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ショートショート小説のおすすめ|スキマ時間に読みたい一味違った作品


更新日:2019/6/21

ショートショート小説のおすすめ|外出先で読みたい一味違った作品

ちょこっと読書を楽しみたい! そんな方におすすめなのが、ショートショート集です。

ショートショートといえば、星新一さんや、小松左京さん、筒井康隆さん、海外だとアイザック・アシモフさん、フレドリック・ブラウンさん、レイ・ブラッドベリさんなどが有名ですよね。

その特性上、結末の意外性を楽しむものであり、短い話でオチをつける必要があるため、斬新なアイデアが出やすいミステリーやSFなどの要素を持つものが多いように思います。

ここでは、おすすめのショートショート集を紹介します。スキマ時間のお供にいかがでしょうか?

 

過去の記憶を呼び起こす夢巻

『夢巻』表紙

夢巻
田丸雅智(著)、双葉社

星新一さんの孫弟子(星新一さんの唯一の弟子・江坂遊の弟子)である田丸雅智さんのショートショート集。星新一さんの作風を引き継いでいるかと思えば、その作風は全く異なります。

なかでもこの作品は、ピースの又吉直樹さんが「どんな仕事でも、アイデアって大事じゃないですか。それって刺激的で斬新な発想に触れないと絶対に出てこないから、みんなこれを読んだ方がいいと思います」と絶賛したことで一躍話題となった一冊です。

タイトルの『夢巻』というのは、とあるシガーバーで提供される桃色の煙が出る葉巻のこと。葉巻の原材料はたばこ葉ですが、夢巻の原材料は『子どもの頃の作文』。過去の記憶を呼び起こしてくれる夢巻。

幻想的なショートショートを楽しみたい方におすすめの作品です。

 

旅にまつわる48のファンタジーショートショート

『ショート・トリップ』表紙

ショート・トリップ
森絵都(著)、集英社

森絵都さんが書く、48の”旅”にまつわるショートショート集。毎日中学生新聞の連載『Further sight 旅のかけら』を加筆したものが収録されています。

ジャンルは、ファンタジーが中心。寓話やくすりと笑えるショートショートが収録されています。1話は3ページという長さ。5分ほどのスキマ時間でファンタジーの世界にトリップできる本というのは珍しいのではないでしょうか。

さすが森絵都さん! と言えるような、知的好奇心をくすぐる内容も満載で、私は作品を読むたびにワクワクしていました。

また、1話ごとに挿絵も付いているので、まるで絵本のようにも楽しむことができますよ。表紙は宇宙の中を旅するロケットのイラストが描かれています。

 

妻のために描き続けたショートショートとエッセイ集

『妻に捧げた1778話』表紙

妻に捧げた1778話
眉村卓(著)、新潮社

余命1年の妻のために、毎日ショートショートを一話ずつ書き続けた眉村卓さん。本書は眉村さんのショートショート集でもあり(五年間生きた妻への1778篇から19篇を収録)、エッセイ集でもあります。

『一日一話』というタイトルで書かれた作品たちは、バラエティに富んでおり、一般的なショートショートの定義を見事にぶっ壊してくれます。

眉村さんが妻へ向けて書く『一日一話』のなかで、決めていたことは「読んであははと笑うか、にやりとするもの。フィクションで、一回原稿用紙三枚以上。売り物になるレベル」なのだそう。病人の神経を逆撫でしたり、深刻なものは避けたのだそう。

ですので、にやりと笑えるショートショートを楽しみたい方にはぜひおすすめしたい作品ですよ。

 

世にも奇妙なショートショートの世界

『短劇』表紙

短劇
坂木司(著)、 光文社

『和菓子のアン』などハートウォーミングな作品で知られる坂木司さんのショートショート集。『本が好き!』に連載されていたものを書籍化した作品になります。

収録されている作品は26作品。これまでの坂木さんの作風とは異なり、ビターな奇想短編集に仕上がっているのが特徴的です。

解説のなかで、「坂木司と平山夢明――イメージ的には対極ともいえるこの二人の作家を結び付けて考えることになろうとは、我ながら夢に思わなかった」という言葉が出てくるように、とにかく坂木さんらしくない意外な作風に読者は必ず驚くはずです。

ジャンルは、まさに『世にも奇妙な物語』。冒頭部分は穏やかだった作風が、豹変し、クライマックスには……。続きはぜひ本書でご覧ください。

 

日常がテーマのショートショート

『抱卵』表紙

抱卵
堀真潮(著)、キノブックス

恋愛や友情、近所の出来事など、日常をテーマにした24篇が収録されたショートショート集。

表題でもある「抱卵」は、戦場で死んだ恋人がなぜか胸に抱いていた4つの卵と、それを食べることで恋人の記憶を感じられる女性の物語です。不思議な卵の1つを、彼女は抱き続けます。

 

