今月のオススメの一冊『もう一度読みたい 教科書の泣ける名作』
「ごんぎつね」のラストを覚えていますか?
大人になった今だからこそ、主人公の気持ちや作者の思いが深く響く。(帯)
このキャッチコピーに心を惹かれ、手に取った一冊。そこには、想像を遥かに超える感動がありました。
『もう一度読みたい 教科書の泣ける名作』
学研教育出版編集
今回ご紹介するのは、学研教育出版編集『もう一度読みたい 教科書の泣ける名作』。
小学校の教科書に掲載されていた作品を集めたものになります。
収録されているのは以下の16作品。
・新美南吉『ごんぎつね』
・宮沢賢治『注文の多い料理店』
・椋鳩十『大造じいさんとガン』
・土家由岐雄『かわいそうなぞう』
・宮沢賢治『やまなし』
・斎藤隆介『モチモチの木』
・新美南吉 『手袋を買いに』
・花岡大学『百羽のツル』
・小川未明『野ばら』
・あまんきみこ『ちいちゃんのかげおくり』
・椋鳩十『アジサイ』
・フランク・R・ストックタン『きみならどうする』
・トルストイ 『とびこみ』
・アンブローズ・ビアス『空に浮かぶ騎士』
・菊池寛 『形』
・芥川龍之介『杜子春』
読者のみなさんは、これらの作品のうち、いくつご存知でしょうか? きっと、世代によって、知っている作品と知らない作品があるでしょう。
今回のコラムでは、おそらく多くの世代の方がご存知であろう4作品をピックアップしたいと思います。ぜひ、懐かしい気持ちに浸ってください。
大人になってから読むとまた違った思いに……
新美南吉『ごんぎつね』
~あらすじ~
『ごんぎつね』は、いたずら好きのきつね「ごん」が主人公。ごんは、網で川魚を捕まえていた男・兵十を見かけ、いたずら心から、兵十が獲った魚をこっそり逃します。
それから十日ほど後、兵十の母が亡くなったことを知ったごんは、いたずらをしたことを後悔して、ある行動に出るのですが……。
昭和46年~現在までの「小学4年生」の教科書に掲載されている作品になります。(光村図書:教科書クロニクル 小学校編より)
現役の小学4年生~50代半ばの方であれば、一度は目にしたことがある作品でしょう。
実は、私は、ごんぎつねの結末を忘れていました。まさか、こんな終わり方をする作品だったとは……。
また、誰の目線で物語を読むかで、解釈も変わってきます。子どもの頃は「ごん」の目線で物語を見ていましたが、大人になった今は「ごん」「兵十」両方の目線で物語を読みました。それぞれの切実な気持ちが分かるだけに、ボロボロ涙を流してしまいました。
昔遊びとともに、戦争の残酷さを後世に残す名作
あまんきみこ『ちいちゃんのかげおくり』
~あらすじ~
お父さんが出征する前の日のことです。その日は、きれいな空でした。
「かげおくり」という遊びをちいちゃんに教えてくれたのは、お父さんでした。そして、お父さん、お母さん、お兄ちゃん、ちいちゃんはみんなで手をつないで「かげおくり」をして遊びました。
家族の思い出となった空。いくさがはげしくなって、空はこわい所に変わってしまいました。そして、夏のはじめのある夜に……。
昭和61年~現在までの「小学3年生」の教科書に掲載されている作品になります。(光村図書:教科書クロニクル 小学校編より)
そのため、現役の小学3年生~40代の方であれば、一度は目にしたことがある計算になります。
唯一この作品だけは、今でも記憶に残っていました。当時、あまりに衝撃的な作品だったので……。
ちなみに、小学校6年間のあいだで、子どもたちがはじめて戦争に触れるのがこの作品なのだそう。小学3年生向けなので、戦争のひどさやむごさ、残酷さはダイレクトに書かれていません。ちいちゃんはまだ小さい女の子なので、難しいことは分かりません。分かっているのは、家族と離れてしまったこと……。つい、ちいちゃんに感情移入してしまい、涙がしばらく止まりませんでした。
じいさんとガンの知恵比べ
椋鳩十『大造じいさんとガン』
~あらすじ~
狩人の「大造じいさん」は、沼でガンを捕ることを生業としています。しかし、左右の翼に白い混じり毛がある「残雪」と呼ばれる利口なガンが群れを率いるようになってから、一匹もガンを捕らえることができなくなってしまいました。
そこで、大造じいさんは、ガンを捕まえるために試行錯誤を重ねるようになります。残雪との戦いに勝つために。そしてある年、事件は起こります……。
昭和55年~現在までの「小学5年生」の教科書に掲載されている作品になります。(光村図書:教科書クロニクル 小学校編より)
つまり、現役の小学4年生~40代半ばの方であれば、一度は目にしたことがあるはずです。
自然の広大さ、動物たちの力強さ、生きることについて……本作が訴えかけるメッセージは、あまりにも壮大なものです。
大人になってから読むと、それがより分かります。誇り高き残雪に、真正面から正々堂々と戦いをのぞむ大造じいさんが、どれだけプライドを賭けて仕事をしているのか……。社会人になった大人にこそ読んでもらいたいです。深い余韻が残りますよ。
「クラムボン」とはなんなのか?
宮沢賢治『やまなし』
~あらすじ(冒頭部分)~
二疋の蟹の子供らが青じろい水の底で話していました。
『クラムボンはわらったよ。』『クラムボンはかぷかぷわらったよ。』
このような出だしではじまる『やまなし』。クラムボンという単語を見て、この作品を久々に思い出した方もいるのではないでしょうか? 当時、クラムボン、というのは一体何を比喩しているのか? をクラスのみんなで話し合った学校も多いことでしょう。
こちらは、昭和46年~現在までの「小学6年生」の教科書に掲載されている作品になります。(光村図書:教科書クロニクル 小学校編より)
つまり、現役の小学4年生~50代半ばの方であれば、1度は目にしたことがある作品といえるでしょう。
本作品は、読解が難しい作品ですが、大人になった今読んでも、この作品はあまりにも難解です。(もしかすると、大人になってますます頭が固くなっているのかもしれませんが……。)
読むだけで、心が澄み切った気になり、子ども心をかすかに思い出す、そんな作品です。美しい表現方法にぜひ酔いしれてください。
今だからこそ読みたい「教科書の泣ける名作」
大人になった今読むと、懐かしさを感じるのと同時に、自分が手に入れたもの、失くしてしまったものを見つめることができるように思います。
ぜひ読んでみてくださいね。
今回ご紹介したオススメの一冊
■『もう一度読みたい 教科書の泣ける名作』学研教育出版編集
→こちらもぜひ。『もう一度読みたい教科書の泣ける名作 再び』学研教育出版編集
国語の教科書に載っている小説だって、日本文学!
「日本文学って難しそう……」と思っている方、多いのでは……?