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新鋭の作家に贈られる文学賞!三島由紀夫賞受賞作の傑作5選


みなさんのなかには、芥川賞や直木賞は聞いたことがあっても、三島由紀夫賞は知らないという人もいるのではないでしょうか。

三島由紀夫賞とは、文学の前途を担う新鋭の作家に贈られる文学賞のことです。

小説だけでなく、戯曲、詩歌、評論と幅広い文学作品が受賞の対象となるところが大きな特徴です。
芥川賞と比べて三島由紀夫賞は、斬新な切り口の作品が好まれる傾向にあるようです。

今回は受賞作のなかでも、特に傑作といえる5作品ご紹介します。

 

川端康成文学賞と三島由紀夫賞、同時受賞作

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『切れた鎖』
田中慎弥(著)、新潮社

「切れた鎖」は2012年に芥川賞を受賞した田中慎弥さんの初期の作品です。

芥川賞を受賞したときの独特な記者会見で、田中さんの作品に興味を持った人もいるのではないでしょうか。

表題作の「切れた鎖」では、没落した資産家の家庭に生まれた女性とその家族の崩壊が描かれています。
表題作以外にも第34回川端康成文学賞を受賞した「蛹」と「不肖の償い」の2つの作品が収録されています。

本作に収録されている3作品に共通している点は、一文が長く理解するのにちょっと時間がかかるところ。

しかし、読みだすと作者が描く独特な世界観の虜になってしまいます。

読めば読むほど色々と考えさせられ、いつまでも心に残る作品です。
本格的な純文学を読みたい人におすすめの一冊です。

 

太平洋戦争の開戦前夜を描く斬新な純文学

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『伯爵夫人』
蓮實重彦(著)、新潮社

東京大学の元総長の蓮實重彦さんが手がけた22年ぶりの小説です。

2016年6月に発売後、2ヵ月たらずで発行部数が3万5000部を超え、特に女性読者の人気を集めました。

本作の舞台は太平洋戦争の開戦前夜。緊迫した時代のなかで、主人公の二朗が謎めいた年上の女性に翻弄されていきます。

現実なのか、それとも二朗の妄想の世界を描いているのかわからなくなってくる不思議なお話です。

本作はどのジャンルに分類すべき小説なのか、一言では語れません。

作者本人が本作を「どうでもいいポルノ作品」と言っているように、随所に卑猥な表現が目立ちますが、不思議と不快な気分にはなりません。格調高い文体で表現されているので、美しさを感じてしまうほど。

これまでにない斬新な純文学を読みたい人におすすめの一冊です。

 

パラレルワールドの家族との交流を描く

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『クォンタム・ファミリーズ』
東浩紀(著)、河出書房新社

量子論をテーマにしたパラレルワールドを描いたSF小説。

本作では2020年代にIT技術が進歩することで、パラレルワールドの世界の家族と交流します。

あと少しで2020年を迎えますが、現実の社会では、パラレルワールドの人物との交流はとても実現しそうにありません。
この斬新な設定は、小説ならではの世界観です。

量子論と聞いて読む前は「むずかしい話なのでは?」「現実世界とパラレルワールドで登場人物がいっぱい出てきて混乱しそう」と思っていました。
しかし、緻密に練られたストーリー構成で、読み進めていくうちに物語の世界に一気に引き込まれていきました。

SF好きな読者だけではく、普段SFを読まない人にもおすすめしたい一冊です。

 

この世界に野球がなかったら……

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『優雅で感傷的な日本野球』
高橋源一郎(著)、 河出書房新社

本作は第一回三島由紀夫賞受賞作です。

野球がテーマの小説ですが、いわゆるスポ根小説ではありません。

本作は野球が滅びてしまった世界で、野球に関する言葉を調べるところから物語は始まります。

自分はプレーしなくても、テレビで子供のころから野球に慣れ親しんできたせいか、本作を読むまでは野球のない世界がまったく想像できませんでした。
「野球のない世界で野球を描く」という斬新な世界観に惹かれて、本作を手にしたのです。

感想は、ぶっとんだ世界観が「面白い」の一言につきます。

ハチャメチャな設定と世界観、そして斬新な切り口の本作は、三島由紀夫賞にふさわしい作品といってよいでしょう。
娯楽小説が読みたいという人におすすめの一冊です。

野球の知識がなくても楽しめますよ。

 

女の子には特有のルールがある

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『しろいろの街の、その骨の体温の』
村田沙耶香(著)、朝日新聞出版

新興住宅街に住む少女の、小学生から中学生までの成長ストーリー。

思春期特有のスクールカーストやいじめ、性への興味、初恋がリアルに描かれています。

特に5段階に分かれたスクールカーストがリアルすぎて、中学生のころを思い出しながら読み進めていきました。

「一緒にトイレ」「仲間外れ」といった女子特有のルールに本音ではうんざりしているのに、従わざるを得ない状況の主人公。
私も中学生のころは女子特有のルールに悩まされていたので主人公の気持ちが痛いほど理解できました。

作者の村田沙耶香さんがどんな思いで本作を手がけたのかわかりません。
しかし、「爽やかで美しいだけが青春じゃない」という強いメッセージが伝わる一冊です。

純粋な青春ストーリーだけでは物足りない人は試してみてはいかがでしょうか。

 

一味変わった小説が読みたい人におすすめ!

三島由紀夫賞は、斬新な切り口の作品が好まれる傾向にあるようだと冒頭に書きましたが、今回紹介した作品も例外ではありません。

「いつも読む本とは一味違う小説が読みたい」と思っている人はぜひ試してみてください。
あなたの読書ライフがより充実したものになるかもしれませんよ。

 

今回ご紹介した書籍
切れた鎖』田中慎弥(著)、新潮社
伯爵夫人』蓮實重彦(著)、新潮社
クォンタム・ファミリーズ』東浩紀(著)、河出書房新社/新潮社
優雅で感傷的な日本野球』高橋源一郎(著)、 河出書房新社
しろいろの街の、その骨の体温の』村田沙耶香(著)、朝日新聞出版

 

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