地獄 全力で戦った700日
『母の形見は借金地獄 全力で戦った700日』
KADOKAWA
『母さんがどんなに僕を嫌いでも』の続編。
母が亡くなり、巨額の借金が残されていると知った歌川さん。
「いつまでも自分はこういう人生なんだ」と諦めそうになるものの、周囲に支えられ、自分の人生を生きていくべく、借金地獄から抜け出そうともがきます。その描写が人間味にあふれていて、私は何度も泣いてしまいました。
自分の行動次第で未来は変えられることを、身をもって教えてくれる一冊に仕上がっています。
「デブハラスメント」がテーマのダイエットエッセイ
「おつきあい」の壁を乗り越え48キロやせました
『「おつきあい」の壁を乗り越え48キロやせました』
幻冬舎
「形状記憶デブ」(ダイエットをしてもすぐに元通りになってしまうデブ)の歌川さん。
本書では、「デブハラスメント(通称:デブハラ)」をメインテーマに、ダイエットに奮闘する歌川さんの様子が記されています。
面白くて、誰に対してもフレンドリーな歌川さんのキャラクターは、「デブハラ」されやすいのだそう。
「太ってないから食べても大丈夫でしょ。これぐらい太らないって」「食事制限など必要ない、走れ!オレは毎日7km走ってるんだぞ」……
これらは立派な「デブハラ」です。余計なお世話です。もし心当たりのある方がいらっしゃったら、気にしてみてくださいね。
肥満はなぜ「悪」と言われるの?
やせる石鹸
『やせる石鹸』
KADOKAWA
歌川さんの初小説。子ども時代、ストレスや生活習慣の不摂生から「肥満児」になってしまったご自身の経験をベースにした作品です。
主人公のたまみは、ドア1枚ぶんの横幅がある女の子。
見た目で人を差別するような人間には思われたくないけれど、わざわざ巨デブと親しくはなりたくない――。そんな空気を察して、他人と深く関わることなく生きてきたたまみ。肥満体型ならではの苦しみが綴られています。
ご自身の経験に基づいているからか、この作品もとにかく「リアル」。そして考えさせられますよ。
誰にも迷惑をかけていないのに、肥満はなぜ「悪」とされるのか?と。
歌川たいじさんの「衝撃」作品たち
いかがでしたでしょうか。歌川さんの作品は、どの作品も自身の価値観を覆されるようなものばかり。ぜひ一度読んでみてはいかがでしょうか?
今回ご紹介した書籍
『じりラブ』集英社
『母さんがどんなに僕を嫌いでも』角川グループパブリッシング
『母の形見は借金地獄 全力で戦った700日』KADOKAWA
『「おつきあい」の壁を乗り越え48キロやせました』幻冬舎
『やせる石鹸』KADOKAWA
筆者の『三大「衝撃的だった」本』もご紹介しています。
壮絶で救われない本ですが、目を背けず読んでほしいものばかりです。