今年読んだ本Best5(2016~2017年発売の新刊限定)
こんにちは。飯田 萌です。読書が好きで、1日1冊ペースで本を読んでいるフリーランスのライターです。
今年も残り1ヶ月を切りましたね。そこで、前年に引き続き、今年の総括として「今年読んだ本Best5」を発表したいと思います。
今年のBest5ということで、2016年~2017年11月に発売された新刊限定でチョイスしてみました。
なお、前年同様、これらはランキングではありません。順不同です。フィクションからビジネス本まで、できるかぎり異なるジャンルから選書しています。控えめにいって、最高級の作品ばかりです。興味のある本はぜひ手に取ってみてくださいね。
『望み』雫井脩介(サスペンス)
『望み』
雫井脩介(著)、KADOKAWA
究極の選択を読者に問いかける
今年読んだ本の中で、最もドキドキした作品が本書です。読んでいてこんなにも次のページが待ち遠しい作品はありませんでした。
自分の息子が行方不明になった。息子の仲間がリンチされた挙句、死体で見つかるという残忍な事件が起きた。行方不明者は三人。犯人だと見られるのはそのうち二人。
自分の息子は加害者なのか?それとも被害者として殺されているのか?もしくは加害者でもなく被害者でもないのか?
加害者だとしても息子に生きていてほしい母親と、人を殺すぐらいなら被害者であってほしいとひっそり願う父親。あなたが親ならどちらを願うでしょうか…?
じりじりした緊張感と、濃密な心理描写
本書は、捜査が進まず、何もわからないまま時間が過ぎていく家庭内の数日を描いています。
「私の受験はどうなっちゃうの?私はたぶん、就職だってできなくなるし、結婚だってできなくなる」「お兄ちゃん、犯人だったら困る」という妹の本音。
「自分の仕事はどうなるのだろうか?」という父親の本音。
ネットの掲示板にイニシャルで書き込まれる、根も葉もない噂。殺到するマスコミ。情報に翻弄される家族。
読んでいて苦しくなりますが、ぜひとも本書で「犯罪」について考えてほしいと思います。
『愛の夢とか』川上未映子(恋愛短編集)
『愛の夢とか』
川上未映子(著)、 講談社
一編ずつが、しずかな奇蹟である
このフレーズは、本書を読んだ江國香織さんの言葉ですが、まさしくこの言葉に尽きる作品だと思います。
言葉遊びが面白く、その美しい言葉の羅列は奇跡のよう。小説を読んでいるというよりも、詩集を開いているような感覚に陥ります。
谷崎潤一郎賞受賞作ということでも、その芸術性の高さが分かるはず。
川上さんの瑞々しい感性にどっぷりと浸かることができる名短編集だと思います。
女性ならきっと共感できる小さな毒や心のざわつきを描いている
美しいだけで終わらないのが、本書のさらに素晴らしい点。
「ところでマカロンを買うときのあの気分っていったい何だろうといつも思う。(中略)中身がないのにそれっぽいってだけで重宝されてみんなほいほい買っていくから値段が高いのもむかつくし、第一おいしいと思ったことなんてこれまでただの一度もないことを思いださせる、あの感じ」。
どうでしょう?分かる!という方もいらっしゃるかもしれませんね。掛け値無しの美しさのなかに、少しずつ毒が隠れているのが、たまりません。
『笑いのカイブツ』ツチヤタカユキ(青春私小説)
『笑いのカイブツ』
ツチヤタカユキ(著)、 文藝春秋
圧倒的な熱量と絶望、狂気を描いている
フリーターとして最低限のお金を稼ぎ、朝から晩まで1日2000個のボケをひねり出す。働きながら、ノート一冊を一日で使い切るほど、大喜利にすべての時間を注ぐ。笑い以外はどうでもいい。衣食住も、家族も、異性も。時間がもったいないから。
そう、本書はまさしく『笑いに取り憑かれた』男の物語です。
そして、これほどの時間を費やしたのだから、成功しなければという焦りから、ますます笑いへ執着する主人公…。
私はこれほどまでに、圧倒的な熱量と絶望、狂気が混在する作品を読んだことはないかもしれません。
「血の滲むような努力をしても報われない」のがリアル
