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「安部公房」ノーベル文学賞に最も近かった作家の魅力とは?


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読者のみなさんは、安部公房の作品を読んだことがあるでしょうか?

安部公房といえば、「ノーベル文学賞に最も近い作家」と国際的に評価されていた作家。

突然の死によって、受賞は叶いませんでしたが、「急死しなければ、ノーベル文学賞を受賞していたでしょう」とペール・ベストベリー委員長にこうまで言わしめた安部公房。

どんな作品を書いているのでしょうか。

 

安部作品の魅力とは

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安部作品の最大の特徴は、なんといっても「不条理な設定」と「前衛的(アヴァンギャルド)」であることでしょう。

あまりにも設定が現実離れしているので「シュルレアリスム(超現実的)」とも呼ばれていますね。現実の外にある「人間の深層意識」を巧みに描いているのがポイントです。

フランツ・カフカの作品『変身』では、朝起きると主人公が虫になっていましたが、安部公房の作品では、朝起きると名前を無くしていたり、事故で顔を無くしていたりします。

改めてすごいなと感じるのが、不条理=絶望とならず、どこかブラックユーモアの要素があるところ。
絶望的な状況にもかかわらず少し笑えるのです。

 

また、安部公房は1950年代~90年代と長期にわたって著作を出していますが、特に活躍した時代は、1950~70年代。

当時の文学界において、シュルレアリスムの手法を使った安部作品は実に先進的でした。
安部公房は、固定概念にとらわれることなく、いわゆる実験的小説を世に多く出し続けたのです。

 

安部作品の内容は確かに難解ですが、寓話的要素が強いのも特徴です。

非現実的な世界観のなかに、教訓のようなものを感じられる作風に仕上がっているのです。

なお、練りに練られた構成と、単語単位での文章へのこだわり、洗練された技巧は大変素晴らしいものです。私自身、文章を書く上での学びとして影響を受けています。

読書好きの方であれば、一度はぜひ手に取っていただきたい作家です。

そこで、おすすめの作品をピックアップしてみました。

 

蟻地獄の中で過ごす女と脱出を試みる男

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『砂の女』
新潮社

砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を穴の中にひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める部落の人々。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる展開のなかに、人間存在の象徴的な姿を追求した書き下ろし長編。20数ヶ国語に翻訳された名作。(表紙裏)

 

安部公房の作品で最も知られた一冊。安部公房を初めて読む方でしたら、この作品から読むのが良いと思います。

なぜなら、安部公房の超絶技巧を存分に味わうことができるからです。読んでいると、言葉では表現しがたい、砂の不快感を生々しく感じるのです。

物語の展開はほぼありません。描かれるのは、砂に埋もれていく家……まさに蟻地獄の中で過ごす女と、男のやり取り、心情の変化が中心です。なのに、20数ヶ国語に翻訳される名作となったのはなぜなのでしょうか?

自身で確かめてみてくださいね。

 

ある日突然、名前をなくしてしまったら?

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『壁』
新潮社

ある朝、突然自分の名前を喪失してしまった男。以来彼は慣習に塗り固められた現実での存在権を失った。自らの帰属すべき場所を持たぬ彼の眼には、現実が奇怪な不条理の塊とうつる。他人との接触に支障を来たし、マネキン人形やラクダに奇妙な愛情を抱く。そして…。独特の寓意とユーモアで、孤独な人間の実存的体験を描き、その底に価値逆転の方向を探った芥川賞受賞の野心作。(表紙裏)

 

安部公房の初期作品。芥川賞受賞作であり、代表作のひとつです。

安部作品の中でも特に前衛的な作品と言えるのではないでしょうか。

想像してみてください。もし、あなたが名前をなくしてしまったらどうしますか?

本書では、名前をなくした男が、狂乱し社会では生きられなくなった様子を描いています。

怖い作品ですが、寓話的要素もあり、ハマればすいすいと読んでしまう面白さを有した一冊です。

 

誰もが持つ”顔”をなくした男の物語

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『他人の顔』
新潮社

液体空気の爆発で受けた顔一面の蛭のようなケロイド瘢痕によって自分の顔を喪失してしまった男…失われた妻の愛をとりもどすために“他人の顔”をプラスチック製の仮面に仕立てて、妻を誘惑する男の自己回復のあがき…。特異な着想の中に執拗なまでに精緻な科学的記載をも交えて、“顔”というものに関わって生きている人間という存在の不安定さ、あいまいさを描く長編。(表紙裏)

 

ファンの間で「失踪」三部作と呼ばれているシリーズの2作目。(ちなみに、「砂の女」が1作目、「燃えつきた地図」が3作目とされています)

本書では、主人公は顔をなくしてしまいます。顔をなくすことで出てくる弊害……普段意識することのない、「顔とはなにか?」「顔の重要性」などを考えさせられる奇作です。

安部作品のすごいところは、非現実的な作風にもかかわらず「もし自分がこうなったらどうするだろう?」と読者の不安を掻き立てるところ。

心をざわざわさせながら読み進めていくと、最後に起こったのは……?

続きは本書で。

 

見た目は人間。だけど……

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『人間そっくり』
新潮社

<こんにちは火星人>というラジオ番組の脚本家のところに、火星人と自称する男がやってくる。はたしてたんなる気違いなのか、それとも火星人そっくりの人間か、あるいは人間そっくりの火星人なのか?火星の土地を斡旋したり、男をモデルにした小説を書けとすすめたり、変転する男の弁舌にふりまわされ、脚本家はしだいに自分が何かわからなくなってゆく……。異色のSF長編。(表紙裏)

 

今までご紹介した作品とは少し毛色が違うSF作品。

安部公房の天才ぶりを改めて感じさせられる一冊です。

突然目の前に現れた男と、脚本家のやり取りが続く作品なのですが、読んでいるうちに、得体の知れない恐怖心でいっぱいになっていることに気づきます。

見た目は人間でも、心の中はわかりません。

自分が理解できない人間に直面した時、あなたならどうしますか?果たして、男の正体とは……?

 

安部作品を読んでみよう

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今回は、安部作品をあまり読んだことのない方向けの選書をしてみました。

ハマれば癖になる作家です。ぜひ心を奪われてくださいね。

 

今回ご紹介した書籍
砂の女新潮社
新潮社
他人の顔新潮社
人間そっくり新潮社

 

安部公房が絶賛した、ノーベル文学賞作家の作品もいかがですか?
「孤独、栄光、悲劇がうずまく現代世界文学の最高傑作」と言われる一冊。読み応えがありますよ!

 

ライター

飯田 萌
フリーランスのライター。一児のママ。出産前まではリクルートで結婚情報誌を担当。現在はWeb媒体にて書籍、音楽、育児など幅広く執筆中。影響を受けた作家は白石一文。趣味はスイーツを愉しむこととドラマ鑑賞。