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日本文学って面白い!高校生までに読みたいおすすめの日本文学の名作


近現代の日本文学が大好きなアオノです、こんにちは。

アオノは学生の頃、国語が大好きでした。
国語の教科書には小説がたくさん載っていたからです。

本を読んでいたので、知らないうちに語彙力や文章を読む力がついたのか、気が付くと国語が得意になっていました。

日本文学と聞くと、難しそう……と思いがちではないですか? 実はそんなことないんですよ!
国語の教科書に載っている小説だって、日本文学です。

そこで今回は、高校生までに読んでおきたい、有名なおすすめ日本文学をご紹介します。

むずかしく考えずに、まずは文学を楽しんでみましょう!

 

生き延びるための選択
芥川龍之介『羅生門』

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『羅生門・鼻』より「羅生門」
芥川龍之介(著)、新潮社

時は平安時代。
仕事を解雇された若い下人が羅生門で途方に暮れていたところ、老婆が死体の髪の毛を抜いているのを見つける。老婆は、死体の髪の毛を抜いてカツラを作って売るというのだ。
老婆は、自分は悪いことをしているとは思わない、そうしなければ餓死してしまう、と言う。
それを聞いた下人は、自分も生きのびる道を選ぼうと……

 

芥川龍之介の作品の中でも、有名なお話です。タイトルくらいは聞いたことがあるかもしれませんね。

『羅生門』は、極限の状態の人間が、生き延びるための道を選択するお話しです。

人は極限の状態にあるとき、何を基準に「善」と「悪」を決めるのでしょうか。それは人それぞれ違いますし、状況によっても変わっていくでしょう。

羅生門のおもしろいところは、若い下人の考える「善」と「悪」が、老婆に会い、だんだんと変化していくところです。
老婆の行為と下人の選択について、自分はどう思うのか、考えてみるのも良いですよ。

短編なので、すぐに読めるところもおすすめしたい理由のひとつです!

 

「罪とは何か」を考える
森鷗外『高瀬舟』

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『山上太夫・高瀬舟・阿部一族』より「高瀬舟」
森鷗外(著)、角川書店

罪人を遠島に送るため高瀬川を下る舟に、弟殺しの罪を負った喜助が乗せられてくる。
喜助は、弟が自害しきれず苦しんでいたところを楽にしてやったのだという。
護送役の庄兵衛には、喜助の行為が罪であるのかどうか、わからずにいた。

 

『羅生門』のように「罪」とは何かを深く考えさせられるお話しです。喜助は確かに弟を死なせてしまいました。しかし弟は、死ねなくて苦しいから、喜助に楽にしてくれ、と頼んだ。喜助はその願いを受け入れた、というもの。

喜助を通報したのはそれを見た近所の人でした。外から見れば殺人ですが、喜助が行ったことは罪と言い切れるでしょうか。

やりきれないお話しです。読んだあと、悶々とします。

しかし「罪とは何か」を考えるきっかけになる本です。

あなたならどう考えるでしょうか?『高瀬舟』を読んで、あなたなりの「罪とは何か」を考えてみてください。

 

「出世」か「愛」か。葛藤の末にある結末とは……?
森鷗外『舞姫』

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『舞姫・うたかたの記』より「舞姫」
森鷗外(著)、角川書店

時は明治、ドイツに留学した官吏 太田豊太郎は、踊り子のエリスと出会う。
しかし二人の仲を疑われ、豊太郎は免職になってしまう。ふたりはドイツで同棲を始め、エリスは豊太郎の子どもを身ごもった。
友人相沢のおかげで豊太郎は復職を果たし、日本の大臣から、日本に帰ろうと言われてしまい……

 

豊太郎は、ドイツ語とフランス語の翻訳の仕事がもらえるような超エリートの秀才でした。
日本に帰れば出世の道がある。免職されたが、名誉挽回もできる。しかしドイツには自分の子どもを身ごもったエリスがいる。

「出世」か「愛」か……悩み苦しむ豊太郎はどのような決断を下すのでしょうか。明治時代という時代背景を考えてみると、豊太郎の葛藤の理由がわかるかもしれません。

そして読んでみると、豊太郎と相沢に、ある感情がわいてくると思います。しかし2人の立場になって、この物語の出来事を考えてみる、というのが『舞姫』の物語をより深く読み解く鍵です。自分が豊太郎だったら? 相沢だったら? 自分ならどうするだろう、どうすればよかったのだろう、と考えながら読んでみてください。

