三島由紀夫のオススメ小説【代表作以外から厳選】
三島由紀夫といえば代表作『仮面の告白』『金閣寺』『豊饒の海シリーズ』『潮騒』『宴のあと』などが有名ですが、もっと他にも読んでみたい!という方に、おすすめの作品をご紹介します。
特に、三島由紀夫は男性なのに、女性の心理をよくわかっているのだな、と驚くような恋愛小説を中心に集めました。
不倫を描いた長編小説
『純白の夜』
『純白の夜』
角川書店
『純白の夜』は1950年に雑誌に連載された小説で、三島由紀夫の3作目にあたる長編小説です。
昭和の既婚者同士の恋、つまり不倫を描いた話は、ドロドロで昼ドラのようでありながら、文章が洗練されているため、下品にならないのが三島由紀夫ならでは。
心理的なかけ引きを楽しみながら、どんな結末が待っているのかワクワクしてしまいます。
なぜこんなに女性の心理に詳しいのだろう、と興味を持つきっかけになった1冊です。
木暮実千代さん主演で映画化され、なんと三島由紀夫自身がエキストラとして出演しています。
女の幸せとは、幸福とは何なのか?
『愛の渇き』
『愛の渇き』
新潮社
『愛の渇き』は1950年に書き下ろしされた恋愛小説で、1967年に浅丘ルリ子さん主演で映画化されています。
舞台は大阪の農園。主人公の女性は夫を亡くした後に義父の屋敷で暮らすのですが、義父と関係を持ってしまいます。
一方主人公が本当に好きなのは義父ではなく、恋人のいる若い園丁……。
田舎を舞台にこじれていく人間関係と、園丁の恋人へ嫉妬する主人公の狂ったような行動が描かれます。男性ながらに、嫉妬に狂った女性を見事に書ききる三島由紀夫。読んでいると恐ろしささえ感じる心理描写があります。
女の幸せとは何なのか? 「幸福」という概念がどういうものであるのか考えさせられる小説です。
男色の男性の嫉妬を描くセンセーショナルな1作
『禁色』
『禁色』
新潮社
『禁色』は『仮面の告白』と並ぶ三島由紀夫の男色小説です。
先にご紹介した『愛の渇き』では女性の嫉妬が描かれていましたが、『禁色』では男性に想いを寄せる男性、「男性の嫉妬」が描かれています。
男色をテーマにした小説ですから、当時はセンセーショナルに受け止められました。
ですが高い美意識で書かれていますので、素晴らしい文学作品となり、現在も多くのファンに愛されている小説です。
「戦場のメリー・クリスマス」が大ヒットした時、テーマ曲「Forbidden Colours」が「禁色」を意味する、クリスチャンの男色についての歌だったため『禁色』もまたとても話題になりました。
あいびきしてよろめく不倫の関係
『美徳のよろめき』
『美徳のよろめき』
新潮社
『美徳のよろめき』は、婚外恋愛を描いた長編小説です。
タイトルに使われた「よろめき」は、男女のほの暗い関係を表す言葉として「よろめき夫人」「よろめきドラマ」などの言葉を作り出すほど社会現象となりました。
婚外恋愛、許されない愛というのは今も昔も変わらなく人を惹きつけるものがあるのだな、と思わされます。
今と違って携帯もパソコンもない頃、「あいびき」をして「よろめく」エロティックな関係を三島由紀夫は美しく耽美的に描いています。
描かれるのは不倫ですが、上流階級に育った主人公の女性が気高い雰囲気を持ち、だらしなさがあまり感じられないので嫌味なく読める話です。
嫁姑問題を描いたエレガントな1作
『夜会服』
『夜会服』
角川書店
『夜会服』は1967年に刊行された長編小説です。
恋愛小説や婚外恋愛もの、男色ものと来て、こちらの小説は「嫁姑問題」がテーマになっています。これまた三島由紀夫という人はどこまで女性心理がよくわかっているのだろう、と驚かされる作品。
彼の小説には西欧文化を感じさせるものが多いですが、こちらも社交パーティーや乗馬、華族などが登場し、嫁姑問題を扱いながらエレガントさのある作品です。
あまり難しい表現のない、軽く読める小説であり、テンターテイメント性が高いです。
純文学は苦手という人にも、気軽に手に取ってほしい娯楽小説ですね。
上流階級のお上品な会話と、嫁姑の腹の探り合いのグロテスクさのギャップを楽しめます。
男女の想いは今も昔も変わらない
難しそうに思える純文学ですが、三島由紀夫の小説には今も昔も変わらない男女の恋愛や嫁姑関係などをテーマにした娯楽小説がいろいろあります。
代表作以外にも映画化、ドラマ化されるほどのエンターテイメント性の高い小説が多数ありますので、非常に読みやすいと思います。
興味が持てるテーマからぜひ手に取ってみてください。
三島由紀夫の代表作を知りたい方はこちら!