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「奇妙な小説」5選 奇々怪々、得体の知れない恐怖アリ。


ホラー小説やミステリー小説ではなく、はたまたSF小説でもない。奇抜で、怪奇で、どこか薄気味悪い空気を醸し出している小説……。

そんな『奇妙な小説』としか言い表せないような作品を集めてみました。

ぜひ、心がざわつく非日常の世界を味わってみてはいかがでしょう?

 

 

非現実的、そして不吉。

夜明けの縁をさ迷う人々

『夜明けの縁をさ迷う人々』
小川洋子(著)、角川書店

世界の片隅でひっそりと生きる、どこか風変わりな人々。河川敷で逆立ちの練習をする曲芸師、教授宅の留守を預かる賄い婦、エレベーターで生まれたE.B.、放浪の涙売り、能弁で官能的な足裏をもつ老嬢…。彼らの哀しくも愛おしい人生の一コマを手のひらでそっと掬いとり、そこはかとない恐怖と冴え冴えとしたフェティシズムをたたえる、珠玉のナイン・ストーリーズ。(表紙裏)

 

『博士の愛した数式』がベストセラーとなった小川洋子さんの短編集。

本書を一言で言うならば「大人向けおとぎ話」。

エレベーターの中で生まれ、エレベーターの中で育つ男の子の話(『イービーのかなわぬ望み』。

一滴の涙を売る少女(その涙は、楽器に擦り込むとすばらしい音楽を奏でる)が、身体の関節を使って音を奏でる男に恋をする話(『涙売り』)。

設定だけが非現実的なのではありません。ストーリー・結末ともに非現実的で、思ってもみない展開を迎えます。

小川さんのストーリーテラーとしての才能をありありと感じる内容に仕上がっており、日常から離れたい時にはうってつけの一冊です。

なお、『博士の愛した数式』とは違い、小川作品初期の静謐な空気が漂っているのも特徴のひとつと言えるでしょう。

 

誰でもなりえる「箱男」とは。

箱男

『箱男』
安部公房(著)、新潮社

ダンボール箱を頭からすっぽりとかぶり、都市を彷徨する箱男は、覗き窓から何を見つめるのだろう。一切の帰属を捨て去り、存在証明を放棄することで彼が求め、そして得たものは? 贋箱男との錯綜した関係、看護婦との絶望的な愛。輝かしいイメージの連鎖と目まぐるしく転換する場面(シーン)。読者を幻惑する幾つものトリックを仕掛けながら記述されてゆく迷路。実験的書下ろし長編。(表紙裏)

 

ノーベル文学賞候補と言われた安部公房の代表作。

主人公は、元カメラマンで、ダンボール箱を被った”箱男”。箱をかぶることで、『見られる』側ではなく、『見る側』になるという発想は面白いものがあります。

なお、奇妙なのは設定だけではありません。途中に挿入される手記やエピソード、偽物の箱男の登場など、難解な構成が読者を混乱させます。読んでいるうちに、誰の視点に立っているのか、何が書かれているのかわからなくなるのです。

「一度でこの本を理解するのは困難」と言われるのも納得できる難しい作品です。しかし、読み終わった頃には、この奇妙な面白さに取り憑かれ、もう一度読みたくなるはずです。

 

「世にも奇妙な物語」へのオマージュ作品

 世にも奇妙な君物語

『世にも奇妙な君物語』
朝井リョウ(著)、講談社

テレビドラマ「世にも奇妙な物語」×現代をえぐる著者独自の視点×小説ならでの仕掛け

主役 VS. 脇役 リア充 モンスターペアレント ネットニュース シェアハウス

これは、「あなた」の物語。(帯)

 

最年少・直木賞作家で知られる朝井リョウさんの短編集。

本書は、テレビドラマ『世にも奇妙な物語』の大ファンである朝井さんが、ドラマ化を夢見て書き下ろした作品なのだそう。

単に奇妙な小説に止まらず、現代社会を皮肉り、風刺が効いているのも朝井作品ならでは。収録されている奇妙なブラックユーモアたちは、読んでいて後味が悪いものの、中毒性も高いです。

