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「星の王子さま」だけじゃない!飛行士・サン=テグジュペリの文学小説


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アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリという作家をご存知ですか?

代表作は、砂漠に不時着したパイロットが出会った不思議な少年の物語「星の王子さま」。名作として名高く、読んだことがある方も多いのではないでしょうか。

サン=テグジュペリといえば童話のイメージが強いかもしれませんが、実はパイロットを主人公にした作品を多く残しています。

サン=テグジュペリ自身も郵便飛行士であり、その体験に裏付けられた文学は今も世界で高い評価を得ています。

今回はそんなサン=テグジュペリ作品のおすすめを紹介します。

 

南方郵便機

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フランスとアフリカを結ぶ郵便飛行のパイロット、ジャック・ベルニスと、彼が愛した女性ジュヌヴィエーヴの恋を描く物語。

ベルニスはパイロットとして、地上の世界から脱出し、空を飛ぶこと、空での生活を楽しんでいました。しかし、地上にジュヌヴィエーヴという<泉>を発見し、恋に落ちます。しかし不安定な二人の関係は、報われぬ道を進んでいきます。

「南方郵便機」は、サン=テグジュペリの処女作であり、彼が郵便飛行士としてサハラ砂漠の中継基地、キャップ・ジュビーに駐在していた頃に執筆されました。

発表当時、あまり評価は高くなかったと言われていますが、「愛」と「飛行士」を描いたこの作品は、その後のサン=テグジュペリ作品につながる基礎をすでに持ち合わせており、詩的な表現で彩られています。サン=テグジュペリのファンであれば一度はチェックしたい1冊です。

■『南方郵便機
山崎庸一郎/訳、みすず書房

 

夜間飛行

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この物語の主人公・リヴィエールは、航空輸送会社の支配人。彼は、南米を拠点としてヨーロッパへ郵便を届ける事業を営んでいます。飛行士たちは、危険な夜間飛行を飛び、パタゴニアやチリー、パラグアイから、リヴィエールの待つブエノス・アイレスまで、郵便物を運んできます。

ある夜、飛行士の一人、ファビアンが、悪天候に巻き込まれます。雷雨にさらされ、暴風雨のなかブエノス・アイレスへ向かうファビアン。過酷な夜間飛行に挑む飛行士の勇敢さ、飛行士たちを見守るリヴィエールの信念と崇高さが描かれます。

郵便飛行士だったサン=テグジュペリが描く夜間飛行の凄まじさは、まるでその場にいるかのような激しさで伝わってきます。手に汗握る展開、リヴィエールの飛行士たちへの愛情に胸をうたれます。

■『夜間飛行
堀口大學/訳、新潮社

 

人間の土地

自身も郵便飛行のパイロットであったサン=テグジュペリの、ラテコエール社での体験を綴ったノンフィクション作品です。

ラテコエール社でともに働いた僚友、メルモスやアンリ・ギョメらのエピソードを交えながら、サハラ砂漠でのモール人(ムーア人)との交流、砂漠での墜落と遭難など、サン=テグジュペリ自身の飛行士としての体験を描いています。

ノンフィクションだけに、エピソードひとつひとつが生々しく、航空技術がまだ発達していなかった時代に、空を飛ぶことがいかに困難だったか、その様子が真に迫って感じられます。

困難を乗り越えながら空に挑んだ飛行士の姿を追いながら、人間とは何か、を深く問いかけてくる1冊です。

■『人間の土地
堀口大學/訳、新潮社

 

戦う操縦士

第二次世界大戦中、ドイツ軍に蹂躙されるフランスにあって、パイロットとして従軍したサン=テグジュペリ。当時の体験をもとに、彼自身が行ったアラスでの偵察飛行での様子をリアルに描き出しています。

郵便飛行とは違い、敵に狙われ、電撃戦のなかを飛行するパイロットたち。命の危険に身をさらす緊張感、生還の望みの薄いなかで飛び続ける絶望感が伝わってきます。

1942年、第二次世界対戦のさなかに発表され、当時から「反ナチ」の文学として高い評価を得ていました。「星の王子さま」とは対極に位置するかのようなストーリーですが、サン=テグジュペリらしい哲学的で詩的な表現がちりばめられています。戦争を通して人間の生死の深淵を覗き込むような、そんな深みをもった作品です。

■『戦う操縦士
山崎庸一郎/訳、みすず書房

 

まとめ

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サン=テグジュペリの魅力は、パイロットであった彼自身の体験がもととなった、当時のパイロットたちのリアルな描写です。彼の作品のなかには、生死をかけた飛行の過酷さが描かれ、そしてその過酷さのなかから、人間というものを問いかけていきます。

パイロットを描くこれらの小説においても、「星の王子さま」にみられるような詩的で美しい情景描写も織り込まれ、その文章の巧みさに引き込まれていきます。

サン=テグジュペリ作品は「星の王子さま」しか知らない、という方も、ぜひ一度これらの作品を読んでみてはいかがでしょうか。今まで知らなかったサン=テグジュペリの魅力にきっと出会えることでしょう。

 

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ライター

ラッテ
3度の飯より本が好き。興味のおもむくままに、いろいろな分野の本を読んでいます。特によく読むジャンルは、IT、美術、語学、旅行、インテリア、漫画など。本好きが高じて、書店員をしていたこともあります。