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古市憲寿おすすめ本|独特な感性や視点で魅了する


更新日:2019/8/23

この頃、テレビで見ない日はないほど引っ張りだこの社会学者・古市憲寿さん。
古市さんは作家としても活躍されており、2018年には『平成くん、さようなら』、2019年には『百の夜は跳ねて』が芥川賞候補作に選ばれました。

今回の記事では、『平成くん、さようなら』『百の夜は跳ねて』はもちろん、エッセイや対談集など、おすすめの作品ご紹介します。

 

『平成くん、さようなら』

平成くん、さようなら表紙

平成くん、さようなら
文藝春秋

平成を象徴する人物としてメディアに取り上げられ、現代的な生活を送る「平成くん」は合理的でクール、性的な接触を好まない。だがある日突然、平成の終わりと共に安楽死をしたいと恋人の愛に告げる。愛はそれを受け入れられないまま、二人は日常の営みを通して、いまの時代に生きていること、死ぬことの意味を問い直していく。なぜ平成くんは死にたいと思ったのか。そして、時代の終わりと共に、平成くんが出した答えとはーー。(帯)

古市さんの初小説であり、2018年の芥川賞の候補作です。惜しくも受賞しませんでした。

この作品では、「安楽死」が合法化された日本を舞台に、「いまを生きることの意味」を読者に問いかけます。

本書は「彼から安楽死を考えていると打ち明けられたのは、私がアマゾンで女性用バイブレーターのカスタマーレビューを読んでいる時だった」という一文から始まります。スマートスピーカーなどの最新家電が出てきたりと、全体的に現代的な香りが漂う作品です。

また、本書のテーマは「安楽死」。安楽死について考えさせられるだけではなく、震災をはじめとした時事問題も随所にちりばめられており、社会派小説の役割も果たしています。

1989年生まれの「平成くん」は、平成の終わりに「安楽死」を望みますが、話は思わぬ終わりを迎えます。この結末は誰が想像できたでしょう? 想像を超える展開にはきっと絶句してしまうはずです。

 

『百の夜は跳ねて』

百の夜は跳ねて表紙

百の夜は跳ねて
新潮社

高度200メートル。僕はビルの窓を拭く。光溢れる都市の秘密を記録しながらーー。

決定的に新しい青春小説の誕生!!(帯)

こちらの作品も、2019年の芥川賞の候補作となりました。惜しくも受賞しませんでした。

鮮やかなレモン色の表紙が目を引く1冊です。

主人公は、タワーマンションの窓ガラスを拭く清掃員の翔太。就活に失敗し、なんとなくこの仕事を始めたことから劣等感を覚えながら仕事を続けています。

タワーマンションにはカーテンをつけない部屋も多く、清掃中に住人たちの生活が見えます。でも、住人たちはこちらを見ず、翔太がいないかのように振舞います。孤独感を募らせる翔太に、一人の老婆が取引をもちかけるのですが……?

芥川賞選考委員は「今の東京という都市を非常にリアルに描き出している」と評しています。どこか無機質で、文章は淡々としていますが、垣間見える希望に救われる、不思議な読後感を味わえる作品です。

 

『誰も戦争を教えられない』

誰も戦争を教えられない表紙

誰も戦争を教えられない
講談社

誰も戦争を教えてくれなかった。だから僕は、旅を始めた……。広島、パールハーバー、南京、アウシュビッツ、香港、瀋陽、沖縄、シンガポール、朝鮮半島38度線、ローマ、関ヶ原、東京……世界中に存在する戦争博物館と平和博物館。僕たちは本当に戦争のことを知らないのだろうか?それとも戦争のことが好きなのだろうか?「若者論」の若き論客であり、「戦争を知らない平和ボケ」世代でもある社会学者の古市憲寿が、世界の「戦争の記憶」を歩く。(表紙裏)

