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村山由佳さんのおすすめ小説|王道恋愛小説を愉しむならこの作品


恋愛小説における名手として知られる村山由佳さん。読者のみなさまも、一度は村山さんが描くピュアで透明感のある世界観に、胸をキュンと高ぶらせた経験があるのでは?

 

村山さんが代表作『天使の卵 Angel’s Egg』で小説すばる新人賞を受賞したとき、当時の審査員たちは「これだけ凡庸さに徹することができることに感嘆した」のだそうです。

凡庸というのは、目新しくないという意味合いの批判的な言葉に聞こえがちです。でも、いつの時代でも、誰かに恋し、誰かを愛する気持ちやそのプロセスは大きく変わらないはず。

村山さんは、普遍的な『恋愛』を描いているからこそ、多くの人の心を打ち、老若男女に支持されるのだと思います。王道の恋愛小説を愉しみたい時に、ぜひ手にとってみてください。

 

天使シリーズ

『天使の卵 Angel’s Egg』
集英社

そのひとの横顔はあまりにも清洌で、凛としたたたずまいに満ちていた。19歳の予備校生の“僕”は、8歳年上の精神科医にひと目惚れ。高校時代のガールフレンド夏姫に後ろめたい気持はあったが、“僕”の心はもう誰にも止められない―。第6回「小説すばる」新人賞受賞作品。みずみずしい感性で描かれた純愛小説として選考委員も絶賛した大型新人のデビュー作。(天使の卵 Angel’s Egg 表紙裏)

 

『天使の卵 Angel’s Egg』『天使の梯子 Angel’s Ladder』『天使の柩 Farewell,Angel』の3部作と、アナザーストーリーの『ヘヴンリー・ブルー Heavenly Blue』の計4巻から成るシリーズ。

小説すばる新人賞受賞作。売上100万冊を突破したミリオンセラー作品であり、日本を代表する恋愛小説とも言える作品でしょう。

 

19歳の僕と、27歳の春妃。なんと春妃は、僕のガールフレンドである夏姫の実姉でした……。三者三様の複雑な感情が渦巻く中、最後に結ばれたのは……?

村山さんは「格調高い『文学』でなくていい。全ての人を感動させられなくてもいい。ただ、読んでくれた人のうち、ほんの数人でいいから心から共感してくれるような、無茶苦茶せつない小説をかきたい」と考え、この作品を完成させたのだとか。

この作品を読むと、せつなさに胸が張り裂けそうになります。号泣したいときにはオススメですよ。

 

おいしいコーヒーのいれ方シリーズ

『おいしいコーヒーのいれ方 (1) キスまでの距離』
集英社

高校3年生になる春、父の転勤のため、いとこ姉弟と同居するはめになった勝利。そんな彼を驚かせたのは、久しぶりに会う5歳年上のかれんの美しい変貌ぶりだった。しかも彼女は、彼の高校の新任美術教師。同じ屋根の下で暮らすうち、勝利はかれんの秘密を知り、その哀しい想いに気づいてしまう。守ってあげたい!いつしかひとりの女性としてかれんを意識しはじめる勝利。ピュアで真摯な恋の行方は。(おいしいコーヒーのいれ方(1)キスまでの距離 表紙裏)

 

おいしいコーヒーのいれ方」10冊と、おいしいコーヒーのいれ方 Second Season」8冊から成るシリーズ。

甘いコーヒーを飲んだ時のような、あたたかくほんわかした気持ちを味わいたい方にはこちらをオススメします。

 

描かれているのは、主人公の高校生・勝利と、いとこのかれんの甘酸っぱい恋。ファースト・キスの喜び、互いへの思いやりが招く優しい嘘、遠距離恋愛、すれ違い……。

定番のシチュエーションだと言う人もいるでしょう。でも、その普遍性こそが、村山作品の読みどころ。登場人物たちの気持ちが手に取るように分かり、その共感が感動を生むのです。なかなか進展しない二人にやきもきしながらも、どこか懐かしい気持ちになるんですね。