また、最後の作品はお見事! すべてひっくり返されました。実在する芸能人を想起させる内容には、つい笑ってしまうことでしょう。

朝井さんの才能に惚れ惚れする一冊です。直木賞受賞作『何者』のテイストが好きな方でしたら間違いなく愉しんでいただけるかと思います。

 

不気味で、不思議。

鳥葬の山

『鳥葬の山』
夢枕獏(著)、文藝春秋

都内で小さなデザイン事務所を経営する夏木は、あくせく働く日常の代償に、二週間の休みをとり、チベットで過ごすことにした。ラサの町でハゲワシに人間の死体を処理させる鳥葬を見ることができると聞き、夏木はその場に立ち会った。以後、毎夜夢に現われる奇怪な光景の謎。表題作以下、夢枕ワールド八篇。解説・中島らも(表紙裏)

 

『陰陽師』で知られる夢枕獏さんによる短編集。

本書を一言で言うと『毛色の違う奇妙さを楽しめる一冊』です。自分好みの『奇妙さ』を知りたい方にはまず初めに読んでいただきたい作品です。

なお、表題作で描かれている『鳥葬』というのは、実際にチベットで行われている葬儀のこと。ルポルタージュのような書き方で描かれていることもあり、私はあながちフィクションとも思えず、背筋がヒヤリとしました。

全体を通して、この作品、怖いです。グロテスクな表現も少々含まれますので、苦手な方はご注意くださいね。

 

実際に起こりそう。だから怖い。

どこにもない短篇集

『どこにもない短篇集』
原田宗典(著)、徳間書店

ある朝目覚めると、額に×印がついていた。この奇妙な錯覚を振り払えないまま、×の不快感は日毎に増大していく。私は不安を覚えた。しかし、私はしっかりしている。意識が混乱したり、妙なことを口走ったりはしない。ただ額に×がへばりついているだけだ(×(バツ))。現実か妄想か―。自分の内奥に秘められた迷路に陥り、揺らぎ、崩れそうな世界を、ざらりとした手触りで描きだす不可思議な傑作集!(表紙裏)

 

原田マハさんの実兄であり、笑える作風で知られる原田宗典さんのショートショート集。

平穏な日常生活に、突然訪れる不条理なできごと。

テレビドラマ『世にも奇妙な物語』のテイストが好きな方であれば、きっと愉しんでいただける一冊です。(実際に、収録されている『×』は、『世にも奇妙な物語』で映像化されています)

どの作品も、絶対にありえない! と言い切れないのが、さらに恐怖を誘います……実際に、こんなことが起こってしまったら、あなたはどうしますか?考えるだけで背筋が凍りますよね。

なお、解説は直木賞作家の山本文緒さん。合わせて楽しんでくださいね。

 

 

奇妙な世界観に浸ってみては?

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読みおわったあと、しばらく現実社会に戻ってこれないほどの奇妙な作品を揃えてみました。

ぜひ非日常を愉しんでみてください。

 

今回ご紹介した書籍
■『夜明けの縁をさ迷う人々』小川洋子(著)、角川書店
■『箱男』安部公房(著)、新潮社
■『世にも奇妙な君物語』朝井リョウ(著)、講談社
■『鳥葬の山』夢枕獏(著)、文藝春秋
■『どこにもない短篇集』原田宗典(著)、徳間書店

「まだまだ奇妙な物語が読み足りない!」そんなあなたにはこちら。

 

 

ライター

飯田 萌
フリーランスのライター。一児のママ。出産前まではリクルートで結婚情報誌を担当。現在はWeb媒体にて書籍、音楽、育児など幅広く執筆中。影響を受けた作家は白石一文。趣味はスイーツを愉しむこととドラマ鑑賞。