青春×音楽をテーマにした小説|音楽を聴きながら読もう
更新日:2017/7/26
読者のみなさんの中には、音楽を聴きながら読書を愉しむという方も多いのではないでしょうか。
今回のテーマは「青春×音楽をテーマにした小説」。
どの作品も、心に響くこと間違いなしです。ぜひ作中に出てくる音楽と共に、読書を愉しんでくださいね。
青春×パンクロック!
『ミュージック・ブレス・ユー!!』
津村記久子(著)、角川書店
オケタニアザミは「音楽について考えることは、将来について考えることよりずっと大事」な高校3年生。髪は赤く染め、目にはメガネ、歯にはカラフルな矯正器。数学が苦手で追試や補講の連続、進路は何一つ決まらないぐだぐだの日常を支えるのは、パンクロックだった!超低空飛行でとにかくイケてない、でも振り返ってみればいとおしい日々。野間文芸新人賞受賞、青春小説の新たな金字塔として絶賛された名作がついに文庫化。(表紙裏)
野間文芸新人賞受賞作。
「音楽を聴くと、それが鳴っている何分かだけは、息を吹き返すことができる」。
常に音楽のことを考えている女子高生アザミ。音楽でなくても(映画や読書・スポーツなど何でも)、1つのことに夢中になっていた青春を懐かしく思い出してしまう1冊。
なお、リンキン・パーク、ブリンク182、ニュー・ファウンド・グローリーなど、海外のロックバンドの名前が作中にちらほら出てきます。ロック好きな方にとにかくおすすめの作品です。
立ち止まれない青春
『疾風ガール』
誉田哲也(著)、光文社
柏木夏美19歳。ロックバンド「ペルソナ・パラノイア」のギタリスト。男の目を釘付けにするルックスと天才的なギターの腕前の持ち主。いよいよメジャーデビューもという矢先、敬愛するボーカルの城戸薫が自殺してしまう。体には不審な傷。しかも、彼の名前は偽名だった。夏美は、薫の真実の貌を探す旅へと走り出す―。ロック&ガーリーな青春小説。(表紙裏)
『ストロベリーナイト』や『武士道シックスティーン』などで知られる誉田哲也さんの「柏木夏美シリーズ」第1弾。
実は、作者である誉田哲也さんは30歳まで音楽活動を行っていたのだとか。
しかし、ミュージシャンの椎名林檎さん(当時20歳)の才能に「こんな子が10歳下で出てくるようならオレに声がかかるわけがない」とショックを受け、プロの道を断念します。
文中に出てくる「才能ある人間は周りの人間を潰す。その屍の上に才能ある人間の舞台がある。だから振り返って立ち止まることは許されない」という言葉は、誉田さんの経験に基づいた言葉なのかもしれません。
なお、本書に出てくる歌詞は、当時のバンドで誉田さんが書いたものなのだとか! 誉田さんの新たな一面を愉しんでください。
大人だって青春してる!ママロックバンド!
『1995年のスモーク・オン・ザ・ウォーター』
五十嵐貴久(著)、双葉社
平穏な生活を送っていた主婦が、ひょんなことからバンドを組んだ。軽い遊びのつもりだったが、メンバーに元プロが加わり猛練習が始まる。演奏するのはもちろん、名曲『スモーク・オン・ザ・ウォーター』。―失敗のない人生なんてつまらない。失敗したらやり直せばいい。それができるから私たちは毎日を生きていける。そんなメッセージが熱く心に響く青春(ちょっと歳とっちゃったけど)家族小説の傑作。1995年、あなたはどこで、何をしていましたか?(表紙裏)
大人のための青春音楽小説。
主人公の美恵子は44歳の専業主婦。とあるきっかけでママロックバンドを組むことになり、なんとライブ出演まで決まっていきます。
年齢を重ねるほど新しいことにチャレンジするのが億劫になりがちですが、本書を読むと、やる気がみなぎってきますよ。
タイトルの「スモーク・オン・ザ・ウォーター」とは、Deep Purpleの「Smoke On The Water」のこと。
章のタイトルも、Black Night、Strange Kind Of Woman、Speed King、Child In Time、Highway Star、Burnと、Deep Purpleの名曲で統一されており、仕掛けが面白い1冊です。
若きチェリストの青春を描く
『船に乗れ!』
藤谷治(著)、 ポプラ社ほか
若きチェリスト・津島サトルは、芸高受験に失敗し、不本意ながら新生学園大学附属高校音楽科に進む。そこで、フルート専攻の伊藤慧やヴァイオリン専攻の南枝里子と出会った津島は、夏休みのオーケストラ合宿、初舞台、ピアノの北島先生と南とのトリオ結成、文化祭、オーケストラ発表会と、慌しい一年を過ごし…。本屋大賞にノミネートされるなど、単行本刊行時に称賛を浴びた青春音楽小説三部作、待望の文庫化。(表紙裏)
2010年本屋大賞7位の作品。
「お腹の奥のほうからじわりとこみあげてくる『苦しさ』はあった。けれど、そこには、それを圧倒する『青春』と呼ばれる時代のきらめきと、甘やかな刹那があった」(西加奈子さん)、
「いまもっとも良質な青春小説といっていい」(北上次郎さん)
など、人気作家たちから高く評価されていることでも知られている作品です。
ちなみに、主人公のサトル=作者の藤谷さんの高校生時代なのだとか。音楽一家に生まれ、幼い頃からチェロを学び、青春時代を音楽に費やし、留学へ行き、そして……。
「自分は人とは違う」と考えてしまう思春期ならではのヒリヒリ感、挫折、再生が描かれていて非常に面白い作品ですが、クラシックのうんちくも楽しめる1冊に仕上がっています。
合唱でつむがれる少女たちの青春
『よろこびの歌』
宮下奈都(著)、実業之日本社
歌でつながる少女たちの心。青春音楽小説の傑作!
著名なヴァイオリニストの娘で、声楽を志す御木元玲は、音大附属高校の受験に失敗、新設女子高の普通科に進む。挫折感から同級生との交わりを拒み、母親へのコンプレックスからも抜け出せない玲。しかし、校内合唱コンクールを機に、頑なだった玲の心に変化が生まれる―。見えない未来に惑う少女たちが、歌をきっかけに心を通わせ、成長する姿を美しく紡ぎ出した傑作。(表紙裏)
合唱をテーマにした短編集。高校受験に失敗し、傷を負った女子高生が、音楽を通じて自己再生していく物語を含め、7編が収録されています。
各章のタイトルが、ザ・ハイロウズの名曲で統一されているなど、面白い仕掛けがなされています。(do よろこびの歌、re カレーうどん、mi NO.1、fa サンダーロード、sol バームクーヘン、la 夏なんだな、si 千年メダル)
合唱を通じて、クラス全体がまとまっていく姿は、感動的で涙が出てしまうほど。読後感がよい作品を読みたい方には強くお薦めします。
音楽を聴きながら小説を読んでみて
今回ご紹介したのは、作中に出てくる音楽を聴きながら読むとさらに楽しめる作品ばかり。
ぜひ音楽とともに味わってくださいね。
【おすすめ記事】特別な「夏休み」を描いた青春小説
今回ご紹介した書籍
『ミュージック・ブレス・ユー!!』
津村記久子(著)、角川書店
『疾風ガール』
誉田哲也(著)、光文社
『1995年のスモーク・オン・ザ・ウォーター』
五十嵐貴久(著)、双葉社
『船に乗れ!』
藤谷治(著)、 ポプラ社
『よろこびの歌』
宮下奈都(著)、実業之日本社