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小川糸さんのおすすめ著書4選


美しい風景、こだわり抜かれた素材で作られた美味しい食事、心優しくあたたかい人々。自然あふれるゆっくりした時間のなかで、シンプルに、自分の思いのままに、人生を生きる―。

 

そのような暮らしに憧れを感じる人は多いのではないでしょうか?

小川糸さんの作品は、まさしくその憧れを形にしたもの。

穏やかでほっこりした作風には心癒されることでしょう。

 

今回は小川さんの作品の中でも、代表作とされる4作品を選んでみました。何気ない日常を非日常に変えてくれる作品が揃っていますので、ぜひ読んでみてくださいね。

 

毎日を丁寧に生きていく

『食堂かたつむり』
ポプラ社

同棲していた恋人にすべてを持ち去られ、恋と同時にあまりに多くのものを失った衝撃から、倫子はさらに声をも失う。山あいのふるさとに戻った倫子は、小さな食堂を始める。それは、一日一組のお客様だけをもてなす、決まったメニューのない食堂だった。巻末に番外編収録。(表紙裏)

 

小川さんの名を世に知らしめた代表作。

本書のテーマは「食」と「母」。

失恋をきっかけに失語症になってしまった主人公の倫子。彼女が帰った先は、忌み嫌っている母親のいる故郷でした。故郷で食堂を開店した倫子は、毎回お客様に合わせたメニューを提供します。そのメニューが非常に珍しく、大変美味しそうな表現で描かれているんですね。

たとえば、初めて作ったメニューは「ザクロカレー」。高校生の桃ちゃんの恋愛を成就させるために作った「ジュテームスープ」。他には「ぶどうパンで作る洋ナシのフルーツサンド」など……。

生きることは、食べること。命をいただくことの有り難みに改めて気づかされる作品です。

 

依頼人の気持ちを手紙に乗せる

『ツバキ文具店』
幻冬舎

四季の彩り、日本語の美しさ、ご近所付き合い。忘れてしまった大切なものがここにあります。

鎌倉の文具店を舞台にした切なくも懐かしい物語。(帯)

 

2016年の本屋大賞4位。2017年のNHKドラマにて放送されていた作品です。

舞台は鎌倉。美しい文字で手紙を代筆する”代書屋”である「ツバキ文具店」の物語が静かに描かれます。「ツバキ文具店」が普通の代書屋と異なるのは、代筆だけでなく、手紙の内容まで考えてくれる店舗であるところ。

私が本書を読んで面白いと思ったのは、ツバキ文具店の店主・ポッポちゃんが書いた手紙が便箋まるごと、字体とともにそのまま載っているところ。依頼内容や依頼人の個性によって、手紙の内容、字体、使用する文具、便箋や封筒、切手などを使い分けるのです。たとえば、この依頼人は毛筆よりも太めの万年筆が合っている、謝絶状なのでインクは漆黒、紙は『満寿屋』といった具合に。大変勉強になる一冊です。

実在するお店が載った鎌倉案内図も付いているので、私は本書片手に鎌倉散歩をしたいなと思っています。

 

着物店を切り盛りする女性の恋物語

 

『喋々喃々』
ポプラ社

ちょうちょうなんなん(喋々喃々)=男女が楽しげに小声で語り合うさま。東京・谷中でアンティークきもの店を営む栞。ある日店に父親に似た声をした男性客が訪れる―少しずつふくらむ恋心や家族との葛藤が、季節の移ろいやおいしいものの描写を交え丁寧に描かれる。(表紙裏)

 

舞台は東京の下町・谷中。本書の魅力はなんといっても、小川さんにしかできない美しい描写ではないでしょうか。

物語は、主人公・栞が、七草粥を炊くシーンから始まります。「セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ。真っ白い粥に細かく刻んだそれらを放つと、そこだけ春になった」この表現のように、四季折々のものを私たちに届けてくれるのがこの一冊なのです。季節の風物詩がこれでもかとばかりに盛り込まれています。

なお、小川さんはかなりの着物好きだそうで、着物の描写も見事です。「梅が焼きもちを焼くといけないので、半襟にだけさりげなく桜を取り入れてみる。きものの世界では何でも季節を先取りするから、例えば、梅の季節に梅の柄を合わせるのは無粋とされる。本物の梅の美しさには、どう背伸びしたって敵わない」。

情緒あふれる表現のしかたにはつい惚れ惚れしてしまうほど。美しいものに触れたい時に読みたい作品です。

 

ほっこり、優しい気持ちに……

『つるかめ助産院』
集英社

夫が姿を消して傷心のまりあは、一人訪れた南の島で助産院長の鶴田亀子と出会い、予想外の妊娠を告げられる。家族の愛を知らずに育った彼女は新しい命を身ごもったことに戸惑うが、助産院で働くベトナム人のパクチー嬢や産婆のエミリー、旅人のサミーや妊婦の艶子さんなど、島の個性豊かな仲間と美しい海に囲まれ、少しずつ孤独だった過去と向き合うようになり―。命の誕生と再生の物語。(表紙裏)

 

こちらは2012年のNHKドラマにて放送されていた作品です。

失踪した夫を探しに訪れた南の島で、妊娠していると言われたまりあは、つるかめ助産院に住み始めます。助産院での暮らしと美しい情景、美味しいごはんによってまりあの傷ついた心が再生していく姿は、読んでいて心がぽかぽか温かくなります。

そうはいっても単にスローライフが描かれているだけではありません。離島には、島チャビ(離島苦)という多くの問題や困難もあるのです。まさに離島ならではのリアリティも感じられる作品でした。

また、クライマックスの出産のシーンは泣けます。「自分のおへそからしゅるしゅるとへその緒が伸びて、宇宙へとつながっていくのを感じた」。

妊娠・出産の神秘を感じることができ、読めば自分を産んでくれた母親に感謝の気持ちを言いたくなる作品です。

 

小川糸さんの作品に癒されて

小川さんの作品は、ほっこりあたたかい気持ちになれるものばかり。ぜひ疲れた時の処方箋として読んでみてくださいね。

 


今回ご紹介した小川糸さんの作品

食堂かたつむり』ポプラ社
ツバキ文具店』幻冬舎
喋々喃々』ポプラ社
つるかめ助産院』集英社


 

なんだか元気がでない、そんなときに読んで欲しい小説はこちら

 

ライター

飯田 萌
フリーランスのライター。一児のママ。出産前まではリクルートで結婚情報誌を担当。現在はWeb媒体にて書籍、音楽、育児など幅広く執筆中。影響を受けた作家は白石一文。趣味はスイーツを愉しむこととドラマ鑑賞。