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今年読んだ本Best5 (2018~2019年発売の新刊限定)


更新日:2019/12/9

今年読んだ本Best5 (2018~2019年発売の新刊限定)

気づけば2019年ももうすぐ終わりですね。
読書好きのみなさん。今年読んだ本の中で、最も面白かった「今年の1冊」はなんですか?

今回のコラムでは、僭越ながら昨年に引き続き、個人的な「今年読んだ本Best5」を発表したいと思います。

もし興味を持っていただけたなら、ぜひ手に取ってみてくださいね。

 

・2018年~2019年11月に発売された新刊から選書
・作品の順番はランキングではありません

【関連記事】2018年に読んだ本Best5 (2017~2018年発売の新刊限定)

 

小説『小箱』

『小箱』表紙

小箱
小川洋子(著)、朝日新聞出版

小箱の番人、歌でしか会話ができないバリトンさん、
息子を失った従姉、遺髪で堅琴の弦をつくる元美容師…
「おくりびと」たちは、孤独のさらに奥深くで冥福を祈っている。
『ことり』以来7年ぶりの書き下し長編小説。

(『小箱』帯より)

 

かぎりない喪失感、歪で閑寂な世界が、これまでにない深い余韻をくれる

本書で描かれるのは、「子供が全員死んでしまった街」です。

子供たちは、亡くなったあとも小さな箱の中で育ちます。靴を履き、九九や字を覚えます。結婚もします。残された大人たちは、子どもの節目を皆で祝います。
……このあらすじだけ読むと、SFやサスペンスのように感じる方がいるかもしれません。

しかし、本書では、「なぜ子供たちがいないのか?」「もう生まれないのか?」といった謎に対して言及がありません。死んでいるけど生きている。死者が運んでくれる幸せ。それこそが本書のテーマです。

そこには、かぎりない寂寥感があります。
歪で、静謐な世界。本書を何度読んでも、この不可思議な世界は、小川洋子さんにしか書けないものです。

残酷な描写はないのに、容赦がありません。そして、読み終わった後は、深い余韻が続きます。

 

眺めているだけで溜息が出てしまう、芸術的で美しい装丁

小説は「ここではないどこか」へいざなってくれるツールだと私は思っています。
なかでも、小川洋子さんという作家は、幻想的で現実離れした、まさに完成された世界を描く方ではないでしょうか。

そして、小川作品の中でも、本書は特に芸術的な一冊です。内容しかり、装丁しかり。

眺めているだけで溜息が出そうな美しい装丁は大島依提亜さん、装画はJ・J・グランヴィルさんが担当されています。ぜひ一緒にお楽しみくださいね。

 

小説『ある男』

『ある男』表紙

ある男
平野啓一郎(著)、文藝春秋

愛したはずの夫は まったくの別人だった。

「マチネの終わりに」から2年。平野啓一郎の新たなる代表作!

(『ある男』帯より)

 

「愛にとって、過去とは何か?」普遍的なテーマに、真正面から向き合った力作

本書は、ある事情から「別人」になりすましていた夫と、それを知った妻と子の物語です。

みなさまも考えてみてください。
現在の相手に好感を抱いて、そのあと、過去まで含めてその人を愛するようになる。そして、ある日、その過去が赤の他人のものだと分かった。

すると、2人の間の愛はどうなるのでしょう。
すべて台無しになるのか、それとも、新しい愛が始まるのでしょうか?

愛と過去。それは普遍的なテーマですが、作品の中では要素の1つとして機能するだけで、メインテーマとして取り上げた作品はあまり無いように思います。

私自身、もし自分だったら……と考えてみましたが、答えが出ませんでした。

 

「死」に対する描写が多く、改めて「死」について考えるキッカケをくれる

本書の中で、妻が、「誰が死んだの?」と胸の内でつぶやくシーンがあります。

戸籍の死、身体としての死、社会的な死。死にはたくさんの意味合いがあります。

過去は偽ることができても、死は偽ることができない。自分には、自分が死ぬべき死しかない。当然のことかもしれませんが、ハッとさせられました。

本書の中には、死に対しての描写も多く見られ、改めて「死」について考える良いキッカケとなりました。

 

漫画『「子供を殺してください」という親たち』

『「子供を殺してください」という親たち』表紙

「子供を殺してください」という親たち
鈴木マサカズ(著)、押川剛(原作)、新潮社

家族や周囲の教育圧力に潰れたエリートの息子、酒に溺れて親に刃物を向ける男、母親を奴隷扱いし、ゴミに埋もれて生活する娘……。

現代社会の裏側に潜む家族の闇と病理を抉り、その先に光を当てる――!!

様々なメディアで取り上げられた押川剛氏の衝撃のノンフィクションを鬼才・鈴木マサカズ氏の力で完全漫画化!

