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最恐の角川ホラー文庫作品|怖いけど読んでしまう!


更新日:2019/1/18

みなさん、ホラー作品は好きですか?
なかにはテレビや映画のように「視覚的表現がなければ怖くない!」という方もいるでしょう。

では小説はどうでしょうか? 文章だけで伝えられると想像が広がり、目に見えない恐怖というカタチでじわじわ迫り来るかも……。

 

ホラー小説を扱う文庫レーベルといえば「角川ホラー文庫」。

数多くのホラー小説を世に送り出しており、単に「怖い」というだけでなく、さまざまなアプローチで読者を恐怖へと誘います。

ここでは筆者が独断で決めた、怖いけれど読むのが止められない最恐の角川ホラー文庫作品をご紹介します。

 

『霧が晴れた時』

書籍『霧が晴れた時』表紙

霧が晴れた時
小松左京(著)

ハイキングに出かけた先で、とある集落に迷い込んだ4人家族。そこには誰もいないが、屋内を見るとついさっきまで人がいたかのようだった。電話も通じず、交番には人もいない。そのうち母親と娘まで消えてしまい……。

 

日本のSF御三家の一人として名高い小松氏ですが、ほかにも幅広いジャンルで作品を発表しています。
その中でも、恐怖にまつわる物語が収録されているのがこちらの短編集です。15編どの物語もそれほど長くはないですが、共通して薄暗い不気味さが漂います。

日常に潜む恐怖の数々。古典ホラーや神話、妖怪など、そのバリエーションの豊かさには驚くことでしょう。

 

『ぼっけえ、きょうてえ』

書籍『ぼっけえ、きょうてえ』表紙

ぼっけえ、きょうてえ
岩井志麻子(著)

時は明治。遊女が客の男に寝物語として語り出したのは己の身の上話。そのあまりに惨い人生とは……。

 

「ぼっけえ、きょうてえ」とは、岡山弁で「とても怖い」という意味です。

本作には表題作のほか3話収録されており、全て岡山県が舞台となっています。
どの物語にも、人間の醜さがこれでもかというくらい描かれていることが特徴です。幽霊も怖いけれど、やはり本当に怖いのは生きている人間なのかもしれません。

恐ろしさとは対照的に、里山の情景や季節の移り変わりが美しく表現されていて、物語の壮絶さが際立っています。

陰鬱な恐怖がじわじわと浸透してくるような……そんな世界を覗いてみませんか?

 

『黒い家』

『黒い家』表紙

黒い家
貴志祐介(著)

保険会社に勤める若槻は、ある日保険加入者の菰田に呼び出される。菰田家に行ってみると、菰田の子供が首を吊ってぶら下がっていた。若槻は、以前から不正に保険金を受け取ろうとしていた菰田を疑うも……。

 

「保険金殺人」がテーマであり、人間の闇と欲深さにゾッとする作品です。
日常のどこにでもある風景がちょっとした歪みで狂い出すという、現実にあり得そうなストーリーだからこそ、読者は引き込まれてしまうことでしょう。

自分と関わる人物が次々と不可解な死を遂げ、得体の知れない恐怖に襲われる若槻はどうなるのでしょうか。

普通の会社員に突如訪れた、あまりにも恐ろしい非日常。幽霊や妖怪は出てこないのに、生々しくリアルな表現に震えます。独りで読むときはご注意を。

 

『お見世出し』

書籍『お見世出し』表紙

お見世出し
森山東(著)

京扇子の工房で働く要三は、手先が器用で期待される職人。そこで“凶”を溜め込み、開くと大惨事を起こす呪いの「大呪扇」を作れるのではないかと言われるが……。

 

「お見世出し」とは、花街で修行を積んだ少女が舞妓として1人前と認められる晴れ舞台を指します。

タイトルにもある『お見世出し』のほか、同じく京都を舞台にした物語が2作品収録。その中でも『呪扇』は身震いがするほど怖く、狂気に満ちています。
呪扇を作る工程の秘密、京都という古い街の持つ不思議な怪しさが不気味。しかし、そういった土地だからこそ、人々は今も昔も魅了されているのかもしれません。

3作品とも心霊的な怖さがありますが、欲に取り憑かれた人間の恐ろしい姿が際立っています。

また、祇園の雅な世界が色鮮やかに繊細に描かれ、京都弁で語られる演出が想像力を掻き立ててくれるでしょう。

 

『粘膜人間』

書籍『粘膜人間』表紙

粘膜人間
飴村行(著)

身長195cm、体重105kgの、ありえないほど体格のいい小学生・雷太。あるときから暴力的な行動をするようになり、兄2人は身の危険を感じていた。そして雷太を殺そうと考えた2人は、村はずれに住む「異形の者」に殺害を依頼し……。

 

「異形の者」とは、なんと河童! 性行為のできる女性をあてがうことを条件に、雷太殺害を引き受けるのです。

最初は、読んだことを後悔してしまうような凄惨でグロテスクなシーンが満載。しかし、なぜか気づかぬうちにその世界に引き込まれてしまうから不思議です。

残虐さだけでなく、エロスやユーモアも盛り込まれています。非常に斬新で、まさに粘膜を刺激されるような恐怖を感じられる作品ですよ。
本作は「粘膜シリーズ」の第1作目。ぜひシリーズ全作読んでみてくださいね。

⇒「粘膜シリーズ」作品一覧はこちら

 

ゾッとするような怖さが欲しいのなら角川ホラー文庫を

太古の昔から、人類は「この世のものではないもの」や「不快に感じるもの」に興味津々です。あらゆる表現で、「恐怖」は人の心を虜にしてきました。

「怖いもの見たさ」と言われるように、人は「恐怖」を知ることに取り憑かれている生き物かもしれません。

ぜひ、角川ホラー文庫の作品を読んで、「恐怖」を味わってみませんか?

 

今回紹介した角川ホラー文庫の作品

霧が晴れた時』小松左京(著)

ぼっけえ、きょうてえ』岩井志麻子(著)

黒い家』貴志祐介(著)

お見世出し』森山東(著)

粘膜人間』飴村行(著)

 

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