【終戦記念日】戦争を今一度、考え直すことのできる本
更新日:2017/8/14
1945年8月15日、終戦記念日。第二次世界大戦が終結して、2017年で72年が経ちます。
8月6日の広島への原爆投下、9日の長崎への原爆投下と同様、8月15日は日本にとって忘れてはいけない1日です。
そこで、日本に生きている者として、読んでおきたい本を選書しました。
テーマは「戦争を知り、考え直せる本」です。
戦争にまつわる本は膨大にありますが、今回はエンターテイメントや小説ではなく、当時の記録をベースにしたノンフィクションを選びました。
この機会にぜひ、改めて戦争を考え直してみませんか?
5つの戦争を紐解く
『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』
加藤陽子(著)、新潮社
膨大な犠牲と反省を残しながら、明治以来、四つの対外戦争を戦った日本。指導者、軍人、官僚、そして一般市民はそれぞれに国家の未来を思い、なお参戦やむなしの判断を下した。その論理を支えたものは何だったのか。鋭い質疑応答と縦横無尽に繰り出す史料が行き交う中高生への5日間の集中講義を通して、過去の戦争を現実の緊張感のなかで生き、考える日本近現代史。小林秀雄賞受賞。(表紙裏)
歴史学者の加藤陽子さんが、日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、日中戦争、太平洋戦争という5つの戦争を紐解く1冊。
私立栄光学園の「歴史研究部」向けへの集中講義を書籍化したものであり、日本近代史を改めて学び直したいという人には非常におすすめの内容です。ぜひ読んでいただきたい作品です。
作中では、参考文献に挙げられた膨大な資料をもとに、生徒たちに質問を投げかけ、回答させ、その問答を通して「日本人が戦争を選んだ理由」を解明していきます。
当時の世界情勢、各々の思想、日本の意思決定に至るまでのプロセス、上層部の思惑。
不穏な空気を感じる現代だからこそ、過去の過ちをきちんと知るべきだと思います。読むと世の中が180度変わって見えることをお約束します。
難解。しかし衝撃を受ける1冊
『日米開戦の真実』
佐藤優(著)、小学館
真珠湾攻撃直後のNHKラジオでの連続講演をもとに、一九四二年一月に出版された大川周明著の『米英東亜侵略史』は、アメリカの対日政策の分析において、客観的および実証的なものだった。なぜ日本は対米英戦争に踏み切ったのか。アメリカの「太平洋制覇」戦略、執拗な満蒙への介入、イギリス植民地政策の実態などを緻密に分析し、「戦わねばならぬ理由」を大川周明は導き出していた。現在の地盤沈下する日本国家そして日本人が抱える外交政策の困難な問題を克服するヒントは過去の歴史にあるとの認識から、著者が『米英東亜侵略史』を丁寧に読み解く。(表紙裏)
『国家の罠』で一躍有名となった佐藤優さんが、大川周明著の『米英東亜侵略史』を読み解きながら、「なぜ日本は対米英戦争に踏み切ったのか」の答えを出そうとした1冊。
大川周明といえば、パジャマ姿で東京裁判に現れ、東条英機の頭をはたいた思想家というイメージが先行しがち。ですが、佐藤さんいわく、大川周明は「当時最高水準の知性」。
そのため、本書には1941年にNHKラジオで流れた公開講義も掲載されていますが、非常に難解です。
ですが、だからこそ読み応えがある。事実は多面的に見なければ意味がありません。大川周明が論理的に分析した開戦理由は、示唆に富んだ内容で、私にとっては衝撃の1冊でした。
日本の敗戦が決定した日、何が起きたのか
『日本のいちばん長い日』
半藤一利(著)、文藝春秋
昭和二十年八月六日、広島に原爆投下、そして、ソ連軍の満州侵略と、最早日本の命運は尽きた…。しかるに日本政府は、徹底抗戦を叫ぶ陸軍に引きずられ、先に出されたポツダム宣言に対し判断を決められない。八月十五日をめぐる二十四時間を、綿密な取材と証言を基に再現する、史上最も長い一日を活写したノンフィクション。(表紙裏)
半藤一利さんによる「1945年8月14日正午~15日正午の24時間」を描いたノンフィクション。終戦に至るまでには、各々の思いが潜んでいました。
本書で描かれるのは、14日深夜に発生した、降伏に反対する陸軍将校たちによる宮城(きゅうじょう)事件。
皇居を占拠し、昭和天皇の声が録音されたレコードを奪おうとするこのクーデターが成功していたら、昭和天皇による玉音放送は実現できず、戦争も継続となっていたでしょう。
歴史には必ず裏側があります。その事実を知ることで、改めて戦争を考え直すことができるのです。
2015年には役所広司さん主演で映画化もされていますです、合わせてどうぞ。
みんなの疑問に池上彰さんが答える!
『なぜ、世界から戦争がなくならないのか?』
池上彰(著)、SBクリエイティブ
人類は平和を望んでいるのに、なぜ?
今、世界が大きく変わろうとしています。2015年末にはパリで、2016年3月にはベルギーで、それぞれ大規模なテロが起き、大勢の人たちの命が失われました。そんななか、日本では3月末、安全保障関連法が施行されました。この法律をめぐっては、「日本も戦争に巻き込まれるのでは?」と不安に思っている方もいらっしゃるかもしれません。そこで考えてみたいのがこのテーマ。「なぜ世界から戦争がなくならないのか?」。平和を望んでいるはずの人間が、なぜ何度も戦争を繰り返すのか。本書は、その謎に迫る試みです。(表紙裏)
「民放テレビでも、ここまでできるのか!」と視聴者の驚きの声が続出したテレビ番組「池上彰緊急スペシャル!」で、放送されたものを書籍化したもの。
戦争は世界のビッグビジネスであることや、戦争開始を煽るメディアの存在、最新の中東の情勢など、日本史の授業では絶対に出てこないような内容が満載です。
なかには信じたくないようなこともたくさん……。
本書を読むと、いろんなことに不信感を抱かざるを得ないですが、それもまた真実なのかもしれません。戦争の裏側を分かりやすく知ることができる1冊ですよ。
戦争を考え直せる本を読もう
終戦記念日だからこそ、戦争を改めて考え直したいものです。どの作品も読んでいただきたいと思うものばかりを揃えましたので、ぜひ読んでみてくださいね。
【おすすめ記事】戦後70年余、今伝えたい。太平洋戦争を知る作品10選
映画を観て、考えるきっかけにするのもいかがでしょうか? 年表で「日本の戦争」をまとめた特集はこちら。
今回ご紹介した書籍
『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』
加藤陽子(著)、新潮社
『日米開戦の真実』
佐藤優(著)、小学館
『日本のいちばん長い日』
半藤一利(著)、文藝春秋
『なぜ、世界から戦争がなくならないのか?』
池上彰(著)、SBクリエイティブ