意外な結末にいろんな感情を呼び覚まされるのがショートショートの醍醐味。本作には、ありふれた生活の中に”毒”が潜んでおり、幻想的な世界が広がっています。
堀真潮さんの描く女性像はとてもリアルで、女性の怖さを垣間見られますよ。

ゾクゾクするようなお話ばかりではなく、クスリと笑えたりほっこりするような作品もあり、様々なテイストを楽しみたいときにおすすめです。

 

パパが娘に聞かせてあげるお話

『パパの電話を待ちながら』表紙

パパの電話を待ちながら
ジャンニ・ロダーリ(著)、講談社

イタリア中を旅して回るセールスマン、ビアンキさん。なかなか会えない娘のために旅先から毎晩9時に電話をかけ、短いお話を聞かせてあげます。
本作は、そんなビアンキさんの不思議なお話を集めたショートショート集です。

 

作者はイタリアで愛される児童文学作家のジャンニ・ロダーリ。ロダーリの子供たちへの愛に溢れた文体は、微笑ましく優しい言葉ばかりです。

さらに、口元が緩むようなユーモアもたくさん! 大人も楽しめるシュールで可愛らしい童話の世界が広がっています。

個性的な登場人物たちには驚かされますが、決してシビアな言葉は使われていません。退屈な待ち時間には、本作の扉を開いてロダーリーの不思議世界へショートトリップしてみてください。

 

不気味だけれど美しい

『田中慎弥の掌劇場』表紙

田中慎弥の掌劇場
田中慎弥(著)、毎日新聞社

恐ろしくも美しく、簡潔にまとめられた物語を37篇収録した短編集。田中さん独特の表現には、なんともいえぬ気味の悪さや不気味さを感じずにはいられません。

 

バーに立ち寄ったサラリーマン、観光に来た夫婦、日曜の昼下がりにうどんを食べる父親。それぞれが一見平凡な日常、身近な登場人物のようですが、読んでいくと知らず知らずのうちに毒が効いてきます。
そんな奇妙な毒はさりげなく文章の中に混ぜ込まれていて、「えっ!」と思わず声をあげた瞬間もありました。

意味がわかるとゾクッとするようなお話や明確なオチを描いていない作品もあり、想像力を掻き立てられます。皮肉たっぷりな作品も面白く、ニヤリと笑わせてくれる作品です。

 

オチを考えるのが楽しい!

『猫の事件』表紙

猫の事件
阿刀田高(著)、講談社

ブラックユーモアをたっぷり効かせたショートショートの名手、阿刀田高さんの作品。オカルトチックな話や、オチに驚かされる不思議な話など、36篇(新装版では35篇)のショートショート集です。

表題作の「猫の事件」は、ある男がお金持ちのおばあさんの可愛がっている猫を誘拐するお話。子供を誘拐すれば大事件になりますが、猫だったら大丈夫だろうと男は企みます。

展開がスピーディーで読みやすく、あれこれオチを推理しながら読み進めるのも楽しいですよ。1984年に初版が発行されており、現代とは違う昭和の生活が垣間見れるところも面白いです。

 

奇妙、だけどなんだか楽しくなるショートショート

『あやしい遊園地 奇妙で愉快なショートショート集』表紙

あやしい遊園地 奇妙で愉快なショートショート集
江坂遊(著)、講談社

日常に織り込まれたブラックユーモアや、奇妙さが際立つ作品70篇が収録された本作。

小物を虹で作るおじいさんと出会う「虹細工」、サラリーマンが恐ろしい展開へと巻き込まれる「地下鉄御堂筋線」、関西弁に安心していると、いつの間にか不思議な世界へと引き込まれてしまう「花火」など、さまざまな世界を楽しめます。

どの作品も語り口調で綴られているので読みやすく、それがさらに読者を夢中にさせる要素となっています。オチらしいオチのない、謎を残したまま終わる話もあり、奇妙な世界が後を引くショートショート集です。

 

あなたは自分の職場が好きですか?

『職場、好きですか?』表紙

職場、好きですか?
眉村卓(著)、双葉社

職場を舞台に、不思議な人たちが巻き起こす不思議な出来事を集めたショートショート集。

OLたちの人間関係、キャリアウーマンの出現に嫉妬する男性たちなど、いつの時代も職場には悩みは多いものです。そんな職場で起こる出来事に、SF要素が盛り込まれます。

絶対にフィクションだろうと思っても、平凡で誰もが身近に感じる場所だからこそ想像しやすく。現実味を感じました。
視点を変えて見れば、実は現実世界で自分自身に当てはまることもあるかもしれません。

自分の職場について考えさせられる、ちょっぴり心に刺さる作品です。

 

スキマ時間に小説の世界へ

たかが5分、されど5分。

スキマ時間の読書は、人生を豊かにしてくれることでしょう。ぜひ手にとってみてくださいね。

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