『一流の本質』で料理人たちの仕事論をビジネスに活かそう
『一流の本質 20人の星を獲ったシェフたちの仕事論』
クックビズ(株)株式会社Foodion(編集)
大和書房
この本は、料理の本ではない。
もっとも競争の激しいビジネスを勝ち抜いた、プロたちの物語だ。
―堀江貴文 (帯)
「その道の一流からは、時代や業種を超えて学ぶべきものがある」
この本を通じて一人でも多くの方が明日への学びを得、皆さんと飲食店との関係がより良くなるよう期待しています。
―クックビズ株式会社 代表取締役CEO 藪ノ賢次(p2)
本書は、クックビズ社のFoodion(フージョン)というWebサービス内で、毎週掲載されている料理人へのインタビューの中から、一般のビジネスマンに役立ちそうな内容のものを抜粋したものになります。
また、本書で取り上げられている20人のシェフたちは、現役でお店を運営されている方々ばかり。お店に赴いて、実際にその仕事を見て、味わい、堪能することができるのが嬉しいところです。
ぜひとも本書にて、20人の「星」を獲ったシェフたちの仕事論をじっくりと楽しんでいただければと思います。
新しいものを生み出すには
世界のミシュラン史上、オープンから最速(1年5ヶ月)で三つ星を獲得した「レストランHAJIME」。
作り手の米田肇さんは、ある日、自らの料理を「フランス料理」と名乗ることをやめました。つまり、米田さんは、身につけたスタイルやカテゴリーを捨て去ったのです。
それは、フランス料理というカテゴリーでミシュラン三つ星を獲得した米田さんにとっては、リスクが大きいことでした。
米田さんは、なぜそのような決断をしたのでしょうか。いくつかのエピソードが掲載されていますが、そのうちのひとつを紹介したいと思います。
世界がお互いに刺激を受けあいながら新しいものを生み出している中で、日本人は何をしているのか。残念ながらいまだに「フランス料理」を再現し続けているんです。
その背景には、日本ならではの「海外のモノ、本場のモノは良い」という価値観や教育が影響していると思われます。
もっと身近にある文化を見つめ直して、日本人にしかつくることができない「オリジナル」を生み出していくことができるはずなんです。
それは伝統をないがしろにする、ということとはまったく違います。「芸」と「芸術」は違う。料理にも「芸術」はある。そしてそれは、変わり続けるんです。(p54-55)
米田さんは、「フランスでの修行時代で経験したもの」しか作れていなかったと当時を振り返ります。
枠にとらわれないためにも「古典」を学び、改めて「自分(の料理)の根源」を考える。そして、自分の持つ世界観を自由に表現する。
これは、料理人でなくても、ビジネスマンにも通ずる仕事論ではないでしょうか。
そして、米田さんは、2012年5月に、店の看板から「フランス料理」の文字を外します。
試行錯誤を重ねたその結果……2016年には、アジアのベストレストラン50に選出。
米田さんの努力が身を結んだ結果と言えるでしょう。
そして、今や予約の取れない、飛ぶ鳥を落とす勢いのガストロノミーとなっています。
今日の最高は、明日の最低
次に紹介したいのは、“野菜の美食”をコンセプトに掲げたフレンチレストラン「リュミエール」。
リュミエールは、ミシュランガイドでは8年連続「星」を獲得し、高島屋などデパートにも多店舗展開している企業でもあります。
オーナーシェフである唐渡泰さんの言葉が、大変心に残ったので、ぜひとも紹介させていただければと思います。
私が仕事をするうえで大切にしている言葉は、「今日の最高は、明日の最低」。
今日ベストを尽くすのは当然ですが、立ち止まってはダメ。明日はもっと良い方法はないのか、考えて変化していかなければならないと思っています。
ビジネスをしていくうえでは少しだけ先を見ることが大切で、そうでなければお客様にとって魅力的にはうつりません。(p199-200)
料理だけでなく、どんな仕事でも、変化の上に今があります。もっと良い方法はないのか?と常に疑問を持って仕事に取り組む姿勢が大切なのですね。
この意識を持っているかどうかで、今後の人生が変わるー。私にとっては、目から鱗の言葉でした。
また「今日の最高は、明日の最低」というポリシーを持って仕事をすることで、自身をさらに高めることができるのは言うまでもありません。
20人の「星」を獲ったシェフたちの仕事論
いかがでしたでしょうか。
今回のコラムでは2人のシェフのエピソードをご紹介しましたが、本書は、世界から認められたシェフたちの「仕事論」がたっぷりと詰まった作品に仕上がっています。
まさしく「金言」だらけの一冊ですので、ビジネスマンのみなさまはぜひとも参考にしてみてくださいね。
今回ご紹介した書籍
『一流の本質 20人の星を獲ったシェフたちの仕事論』
クックビズ(株)株式会社Foodion(編集)
大和書房