21歳で吉本の劇場作家になった主人公。「お笑いは、面白ければそれでいい。無駄話をする時間があるなら、一つでも多くのボケやアイデアを出したい」とあくまでも『笑い』を追求しようとしますが、周囲とのコミュニケーションを取れないのが理由で辞めさせられてしまいます。
理不尽なようですがこれが現実社会なんですね。血の滲むような努力をしても、才能があっても、何か一つ問題があれば排除される。表舞台に立ち、成功できるのはごく僅かな限られた人だけ。厳しい現実を改めて突きつけられる作品です。
『僕らが毎日やっている最強の読み方』池上彰・佐藤優(ビジネス本)
『僕らが毎日やっている最強の読み方
新聞・雑誌・ネット・書籍から「知識と教養」を身につける70の極意』
池上彰、佐藤優(著)、 東洋経済新報社
まさしく、人生を変える『知の教科書』である
「この本を読んで人生が変わりました」というのはよく耳にする言葉ですが、私にとってはまさしく本書が人生を変えてくれた本です。
なんといっても、インプット・アウトプットのやり方が変わりました。今日からできる、続けられる、誰でもできる、という実践的な内容であることも魅力の一つでしょう。
たったこの1冊を読むだけで、お二人の『知の源泉』を参考にできる。正直に言って、本書を読まない人は人生を損していると、心から思います。
モチベーションを高めてくれ、だらけがちな自分に喝を入れてくれる
毎月90近い締め切りを抱えているという超売れっ子ながら、毎月平均300冊以上の本に目を通しているという佐藤さん。計算すると、1日10冊の本を読んでいることになります。それに加えて、複数の新聞・雑誌・ネットも毎日チェックしているのだそう。
それを知り、改めて自分のインプットの少なさを反省しました。工夫をすれば、私もインプットをさらに増やせるはず。モチベーションを最高潮に高めてくれ、だらけがちな自分に喝を入れてくれる作品ですよ。
『10倍速く書ける 超スピード文章術』上阪徹(ビジネス本)
『10倍速く書ける 超スピード文章術』
上阪徹(著)、 ダイヤモンド社
「3000字を1時間で書く」の方法がとにかく具体的&実践的
私はフリーランスのライターとして仕事をしているため、文章を書くスピードは非常に意識しています。
作者の上阪さんは、凄腕のブックライターとして広く知られる方であり、私も大変影響を受けているのですが、本書では「3000字を1時間で」書くための技術が余すところなく書かれています。ここまで教えてもらっていいの?!と思うほど……。
この記事も「書きながら途中で何度も止まっていたら一気通貫に読める文章にならない」という上阪さんの教えを守って、内容が粗くてもとにかく筆を進めること、決して戻らないことを意識して書いています。
私は本書の内容をほぼ実践しているので、この作品も私の人生を変えた一冊といえます。
目からウロコ、ハッとさせられる内容の連発
上阪さんいわく、人は文章を書くときに「表現」しようとしてしまうのだそうです。もしそれが企画書のようなビジネス文書であっても、無意識のうちに。だから文章作成に時間がかかってしまうのです。
私はこの部分を読み、ズバッと言い当てられたような気持ちになりました。
他にも目からウロコの内容が連発で、自分では気づくことのできなかった、文章作成の癖や、改善点を改めて知ることができました。
2016~2017年の名著たち
今回は、2016~2017年に発売された書籍をご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
どの作品も心底オススメですので、ぜひとも読んでくださいね。
今回ご紹介した書籍
『望み』
雫井脩介(著)、KADOKAWA
『愛の夢とか』
川上未映子(著)、 講談社
『笑いのカイブツ』
ツチヤタカユキ(著)、 文藝春秋
『僕らが毎日やっている最強の読み方』
池上彰、佐藤優(著)、 東洋経済新報社
『10倍速く書ける 超スピード文章術』
上阪徹(著)、 ダイヤモンド社
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