村山さんはあとがきで「活字を追いながら、我がことのようにドキドキして頂けたなら、それほど嬉しいことはありません。コーヒーも、小説も、同じこと。要するに、「おいしいか・おいしくないか」、それだけのことなのですから」と書いています。ぜひ本書をおいしく味わってみてください。

 

傷を持つ人々の恋愛を描いた癒しの物語

『青のフェルマータ』
集英社

両親の不和、離婚から言葉を失った里緒は、治療に効果的だというイルカとのふれあいを求めて、オーストラリアの島にやってきた。研究所のイルカの世話を手伝って暮らす彼女に島に住む老チェリストJBが贈る「フェルマータ・イン・ブルー」の曲。美しいその旋律が夜明けの海に響いたとき、海のかなたから野生のイルカが現れて―。心に傷を持つ人々が織りなすイノセントでピュアな愛の物語。(表紙裏)

 

こちらはシリーズものではなく一冊完結の長編。村山作品の『透明感』を感じたいときにはこの一冊をオススメします。

 

舞台はとあるイルカの研究所。心に傷を負った女の子・里緒が、周囲の人々やイルカと触れ合うことによって、元気を取り戻していく……という王道の人間ドラマ。

ストーリー展開もさることながら、この作品はなんといっても村山さんの筆力が素晴らしいです。たとえば「わたしは水から顔をあげ、海と区別がつかないくらいに青く澄んだ空を見上げた。ぽっかりと浮かんだ真綿色の雲のおなかが、水を映して、透きとおったエメラルドグリーンに染まっている。夏の匂いがした。風からも、水からも、夏の匂いがしていた」など。

みずみずしく、美しい情景描写にぐいぐい引き込まれること間違いなしの作品ですよ。

 

ひとつの家族をめぐる物語

『星々の舟』
文藝春秋

禁断の恋に悩む兄妹、他人の男ばかり好きになる末妹、居場所を探す団塊世代の長兄、そして父は戦争の傷痕を抱いて―愛とは、家族とはなにか。別々に瞬きながらも見えない線で繋がる星座のように、家族は、「家」という舟に乗って無限の海を渡っていく。心震える感動の短篇連作小説集、第129回直木賞受賞作。(表紙裏)

 

直木賞受賞作。受賞時「この作家がこの一作で、大きな壁を突き破ったことは、間違いないだろう」と審査員に評されたことからもわかるように、村山さんのこれまでのイメージを一新する作品となっています。

 

描かれているのは、不倫、兄弟間の恋愛、いじめ、虐待、従軍慰安婦といった理不尽な現実。ですが、決して暗い小説ではなく、社会派小説の一面が垣間見られる『ビターな大人の恋愛小説』に仕上がっています。

本書のポイントは、6人家族それぞれの視点から物語が描かれていること。(次男、次女、長女、長男、長男の娘、父)。家族という共同体のなかでも、それぞれの立場によって、同じ事柄でも全然違って見えてくる。

読み終わった後は考えこんでしまうような深みのある作品ですよ。

 

王道の恋愛小説を読みたい方に

村山さんの描く恋愛はストレートなものが多く、共感できるものがたくさんあるはず。ぜひ、その透明感ある文章とともにお愉しみくださいね。


今回ご紹介した村山由佳さんの作品

天使シリーズ」集英社
おいしいコーヒーのいれ方シリーズ」集英社
青のフェルマータ』集英社
星々の舟』文藝春秋


恋愛小説が好きなら読むべきおすすめ小説があります。

 

ライター

飯田 萌
フリーランスのライター。一児のママ。出産前まではリクルートで結婚情報誌を担当。現在はWeb媒体にて書籍、音楽、育児など幅広く執筆中。影響を受けた作家は白石一文。趣味はスイーツを愉しむこととドラマ鑑賞。