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夏に思い入れのある小説|暑くなってくると読みたくなるおすすめ本


夏に思い入れのある小説|暑くなってくると読みたくなるおすすめ本

夏が近づいてくると、思い出す本たち。暑くなってくると、つい手に取りたくなる一冊。

みなさまにとって、夏を想起させる作品とはどのような本でしょうか。

 

今回のテーマは「夏に思い入れのある本」。

初夏から、梅雨が明け暑さが本格的になる時期に、(個人的に)読みたくなる本を選びました。

ぜひ本をお供に、夏を愉しんでくださいね。

 

11人の少女のかけがえのない夏
『すいかの匂い』

『すいかの匂い』の表紙

すいかの匂い
江國香織(著)、 新潮社

あの夏の記憶だけ、いつまでもおなじあかるさでそこにある。つい今しがたのことみたいに――バニラアイスの木べらの味、ビニールプールのへりの感触、おはじきのたてる音、そしてすいかの匂い。無防備に出遭ってしまい、心に織りこまれてしまった事ども。おかげで困惑と痛みと自分の邪気を知り、私ひとりで、これは秘密、と思い決めた。11人の少女の、かけがえのない夏の記憶の物語。(表紙裏)

 

夏の記憶を綴った11編が収録された短編集。

九歳の夏、母の出産の間、叔母さんの家に預けられた「私」。
たちまちホームシックにかかってしまった私は、ある日、叔母さんの家から逃げ出します。ひたすら歩き続け、川の向こうに見えた小さなあかり。導かれるようにその家にあがりこんだ私は、家の中の光景を見て、息をのみます。

なんと、そこにいた男の子二人は、上半身を共有していたのです。肩から腰までがくっついており、腰から下はそれぞれ独立していました。(「すいかの匂い」)

 

表題作をはじめ、衝撃的な作品が揃った短編集であるため、インパクトが強く、一生忘れられない一冊となりました。残酷さと儚さの対比が際立った作品です。

 

19歳の幻のような不思議な体験
『哀しい予感』

『哀しい予感』の表紙

哀しい予感
吉本ばなな(著)、角川書店ほか

弥生はいくつもの啓示を受けるようにしてここに来た。それは、おばである、ゆきのの家。濃い緑の匂い立ち込めるその古い一軒家に、変わり者の音楽教師ゆきのはひっそりと暮らしている。2人で過ごすときに流れる透明な時間。それは失われた家族のぬくもりだったのか。ある曇った午後、ゆきのの弾くピアノの音色が空に消えていくのを聴いたとき、弥生の19歳、初夏の物語は始まった。大ベストセラー、そして吉本ばなな作品初の文庫化。(表紙裏)

 

よしもとばななさんの代表作のひとつ。

19歳。あることがきっかけで、家出を決行した弥生。おばの家に転がり込んだ弥生は、これまで失われていた幼少期の記憶を少しずつ思い出していきます。そして、短いけれど不思議な経験をします……。

弥生に起こった数々の出来事は、まるで幻のように切なく、まさに『哀しい予感』というタイトルがぴったりです。

じわじわ暑くなってくると、本書が読みたくなります。6月の甘い冷気、梅雨のしめった路地、初夏の木々の織りなす窓の透し模様、明るいみどりの世界、澄んだ闇。

ページをめくるだけで、初夏ならではの爽やかな匂いがスッと漂ってくるような気になりますよ。

 

西の魔女と過ごした1か月
『西の魔女が死んだ』

『西の魔女が死んだ』の表紙

西の魔女が死んだ
梨木香歩(著)、新潮社ほか

中学に進んでまもなく、どうしても学校へ足が向かなくなった少女まいは、季節が初夏へと移り変るひと月あまりを、西の魔女のもとで過した。西の魔女ことママのママ、つまり大好きなおばあちゃんから、まいは魔女の手ほどきを受けるのだが、魔女修行の肝心かなめは、何でも自分で決める、ということだった。喜びも希望も、もちろん幸せも……。その後のまいの物語「渡りの一日」併録。(表紙裏)

 

日本を代表する小説で、200万部を超える大ベストセラー。初夏になると、この作品を思い出す方も多いかもしれませんね。

裏庭の茂りすぎたセージ、ミントの葉、ワイルドストロベリーの絨毯、ラベンダーと陽の光の匂いのするシーツ。燦々と太陽の光が降り注ぐ美しいイングリッシュガーデンの描写は、初夏の新緑を思い起こさせます。

描かれる自然の描写があまりにも印象的なので、暑くなると、本書の世界観がつい頭に浮かぶのです。

不登校になってしまったまいの心が、自然がいっぱいの環境によって、徐々に解かれていくのと同時に、読者の疲れた心も癒されていくことでしょう。

 

忘れられない一冊になる
『そしてまた 波音』

『そしてまた 波音』の表紙

そしてまた 波音
銀色夏生(著)、 角川書店

「シャボン玉」

風に吹かれて飛んでいく。すぐに壊れて消えていく。ぎゅっとにぎりしめたこの手も、いつかは離れ、あっという間に、遥か彼方になっていく。だけど、後悔していない。風はあとからあとから、吹いてくるから(表紙裏)

 

シャボン玉の表紙が印象的な、銀色夏生さんの写真詩集です。

波と海。青い空と草原の匂い。プール。蝉の鳴き声。コップのまわりの無数の水滴。まぶしい日差し。砂浜の貝殻。

夏の写真といえば、元気でエネルギッシュなイメージだったり、涼しげで爽やかなイメージを与えがちですが、銀色さんの写真は、どこか寂しげ。それが、本書を「忘れられない」作品にしています。

また、本書では、数々の風景の写真と共に、読者を感傷的にさせる詩が綴られているのがポイント。収録された詩を読むと、過去を思い出さざるを得ません。銀色さんの優しい眼差しは、読者を丸裸にするからです。

まるで、美しい波しぶきに、あっちこっちへ流されて、連れていかれるような錯覚を覚える詩集です。

 

夏を感じることができる作品たち

今回は、暑くなってくると読みたくなる4冊を集めました。

お外で読んでも趣があっておすすめですよ。

 

今回ご紹介した書籍

すいかの匂い
江國香織(著)、 新潮社

哀しい予感
吉本ばなな(著)、角川書店ほか

西の魔女が死んだ
梨木香歩(著)、新潮社ほか

そしてまた 波音
銀色夏生(著)、 角川書店

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ライター

飯田 萌
フリーランスのライター。一児のママ。出産前まではリクルートで結婚情報誌を担当。現在はWeb媒体にて書籍、音楽、育児など幅広く執筆中。影響を受けた作家は白石一文。趣味はスイーツを愉しむこととドラマ鑑賞。