本書は、古市さんが世界中の戦争博物館・平和博物館を訪ねた記録をまとめたもの。

古市さんの旅は、太平洋戦争の幕開けとなったパール・ハーバーから始まりました。パール・ハーバーは、現在はアリゾナ・メモリアルという名前の記念館となっており、古市さんは、「あまりにも爽やか」な空間であることに驚いたのだそう。

また、敗戦国の日本では、戦争といえば「繰り返してはならない悲しい出来事」として教えられます。しかし、アリゾナ・メモリアルでは、「俺ら勝ったぜ!」というアメリカの勝利の物語が描かれており、来訪者を楽しませる仕掛けまであるそうです。

現代アートを使って戦争の悲惨さを表現しようとする国、戦争の爪痕を当時のまま残す国、曖昧さを貫く国……。戦争に関する博物館は、その国ごとの「お国柄」を表しており、本書では各施設の紹介と感想が書かれています。

戦争を知らない若い世代の方々にはぜひ読んでいただきたい作品です。私も本書を読んで、各国の戦争博物館を巡ろうと決意しました。

 

『古市くん、社会学を学び直しなさい!!』

古市くん、社会学を学び直しなさい表紙

古市くん、社会学を学び直しなさい!!
光文社

日本を代表する12人の社会学者が、現代の日本を俯瞰する

小熊英二、佐藤俊樹、上野千鶴子、仁平典宏、

宮台真司、大澤真幸、山田昌弘、鈴木謙介、

橋爪大三郎、吉川徹、本田由紀、開沼博(登場順) (帯)

古市さんと12人の社会学者の対談集。「社会学って何ですか?」という古市さんの問いに、社会学の第一人者たちが答えを教えてくれる構成で成り立っている本です。

「社会学入門」の類は数多くあるものの、本書ほど分かりやすく、フランクな書はなかなかないと思います。

個人的に印象に残ったのは、佐藤俊樹さんの「社会学という学問はダイアローグ(対話)でしか学べない」という考え方。「あなたのその問いは、こういうことを前提として考えていますね」という形で対話しながら、答えをゆるやかに探り出していくのが社会学の思考であるというのは、なるほど、とつい納得してしまいました。

社会学を少し勉強するだけで、社会に対する見方がガラリと変わります。ありきたりな表現ではありますが、本書を読めばきっと人生が変わるはずです。

社会学の入門書としては最適な作品だと思いますので、興味のある方はぜひ手に取ってみてはいかがでしょう?

 

『誰の味方でもありません』

誰の味方でもありません表紙

誰の味方でもありません
新潮社

この頃の日本は、何だか怒りっぽい。不倫や不貞行為、セクハラやパワハラ、女性や外国人への差別、「不適切動画」の流出など、とにかく毎日のように誰かが怒られている。(中略)

こういった炎上が、本当にこの社会を良くしているのならいい。だが、どうやらその気配はない。「正義」の人々は、次から次へと攻撃対象を変えて、「正論」を唱え続けるだけだ。(中略)

だけど本当にこれでいいのだろうか?(帯)

『週刊新潮』で連載していたエッセイをまとめた作品。古市さんの独特な感性と毒舌がクスリと笑える1冊です。

たとえば、「炎上する人としない人の差」を分析している古市さん。

マツコ・デラックスさんは、毒舌なのに炎上しない→なぜ? →なぜなら、マツコさんはあの体型が功を奏して、嫉妬の対象にならないから→なぜ? →なぜなら、「デブ」「ハゲ」「苦労人」など、「うらやましくない」人の活躍に、世間は寛容だから。

このような調子で、普段何気なく見ているテレビや色々な事柄を、社会学者ならではの斬新な視点で分析しているのです。

1つのエッセイが3ページなので、ちょっとした休憩や気分転換におすすめですよ。

 

作家としての古市憲寿さんに触れてみて!

この記事では、古市憲寿さんのおすすめの作品を5つ選んで紹介しました。

どの作品も古市さんならではの独特な視点が面白いので、一度手に取ってみてくださいね。

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ライター:飯田 萌