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現代世界文学の最高傑作。G.ガルシア=マルケス「百年の孤独」


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気がつけばもう師走ですね。年末年始はお休みの方が多いと思いますが、予定は立てられているでしょうか。せっかくの冬休み、普段は挑戦できない長編作品を読んでみるのはいかがでしょう。

そこで、今回取り上げたいのが、ガブリエル・ガルシア=マルケスさんの『百年の孤独』(新潮社)。マルケスさんは、ノーベル文学賞作家でもあり、代表作である本書は「孤独、栄光、悲劇がうずまく現代世界文学の最高傑作」と言われています。

では、一体どのような作品なのでしょうか。

 

『百年の孤独』あらすじ

舞台は、コロンビア(と思われる国)にある、カリブ海に面した蜃気楼の村・マコンド。村の開拓者であるブエンディア一家の孤独の世界を、百年にわたる栄枯盛衰の歴史とともに描いた物語。

 

マジック・リアリズム(魔術的リアリズム)という手法が魅力

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『百年の孤独』がブームを引き起こした一番の理由は、「マジック・リアリズム」という手法ではないでしょうか。

マジック・リアリズムとは、現実的な要素と、非現実的で空想的な要素が共存していること。

つまり、非現実的で奇想天外な事実を、まるで現実のようにリアリティーを持って書かれていることを指します。

「こんなに気分がいいのは初めてだわ」

彼女がそう言った途端に、フェルナンダは光をはらんだ弱々しい風がその手からシーツを奪って、いっぱいにそれを広げるのを見た。

(略)

小町娘のレメディオスの体がふわりと宙に浮き上がった。

(略)

目まぐるしくはばたくシーツに包まれながら、別れの手を振っている小町娘のレメディオスの姿が見えた。彼女はシーツに抱かれて舞い上がり、黄金虫やダリヤの花のただよう風を見捨て、午後四時も終わろうとする風のなかを抜けて、もっとも高く飛ぶことのできる記憶の鳥でさえ追っていけないはるかな高みへ、永遠に姿を消した。(p182)

これは有名な「気分が良すぎて、空へ飛んで行ったレメディオス」のエピソードです。このページの前まで、レメディオスは町一番の美貌の持ち主としてメインで描かれていました。なのに、このシーンで突然いなくなってしまい、二度と現れることはありませんでした。

一般的な文学作品では、もし登場人物が空に飛んでいって永遠に消えてしまったら、当本人や周囲の登場人物たちの感情(怖い、びっくりなど)が描かれるのではないでしょうか。

しかし、これは誰の感情も描かれていません。事実が淡々と書かれているだけです。この部分が、本書におけるファンタジー小説とは一線を画している魅力なのです。

 

ラテン・アメリカの創世記であり黙示録である『百年の孤独』

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マルケスさんは、大学を中退後、新聞社に入社しジャーナリストとして活動しながら小説を書いていました。その頃の経歴は色濃く作品に現れており、本書の文体はルポルタージュのようなもの。ディテールに至る、リアリティーを持った文体が特徴的です。

ジャーナリストという経歴を持つ作家なだけあって、文中には、植民地の時代や、インディオの民族移動、独立戦争といったようなラテンアメリカの特殊な文化や歴史のエッセンスがたくさん散りばめられています。非常に勉強になるので、世界史好きの方にもおすすめです。

「ラテン・アメリカの創世記であり黙示録である」と評されているのも頷けますね。

 

文豪たちが絶賛する『百年の孤独』

1.寺山修司

『百年の孤独』を自身が主宰する劇団で劇にし、映画化も実現させるほどのファン。(ただし、映画においてはマルケスさん側からクレームがつき『さらば箱舟』というタイトルに変えて上映されました。)

寺山修司さんの元夫人・九條今日子さん曰く、マルケスさんと寺山修司さんは会ってすぐに意気投合し、仲が良い友人同士だったのだとか。二人が描く世界観の中で、類似点などを探してみても面白いかもしれませんね。

2.安部公房

読んで仰天してしまった。これほどの作品を、なぜ知らずに済ませてしまったのだろう。もしかするとこれは一世紀に一人、二人というレベルの作家じゃないか。

(略)

まるで魔術師みたいにギュッと魂を捉えてしまうあの力は解説で尽くせるものではありません。とにかくマルケスを読む前と読んでからで自分が変わってしまう。一番肝心なことは、ああ読んでよかった、という思いじゃないか。もし知らずに過ごしたらひどい損をするところだった、見落とさないでよかった、という、これこそ世界を広げることだし、そういう力を持っている作家との出会いというのはやはり大変なことです。文学ならではの力というべきかもしれない。

(安部公房『死に急ぐ鯨たち』)

「安部公房」という日本を代表する作家が、ここまで絶賛する作品は他にあるでしょうか。いや、おそらくないでしょう。
読む前と読んだ後では自分が変わってしまう…これは言い得て妙ですね。同感です。

3.池澤夏樹

1950〜60年代のころ、この世紀の早い時期に書かれたジョイスの『ユリシーズ』とブルーストの『失われた時を求めて』によって、文学はやれることをやりつくしてしまった、あとは縮小再生産でいくしかないということが、欧米を中心によく言われていました。そこへ、『百年の孤独』が出た。ガルシア=マルケスは、カフカやフォークナーに随分学んだけれども、「百年の孤独』そのものは欧米のどんな小説の伝統とも無縁であって、その技法は西欧的技法とはまったく違う。その新しさと、小説というものの可能性を切り開いたパワーが、世界に衝撃を与えたのです。小説はまだこんなことができるのか、と読書界が興奮につつまれたのを、ぼくはよくおぼえています。

(池澤夏樹『現代世界の十大小説』)

池澤夏樹さんの『現代世界十大小説』には、『百年の孤独』の丁寧な解説が愛情たっぷりに書かれています。入門編として先に読んでおくと、スムーズに世界観に浸ることができるのでおすすめですよ。

 

長期休暇には『百年の孤独』をおともに

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私が『百年の孤独』に興味を持ったのは、タイトルがかっこいいと思ったからでした。
興味を持ってくださった方は、まとまった休みが取れる年始年末にぜひチャレンジしてみてくださいね!

百年の孤独

G.ガルシア=マルケス (著), 鼓 直 (翻訳)
新潮社

海外文学がお好きな方には、ランキングから選んでみるのもおすすめです。

ライター

I.Megumi
フリーランスのライター。一児のママ。出産前まではリクルートで結婚情報誌を担当。現在はWeb媒体にて書籍、音楽、育児など幅広く執筆中。影響を受けた作家は白石一文。趣味はスイーツを愉しむこととドラマ鑑賞。