司馬遼太郎『殉死』あらすじ・内容
更新日:2017/7/4
『殉死』
司馬遼太郎(著)、文藝春秋
『殉死』あらすじ
激動の明治時代。日露戦争を指揮し、陸軍大将を経て、戦後は学習院院長などの栄誉ある役を務めた武人・乃木希典。
乃木は、明治天皇の崩御を受けて、自身の妻と共に殉死した。終生明治天皇に忠誠を誓った乃木が、自ら命を絶った訳とは……。
乃木希典の生涯を、司馬氏の目線で描いた作品
かの有名な夏目漱石や森鴎外が尊敬の念を抱いていた、乃木希典という人物をご存じでしょうか?
日露戦争勝利において重要な役割を果たした乃木。
そんな乃木を真っ向から否定し、戦を指揮するものとして能力がなかったと、多数の日本兵の犠牲を根拠に著しているのが司馬遼太郎氏の『殉死』です。
乃木を「忠義の徒」として称えていた当時の識者たちとは、また違った概念で乃木を描いているのがポイントです。
『殉死』で描かれているのは、乃木の軍人としての評価だけではありません。タイトルにもあるように、乃木が明治天皇の崩御と同時に殉死するまでを描いています。
乃木にとって明治天皇がいかに大きな存在であったか、当時の天皇は神のような存在と崇められていた歴史をも感じさせます。
軍神として崇められることへの疑問提起だけでなく、乃木希典という一人の人生を等身大で描いている部分が特徴的です。
同書は1967年に毎日芸術賞を受賞。明治という激動の時代の中のある人物のひとつの考え方として世の中にインパクトを与えました。
実際に本書を手にした読者からは、乃木希典の人生を単純に説明したのではなく、司馬遼太郎氏の考えや思いがしっかり盛り込まれていて、読み応えがあるという意見も多く見られます。
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今回ご紹介した書籍
『殉死』
司馬遼太郎(著)、文藝春秋
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