ディストピア小説 おすすめ10選|恐ろしすぎる世界に絶望する。
更新日:2018/10/18
ユートピア(理想的な社会)の反対を、「ディストピア」と言います。
ディストピアとは、
・徹底的に管理された自由の無い世界
・人間の暴力性がむきだしの世界
・指導者が国民を洗脳し、反抗する人間は徹底排除される世界
のことを指します。
そんな、ひょっとしたら近い未来で起こり得るかもしれないディストピア小説は、読者の心を掴んで離しません。
読んだら考えさせられる、おすすめのディストピア小説をご紹介します。
『消滅世界』
『消滅世界』
村田沙耶香(著)、河出書房新社
夫婦間の性行為が近親相姦と考えられ、「セックス」や「家族」の概念が消滅した世界。
子供は人工授精によって生まれ、男性も人工子宮をつけて出産する。そんな世界で、両親の「交尾」によって生まれた雨音は――。
一見現実ではありえないような内容ですが、男性も女性も1人で生きられる時代となった今、あえて「結婚をしない」選択をする人も多くいます。
人の価値観は常に移り変わっていくからこそ、いずれこんな世界になり得るのでは……と、考えてしまいました。
ずっと奇妙な感覚が付きまといますが、読後はスッキリとしていて読みやすいです。
『すばらしい新世界』
『すばらしい新世界』
オルダス・ハクスリー(著)、講談社
26世紀のロンドンでは、胎児は工場で生産し、フリーセックスが奨励されていた。多幸感が得られる快楽薬が支給され、誰も人生に不満を持たない世界になったが――。
同作品には、「お母さん」「お父さん」の概念が無く、「セックス」はただ楽しむだけのものとされています。
一見するとそれは理想郷のようですが、その社会に疑問を持つ人々の姿も描かれているのが面白いところ。
80年以上前に発表された作品とは思えない、読み応えも十分な作品です。
『一九八四年』
『一九八四年』
ジョージ・オーウェル(著)、早川書房
独裁者ビッグ・ブラザーによって支配されている全体主義国家のオセアニアが舞台。
国民の言動は全て監視され、思想や結婚なども統制されていた。真理省記録局に勤務するウィンストンはそんな体制に異常を感じ、不信感を抱いているが――。
監視社会の中で、歴史改ざんの仕事をしているウィンストンが、徐々に反政府活動に染まっていきます。
暗い物語が淡々と進んでいくことに不気味さを感じずにはいられません。「これ、ノンフィクションなの?」と疑いたくなるほど、その内容はリアルです。
ラストには衝撃の展開も待ち受けていますよ。
『時計じかけのオレンジ』
『時計じかけのオレンジ』
アントニイ・バージェス(著)、早川書房ほか
全てを徹底的に管理された社会の中で、15歳のアレックスは仲間とともに欲望の限り暴力などを繰り返していた。
しかしあるとき、仲間に裏切られたアレックスは、ひとり警察に捕まってしまい――。
映画にもなった本作。殺人犯として収容されたアレックスは、そこで特殊な治療を受けることになります。その治療によって、更生せざるを得なくなったアレックスですが……。
小説は全部で21章ありますが、映画には21章のラスト部分がありません。もしも映画しか見たことがないという方は、ぜひ小説(完全版)も読んでみてください。
なにが善なのか、なにが悪なのか。考えさせられます。
『リリース』
『リリース』
古谷田奈月(著)、光文社
徹底した完全男女同権社会の国、オーセル。オーセルではジェンダーフリーが確立し、同性婚や精子バンクは国営化されている。また、男性は全員精子バンクに、女性は全員代理母に登録していた。
同性愛者が多数派な一方、異性愛者であることを隠す人々がいて――。
女性らしさや男性らしさが「悪」となる価値観は、ある意味で究極のジェンダーフリーなのかもしれません。
男女は中性化するべきなのか? 性別は無くなるべきなのか? 深く考えさせられる作品です。
『わたしを離さないで』
『わたしを離さないで』
カズオ・イシグロ(著)、早川書房
外の世界とは完全に隔離されている施設ヘールシャム。そこではなぜか図画工作の授業に力を入れており、健康診断が毎週おこなわれている。
キャシーは、ヘールシャムで「提供者」と呼ばれる人々の介護人をしている。そして、そこでの出来事を回想していく――。
日本でもドラマ化され話題となった『わたしを離さないで』。
臓器提供のために作られたクローン人間である若者たちの青春群像劇が描かれています。
臓器を提供する日を、ただ待っているだけの日々。未来への可能性を完全に奪われた世界は、読むのが辛かったですが、惹きこまれました。
『審判』
『審判』
フランツ・カフカ(著)、岩波書店ほか
主人公の「K」は、ある朝突然逮捕される。Kはなぜ自分が逮捕されたのか理由を探りながらも、普段通りの生活を送る日々だった。そんなある日、2人の紳士が訪ねてきて――。
壊れていく人間の様子から、不安を感じられる……。言わずと知れた、フランツ・カフカの傑作です。
カフカの作品はどれも独特で、ストーリーや主人公の感情を楽しむようなものではありません。しかしこの作品からは、「冤罪」という現代問題にも通じるテーマが伝わってきました。
『蠅の王』
『蠅の王』
ウィリアム・ゴールディング(著)、新潮社ほか
無人島に取り残された少年たちは、協力し合いながら生きていた。
ところがあるときリーダーが決まり、ルールができ、グループの対立に発展。やがて、激しい対立が起こり――。
閉鎖的な環境で生きることになった少年たちが、徐々に己の欲に支配されていく物語。1963年と1990年に、それぞれ違う監督のもとで映画化されました。
肩書きも経歴も関係なくても上下関係ができてしまうのは、私たちの日常にも起こり得ることです。
人間関係の難しさを改めて感じさせられます。
『動物農場』
『動物農場』
ジョージ・オーウェル(著)、角川グループパブリッシングほか
人間たちに家畜として搾取されていると気づいた動物たちが、人間たちを農場から追放。
動物農場を作り上げたが、「動物みな平等で平和な世界」はそう長くは続かなかった――。
ジョージ・オーウェルの作品『1984年』の前編とも言える作品。
人間から動物へ、指導者が変わっても結局同じような問題が起こってしまう……という物語です。話の設定にはユーモアたっぷりですが、全体主義の恐ろしさがこれでもかと詰まっています。
『23分間の奇跡』
『23分間の奇跡』
ジェームズ・クラベル(著)、集英社
戦争に負けた国にあるどこかの学校に、新しい女教師がやってきた。
最初は教師に不信感を持っていた子供たちだったが、午前9時に始まって23分後、その考えは大きく変わっていた――。
教育と洗脳は紙一重だ、と感じる作品です。さくっと読める作品でありながら、自由や公平について考えるきっかけとなり、心に残ります。
フェイクニュースが蔓延る昨今、「人間の思考なんて簡単に変えられてしまう」……そんな恐怖をひしひしと感じられました。
いつか起こるかもしれない。
同じことが起こるなんてありえない考えつつも、近い将来起こり得るかもしれないと思うと、ディストピア作品に興味が湧いてきませんか?
簡単に読み進められないような難しい内容もありますが、ぜひ一度読んでみてください。
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