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夏を先取り!ビーチベッドでカクテル片手に読みたい短編小説5選


ビーチとカクテル

真夏のような暑さの日が増えてきました。今年の夏は猛暑に見舞われるという話もちらほら耳にします。

夏といえば、心も体も踊るバカンス!今年の夏休みはどこに行こうか考え始めている人も多いのではないでしょうか?

今回は「真夏のビーチベッドでカクテル片手に読書」という、一度はやってみたい憧れのシチュエーションで読むのにオススメな5冊を紹介します。リゾート地に行く予定がある人は、お供にいかがでしょうか?

 

今回の選書ポイントは、以下の3つです。

・夏やビーチが舞台の話であること
・サクッと気軽に読める短編小説であること
・読後感が爽やかで余韻に浸ることができる話であること

くれぐれも、長時間読書をして熱中症にならないようお気をつけてくださいね。

 

よしもとばなな『まぼろしハワイ』

『まぼろしハワイ』表紙

まぼろしハワイ
よしもとばなな(著)、幻冬舎

ハワイが舞台の傑作集。ハワイ、フラ、オハナ(家族)にまつわる3つのストーリーが収録されています。

筆者のよしもとばななさんは、自他ともに認めるハワイ好き。本書は、取材を含め完成に5年もかかった大作で、ハワイの雰囲気や景色が絶妙に描かれています。

 

本書は、フラダンサーのあざみと、義理の娘オハナが主役です。
オハナのパパが死んで3ヶ月。どうしようもない喪失感と悲しみを背負った2人はホノルル空港へ降り立ちます。
2人の傷ついた魂は、ハワイの大自然や風景、食べ物、現地で巡り合った人々と触れ合うことで少しずつ再生していくのです。

読後感は、爽やかというよりは、せつない。けれど、じんわりと自分の心があたたかくなっていることに気づくはず。疲弊した心が浄化されていくような感覚は、心地よく、癖になることでしょう。

読んでいると無性にハワイに行きたくなります。ハワイの美しい景色が神秘的に、色鮮やかに描かれた小説です。

 

江國香織『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』

『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』表紙

泳ぐのに、安全でも適切でもありません
江國香織(著)、集英社

舞台は日本の海辺。安全でも適切でもない人生のなかで、愛だけはためらわない、あるいは、ためらわなかった女たちのストーリーが10編収録された恋愛短編集です。

といっても、決して過激な内容ではありません。描かれているのはあくまでも日常です。

たとえば、2話目の「うんとお腹をすかせてきてね」は、男女の食事の様子が描かれているだけです。なのに、とてつもなく官能的で、危険な香りに満ち溢れています。

恋人とレストランで食べる幸福な食事。オニオングラタンスープ、つめたいパテ、温かく蒸した野菜、一片の鹿肉、どっしりしたココナツクリームのケーキ、エスプレッソ。辛子マヨネーズのついた太い立派なアスパラガス、銀杏に豚肉、砂肝、しいたけ、白身の魚、えび、じゃがいも、つめたいビール。

このように美味しそうな料理がたくさん出てくるため、つい食欲が湧いてしまいます。

ストーリーはもちろん、甘美でドラマティックなことばや比喩表現がふんだんに詰め込まれており、カクテル片手に読む本としては最適な一冊です。

 

池澤夏樹『南の島のティオ』

『南の島のティオ』表紙

南の島のティオ
池澤夏樹(著)、文藝春秋

ミクロネシアのポナペ島が舞台のファンタジー短編集。

主人公は、父親がホテルを経営している12歳の少年・ティオ。のんびりと過ごす島の住民や島に遊びにきた人たちとのふれあいが描かれています。

例えば、絵はがきを持ってティオのホテルにやってきた、絵はがき屋のピップさん。

ピップさんは言います。この絵はがきは決して安くない。けれど、この絵はがきを買ったお客さんがこの絵はがきで手紙を出すと、もらった相手は絵はがきに載っている写真の実物が見たくなる。つまりこの絵はがきは、人を必ず連れてくる絵はがきなのだと。

ティオは信じ、父親を説得して購入するのですが……?