(『「子供を殺してください」という親たち』1巻表紙裏より)

 

実話&ノンフィクションゆえの圧倒的なリアリティーに唖然

本書は「精神障がい者移送サービス業」を営む押川剛さんのドキュメンタリー漫画です。

これは、精神疾患、薬物・アルコールなどの物質使用障害、ひきこもりといった、「精神科医療とのつながりを必要としながら、適切な対応がとられていない子供」を親の依頼で医療につなげるお仕事です。
(子どもといっても、高齢の親・中年の子、というケースが大半です)

新潮社のコミックバンチWebにて、1話目が無料公開されているので、ひとまず読んでみてください。きっと、言葉を失います。
本人とその家族の心労、苦しみが描かれており、これが実話なのだと思うと、信じられません。

精神を病んだ我が子に手を焼き、親は言います。「子供が事故にでも遭ってくれたら……」「子供を殺してください」と。

しかし、この作品で取り上げられている子どもが患っている病は、どれも後天的なものです。
親の育て方の悪さから、子どもがゆがんでしまったケースも描かれており、私は2児の母として、人ごとには思えませんでした。

 

時代に合ったテーマを取り上げ、特殊職業の作者ならではの解決法を提示

ショッキングな殺傷事件、8050問題、毒親、親族間のトラブル……。
本書で描かれるテーマは、まさしく今の時代に合ったものばかりです。

本書は漫画だけでなく、押川さんのコラムが収録されているのですが、特殊な職業に就いているからこそ言える、切れ味の鋭い意見には、納得させられるばかりです。

この作品には、世の中に蔓延る社会問題を解決するヒントが山ほど隠されているように思います。

 

新書『面白いとは何か? 面白く生きるには?』

『面白いとは何か? 面白く生きるには?』表紙

面白いとは何か? 面白く生きるには?
森博嗣(著)、ワニブックス

本書では、「面白さ」が何なのか、どうやって生まれるのか、というメカニズムを考察し、それを作り出そうとしている人たちのヒントになることを目的として、大事なことや、そちらへ行かないようにという注意点を述べようと思う。

同時に、「面白さ」を知ること、生み出すことが、すなわち「生きる」ことの価値だという観点から、「面白い人生」についても、できるだけヒントになるような知見を、後半で言及したい。

――「はじめに」より(表2)

 

示唆に富む発言の連発で、ためになった・読んでよかったと思える

本書では、森博嗣さんが思う「面白さとはどういう意味なのか」「面白く生きることとは」について書かれています。

みなさまの想像通り、一般向けの面白く生きるためのコツ・ノウハウ本ではありません。

そのような本は「面白さを見縊って(みくびって)いるといえる。その程度の面白さは、僕は「面白い」とは思えない」と、森さんは冒頭ではっきりと書いています。
私も、森さんの作品に、そんなものは求めていません。

そうはいっても、示唆に富む発言の連発でした。最近の「面白さ」=共感ということ。「いないいないばあ」はなぜ可笑しいのか。自分では思いつかない観点からの考えは、読んでいてためになりました。

また、個人的に森博嗣さんのファンなので、森さんが小説を書くときに考えていることを知ることができたのも嬉しいですね。

 

「面白く生きているか?」と自問自答するキッカケに

つまらないなんて、ありえない。

本書を読んでいると、森博嗣さんが、とにかく楽しく、面白く生きていらっしゃるんですね。この頃加齢や多忙のせいにして、「面白く生きる」ための努力を怠っていたな……と、ハッとさせられました。

森さん曰く、「面白いことがない」という状況は、「面白いことが思いつけない」状況なのだとか。
そして、思いつかなくなってしまったのは、面白さを他者から与えられたり、売っている面白さを買ったりという生活が続いてしまったからなのだと。

せっかくの人生。私も面白く生きていたいので、やってみたいと思っていることにはすぐにでも挑戦してみようと思います。

 

小説『彼女たちの場合は』

『彼女たちの場合は』表紙

彼女たちの場合は
江國香織(著)、集英社

「これは家出ではないので心配しないでね」

14歳と17歳。少女は二人きりで“アメリカを見る”旅に出た。

美しい風景と愛すべき人々、そして「あの日の自分」に出逢える
江國香織二年ぶりの長編小説。

(『彼女たちの場合は』帯より)

 

若者の無敵感が眩しい、爽快感溢れるロードムービー

17歳と14歳の少女2人が、アメリカ中を旅するロードムービー。

“ノー(いやだ)”ばかりの人生で、“見る”ことだけが唯一“イエス”だった、人見知りの逸佳。
人懐っこく、元気で純朴ないとこの礼那。

2人の少女が「私たち、アメリカを見なきゃ」と、ボストンやメインビーチズ、マンチェスター、クリーヴランド……長距離バスやアムトラックを乗り継ぎ、旅を続けるというお話です。

若者が持つ、何でもなれる、どこにでも行ける、好きなまま生きられる、その無敵感が眩しいです。
羨ましさと懐かしさが同居した、この甘酸っぱい気持ちを感じたのは久々で、本書はとても印象に残っています。

 

今、旅をしているかのような楽しい雰囲気の描写

本書には、2人の少女と、それぞれの親が出てきます。

私自身は2児の母なので、危ないから帰っておいでと言う「母目線」で読んでしまいがちだったので、あえて少女たちの目線で読むように心がけました。
ティーンの気持ちを100%理解できる年齢ではなくなってしまいましたが……。

すると、まるで自分が旅をしているような、楽しい気持ちになりました。美味しそうな料理と美しい風景など、江國香織さんの描写がとにかく巧いんですね。

現実逃避したい方にもおすすめの一冊です。

 

2018~2019年の名著たち

今回は、2018~2019年に発売された書籍をご紹介しました。

気になる作品はあったでしょうか。個人的にはどの作品もイチオシですので、ぜひとも読んでみてくださいね。

【おすすめ記事】「初読み」にピッタリなおすすめの本

ライター:飯田 萌