実は『舞姫』は、森鷗外がドイツに留学した時の体験が元になっており、エリスにはモデルが存在します。

なんといっても『舞姫』の文章が美しく、声に出して読みたい作品です。
すこし長めですが、ぜひ声に出して読んでみてください。

 

蜃気楼のような奇妙なお話
江戸川乱歩『押絵と旅する男』

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『江戸川乱歩短篇集』より「押絵と旅する男」
江戸川乱歩(著)、千葉俊二(編)、岩波書店

魚津へ蜃気楼を見に行った帰り、「私」は押絵をもった紳士と出会う。その押絵は、老人と振袖を着た美少女が寄り添う押絵だった。
「私」には押絵のふたりが生きているように見えた。すると紳士はふたりの「身の上話」をしてくれた。それは、浅草十二階での出来事である……

 

蜃気楼を見に行った帰りに「私」に起きた不思議なお話。
とても幻想的で、とても奇妙。不思議なお話が好きな方におすすめしたい一作です。

読み終わったあと、夢でも見ているのかな?という気持ちにさせられて、何度も読み返した作品です。

押絵とは、綿で立体感を出した布を、板などに貼っていくもので、現代でも主に羽子板に使われている手法です。
また、浅草十二階とは、明治23年浅草に建てられた「凌雲閣」(りょううんかく)という建物のこと。高さが52m、エレベーターもあったそうです!
関東大震災で崩れるまで、浅草のシンボルでした。

この浅草十二階の近くで、紳士は美しい押絵と出会います。
その絵には、振袖の美少女がいました。それでは、今少女の隣にいる押絵の老人は誰なのか……

不思議な世界に迷い込んだような、奇妙で美しい物語です。
江戸川乱歩作品を初めて読む人にも、おすすめしたい一作です!

 

風刺が利いた宮沢賢治の傑作
『注文の多い料理店』

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『注文の多い料理店』
宮沢賢治(著)、角川春樹事務所

猟銃を構えた青年紳士が2人、山に狩猟にやってくる。獲物も取れず猟犬も死に、道に迷っていたところ「西洋料理店 山猫軒」を見つけた。テーブルにつくまで様々な注文があったが、好意的な解釈しかしない2人は注文された通りにしていく。しかし最後の注文で、何かがおかしいと気づき……

 

一度は読んだことがあるのではないでしょうか?
でも読んだのが子供の頃だったら、忘れてしまっているかもしれませんね。わたしもそのひとりでした。

大学生のときに、久しぶりに『注文の多い料理店』を読んで、こんな話だったのか!と改めて驚いたものです。

というのも、子どもの頃に読んだときは、ちょっと怖いお話だな!としか思わなかったのですが、大人になって読んでみると、とても社会風刺がきいており、こんなに面白くて、こんなに深い意味のある物語だったんだ!とびっくりしました。

人間のエゴや社会の変化が描かれており、ラストの一行に、パンチが効いた皮肉がこめられています。

いつ読んでも、宮沢賢治さんの作品は色あせぬおもしろさがあります。

ぜひもう一度読んでみてくださいね。

 

まずは読んでみよう!

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日本文学、といっても、決して堅苦しく考えることはありません。

まずは教科書に載っているようなお話から読んでみてください。

日本文学って、想像しているよりずっとおもしろいですよ!

 

今回ご紹介した作品
■『羅生門・鼻』芥川龍之介(著)、新潮社
⇒芥川龍之介の全集はこちら『芥川龍之介全集(ちくま文庫版)
■『山上太夫・高瀬舟・阿部一族』森鷗外(著)、角川書店
■『舞姫・うたかたの記』森鷗外(著)、角川書店
■『江戸川乱歩短篇集』江戸川乱歩(著)、千葉俊二(編)、岩波書店
⇒江戸川乱歩の全集はこちら『江戸川乱歩全集(光文社文庫版)
■『注文の多い料理店』角川春樹事務所

もっと日本文学を知りたいあなたには、こちらの特集がおすすめです!