『星の王子さま』の名言集|サン=テグジュペリから、大人になった皆さんへ
更新日:2017/8/2
『星の王子さま』の冒頭に、こんな一文があります。
おとなは、だれも、はじめは子どもだった。(しかし、そのことを忘れずにいるおとなは、いくらもいない。)
この物語は、作者のアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリが、むかし子どもだったひとりのおとな、親友のレオン・ヴェルトにささげた物語です。
『星の王子さま』は、1943年にニューヨークで出版されました。
『星の王子さま』
アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ(著)、河野万里子(訳)
新潮社
砂漠に飛行機で不時着した「僕」が出会った男の子。それは、小さな小さな自分の星を後にして、いくつもの星をめぐってから七番目の星・地球にたどり着いた王子さまだった……。(新潮文庫版 裏表紙より)
作者のサン=テグジュペリは飛行家でもあり、郵便輸送をしていました。
彼はリビア砂漠に墜落した経験があり、星の王子さまはそんなパイロット時代の経験から生まれた作品だと言われています。
今回は、『星の王子さま』の中から、おとなのわたしが特に好きな名言を選びました。
はじめは子どもだったおとなのみなさんの心に響くひとことが、見つかりますように。
重要なことを見極めよう
ぼくはこの世で一輪だけの花を知っていて、それはぼくの星以外のどこにも咲いていないのに、小さなヒツジがある朝、なんにも考えずにぱくっと、こんなふうに、その花を食べてしまっても、それが重要じゃないって言うの?(38ページより)
重要なこととそうでないことをごちゃ混ぜにしてしまったおとなの「僕」に向かって、王子さまが怒ったときの言葉です。
わたしが子どもの頃大切にしていた量産性のお人形は、わたしにとっては、この世でひとつだけのお人形でした。
おとなから見れば、たくさんある中のひとつだったと思いますが、わたしにはそのお人形でなければいけなかったんです。
重要なこと、大切なことは人によってちがいます。
たくさんある中のたったひとつの何かは、誰かのたいせつなものかもしれません。
自分にとって、そして相手にとって重要なことがなんなのか、一度考えてみることも大切だと教えてくれる一言です。
裏側に隠れていた愛情に気づくということ
あれこれ言うかげには愛情があったことを、見ぬくべきだった。花って、ほんとに矛盾してるんだね!でもぼくはまだ、あまりに子どもで、あの花を愛することができなかった(45ページより)
バラは、嘘や強がりやワガママを言って王子さまを困らせます。
ふたりはケンカをして、王子さまはバラを置いて星を出てしまいます。
こんな経験、誰にでもあるのではないでしょうか。
おとなになって初めてわかることもあります。
当時は理解できなかった相手のことも、今ならもっと理解してあげられたのに……と後悔もしますよね。
けれども、おとなになって、それに気づくことが大切なのかもしれません。
また、このバラのモデルは、サン=テグジュペリの妻 コンスエロだったと言われています。
誰かを大切に想うこと
金色に輝く小麦を見ただけで、ぼくは君を思い出すようになる。麦畑をわたっていく風の音まで、好きになる……(102ページより)
王子さまが地球で出会ったキツネの言葉です。
最初はただのキツネだったのに、やがて王子さまの友達になり、世界で一匹だけの、かけがえのないキツネになりました。そしてキツネは、以前は見ても何も浮かばなかった金色の小麦を見ただけで、王子さまを思い出すようになります。
風景を見たり、音楽を聴いたりしたとき、大切な誰かを思い出すのは、誰にでも経験があると思います。
わたしは、友達が好きなあるキャラクターを見ると、友達のことを思い出します。そして、一緒に遊んだことを思い出し、元気にしているかな、連絡しようかな、という気持ちにさせてくれます。
そしてそのキャラクターまで好きになってくるから、誰かを大切に想うことって、とてもすごいことですよね!
いちばんたいせつなこと
とても簡単なことだ。ものごとはね、心で見なくてはよく見えない。いちばんたいせつなことは、目に見えない(108ページより)
『星の王子さま』の中で、いちばん有名な名言ではないでしょうか。
一度は聞いたことがあるかもしれません。これも、キツネが王子さまに言った言葉です。王子さまは、バラに振り回されていましたが、そのバラが王子さまにとってかけがえのないバラだったことに気づくのです。
目にはみえなくてもそこに「絆」や「愛情」があり、王子さまがバラに費やした「時間」があったのです。
たとえば、家族や友達、恋人など、その人たちを大切にする想いや愛情は、目には見えないですよね。
けれどもそこには確かに「絆」や「愛」があり、共有した「時間」がある。
目に見えないけれど、それがとても大切なことだと、教えてくれる一言です。
なにをさがしていたのか思い出そう
子どもたちだけが、なにをさがしているのか、わかってるんだね(111ページより)
急いでいる電車を送り出す鉄道員に会ったときの王子さまのセリフです。王子さまが、みんなそんなに急いでなにをさがしてるのかと鉄道員に聞くと、鉄道員も運転士も誰も知りませんでした。子どもたちだけが、窓ガラスに顔をおしつけているのです。
おとなになると、「何がしたいのか」「どこへ行きたいのか」明確な答えを持っている人は少ないのではないでしょうか。
子どものころはたくさん夢があって、何がしたいか、何を求めているのか、どこへ行きたいのか、ちゃんとわかっていたような気がします。おとなになるにつれて現実が見えてきてしまい、本当の気持ちを見失いがちです。
一度走っている足を止めて、何がしたかったのか、どこへ行きたかったのか、子どもの頃を思い出して考えてみるのもいいのかもしれません。
大切に想うこと、絆を結ぶということ
きみが星空を見あげると、そのどれかひとつにぼくが住んでるから、そのどれかひとつでぼくが笑ってるから、きみには星という星が、ぜんぶ笑ってるみたいになるっていうこと。きみには、笑う星々をあげるんだ!(133ページより)
王子さまが「僕」にくれた贈り物は、笑う星々でした。
上でご紹介した「いちばんたいせつなことは、目に見えない」というキツネの言葉を受けて、王子さまが大切なともだちの「僕」に言った言葉です。
「僕」は空を見上げれば、いつだって王子さまを思い出せます。
キツネが小麦を見ると王子さまを思い出すように、目には見えなくても想いがあるのです。
誰かを大切に想うこと、絆を結ぶことは、とてもシンプルなことだと教えてくれる言葉です。
心に響く一言を……
いかがでしたか?
一度は聞いたことがある言葉もあったかもしれませんね。
『星の王子さま』にはまだまだたくさん、心に響く言葉が出てきます。
まだ読んだことがないみなさんは、ぜひ一度読んでみてください。
読んだあとは、星がぜんぶ笑ってるみたいに見えるかもしれません。
今回ご紹介した書籍
『星の王子さま』
アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ(著)、河野万里子(訳)
新潮社
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