というように、ティオの身の回りで不思議なことが次々と起こります。
児童文学扱いでありながらも、大人が読んでも存分に楽しめるようになっています。

青い空・白い雲・美しい海・潮風・南国の花など、美しい自然描写もたっぷりと描かれていて、リゾート気分を楽しむにはぴったりの一冊です。

 

サマセット・モーム『雨・赤毛』

『雨・赤毛』表紙

雨・赤毛
サマセット・モーム(著)、新潮社

南太平洋に位置するサモア諸島やハワイなどの南国が舞台である、推理短編集。

3編のストーリーが収録されており、そのなかでも「雨」は世界短編集史上の傑作と評されています。

「雨」の主役は、布教への情熱に燃える宣教師・デイヴィドソン牧師。彼は妻とともに船で任地へ向うのですが、途中、伝染病検疫のため島に停留することになってしまいます。奇しくも、同じ船に乗っていたのは自堕落な娼婦。デイヴィドソン牧師は彼女の教化に乗りだします。時期はちょうど雨季。滝のように降り続く雨が彼の理性をかき乱し、歯車を狂わせて……?

情景描写として描かれる雨の描写が秀逸であり、読んでいるうちに、自分の身体もジメッとしてきたような錯覚に陥ります。たとえ、からっと暑いビーチで読んでいたとしても。

また、海辺の描写は美しく、思わずうっとりしてしまうほど。その反面、衝撃的な結末に背筋がひんやりするに違いありません。このように、一冊で多彩な体験ができるのが、本書の醍醐味となっています。

 

アガサ・クリスティー『マン島の黄金』

『マン島の黄金』表紙

マン島の黄金
アガサ・クリスティー(著)、早川書房

ミステリの女王・アガザ・クリスティーの死後、新聞や雑誌に掲載されたきり埋もれてしまった幻の作品を掘り起こし、没後から21年の時を経て発売された短編集。心理サスペンス、ホラー、ロマンスなど多彩なラインナップが収録されています。

なかでもリゾート気分にぴったりなのが、表題作の「マン島の黄金」。舞台は、イングランドとアイルランドの真ん中に浮かぶマン島。

この作品は、観光客誘致のために、マン島全体で開催された宝探しイベントの手掛かりになる物語として書かれました。新聞に5回に分けて連載され、当時は話題になったようです。

実際に、マン島には4つの宝が隠されており、見つけた人には大金が賞金として支払われたのだとか。この物語のコピーと地図を持って、自分の足で宝を探すのはどんなに楽しかったことでしょう。

本書のあとがきに、詳しい解説とマン島の地図が載っています。カクテル片手に、謎解きをしながら読み進めてみるのはいかがでしょうか。

 

小説でリゾート気分を味わって

ビーチに本とサングラス

気になる作品は見つかりましたか?

小説の醍醐味は、なんといっても非日常を疑似体験できること。もしリゾート地に行く予定がなくても、本書を読んでぜひリゾート気分を味わってみては?

 

今回ご紹介した書籍

まぼろしハワイ
よしもとばなな(著)、幻冬舎

泳ぐのに、安全でも適切でもありません
江國香織(著)、集英社

南の島のティオ
池澤夏樹(著)、文藝春秋ほか

雨・赤毛
サマセット・モーム(著)、新潮社ほか

マン島の黄金
アガサ・クリスティー(著)、早川書房

ビールが飲みたくなる、ほろよい小説&エッセイ

ライター

飯田 萌
フリーランスのライター。一児のママ。出産前まではリクルートで結婚情報誌を担当。現在はWeb媒体にて書籍、音楽、育児など幅広く執筆中。影響を受けた作家は白石一文。趣味はスイーツを愉しむこととドラマ鑑賞。