「花が印象に残る本」きっとその美しさに癒やされる
更新日:2017/5/13
みなさんは、どんな花がお好きですか?
ここでご紹介するのは「花が印象に残る本」。
花をモチーフにした小説や、花の写真が添えられたエッセイなど、美しい世界が描かれた作品をチョイスしました。
読んでいると心が洗われるような気持ちになります。花の美しさに、ぜひ癒やされてくださいね。
31の文字と写真で描く花の世界
『花束のように抱かれてみたく』
『花束のように抱かれてみたく』
俵万智、稲越功一(著)、角川書店
花は、自分が一番美しく見える季節を知っているかのようだ。桜の花も、真夏の太陽の下では、寝ぼけた色にしか、見えないだろう。春のけだるく霞んだ空気のなかで、桜はその狂おしい美しさを発揮する。憂いを含んだ紫陽花は、雨の季節に。元気いっぱいの菜の花は、早春に。もっと元気な向日葵は、くっきりとした夏の光のなかに―。四季の花を、歌と写真で詠いあげる、鮮やかな写真歌文集。366日の花言葉つき。(文庫版裏表紙より)
歌人の俵万智さんと、写真家の稲越功一さんによる3年間の連載をまとめたもの。
春、夏、秋、冬ごとに花が掲載されているので、季節ごとに思いを馳せるのも粋ですよ。
31文字で描かれる世界×花の写真のコラボレーションは、読者の想像力を掻き立て、非現実の世界へといざなってくれます。
短歌と一緒に写真が載っているため、花の知識習得にも役立ちますし、巻尾の誕生花ページも見ていて飽きません。
文庫サイズなので、本書を片手に公園を散策するのも楽しいですよ。
薔薇を美しくも狂気的に描いた短編集
『薔薇への供物』
『薔薇への供物』
中井英夫(著)、河出書房新社
ここに扱われている薔薇は、おおむね狂気と死との彩りであって、その香りは苦く、色彩はむしろ幻覚に近い-著者
薔薇への偏愛がいざなう、神秘にみちた薔薇園の迷宮-秘密の花園では少年も私もこの世のものではなくなり、牧神や聖女は現実となる…妖しく甘美な色彩と芳香にひそむ死と幻想と耽美の世界に仕掛けられた薔薇の罠。名作『虚無への供物』の作者の、薔薇ミステリー集大成(文庫版裏表紙より)
日本三大奇書として知られる『虚無への供物』の作者、中井英夫さんの作品。
本書は「薔薇」を集めた短編集。中井さんにとって「薔薇」は創作活動のテーマであり、薔薇愛好家として広く知られた存在でもあります。
(最後に掲載されている、中井さんによる解説「薔薇の自叙伝」を読めば、その偏愛ぶりを感じていただけると思います。)
怪しげで儚く、美意識の塊といっても良い1冊なので、美しい作品を読みたい時にはこの短編集が大変おすすめです。
切ない想いを花に託す
『われも恋う』
『われも恋う』
堀田あけみ(著)、角川書店
六つの花に秘められた、六つのメッセージと恋模様。せつない想いを花に託し、綴った恋愛連作集。
アナタガ、スキデス。あなたが好きだから・愛・という言葉のかわりに花を贈った。六つの花に秘められた、六つのメッセージと恋模様。せつない想いを花に託し、綴った恋愛連作集。(文庫版裏表紙より)
片思いしている相手に影響を受け、花屋でアルバイトをすることになった大学3年生の徹のラブストーリー。
徹は「男が女に花なんか贈れるもんけぇ」という、まさに女心が分かっていないタイプの男子ですが、果たしてどうなるのでしょうか……?
花屋はいろんな人の想いが集う場所。
ほっこり温かい気持ちになりたいときや、じんわり感動したいときにはぜひおすすめしたい1冊です。
美しい文章といけ花の共演
『花日記』
『花日記』
白洲正子(著)、世界文化社
いのちが響き合うとき、「花」は生まれる。
人は、自然と物の「声なき声」を訊かねばならない。無言の花や器と対話し、花を器に入れて生かす。この”静”と”動”の、いのちの交流が「いけ花」。
人の「付き合い」に通じる、面白さと奥深さ。
年をとるにつれて、あるかなきかのいわば視覚的な匂い、とでもいいたい「気配」に敏感になった。(帯より)
随筆家である白洲正子さんによる作品。
花器に生けられたいけ花の写真には、誰もがうっとりするはず。ページをめくるごとに華やかな気持ちになる贅沢な1冊です。
特徴的なのが、「器は漆かきの職人が腰に下げ、樹液を採取するのに使ったもの。庶民の生活用具は皆美しく、自然な形で、花材も選ばない」といったように、ところどころ花器の説明も掲載されていること。
白州さんの美しい文章といけ花のコラボレーションは、言葉では言い尽くせないほど素晴らしく、日本の心を感じる1冊です。
花や野草にも詳しくなれるかも?
『植物図鑑』
『植物図鑑』
有川浩(著)、幻冬舎
知っているのは、彼の名前だけ。でも、それで充分だった――。
花を咲かせるように、この恋を育てよう。
大切な人と歩きたくなる道草恋愛小説
ベストセラー作家の有川浩さんの作品。特に人気が高く、恋愛小説の王道とよばれています。
文庫本の巻頭には花の写真が掲載されており、シロツメクサやスミレ、ハナミズキ、ナズナ、タンポポといった有名な花から、ノビル、セイヨウカラシナ、ニワゼキショウ、コメツブツメクサのような珍しいものまで幅広く載っています。
小説の冒頭に出てくるのは、ヘクソカズラ。漢字で書くと”屁糞葛”。可愛い見た目に反して、非常に臭いにおいを発する花です。ストーリーの中ではどのように登場するのでしょうか?
なお、“道草料理レシピ”も付いているので、お得感も充分です。
この季節だからこそ花が印象に残る本を
花が印象に残る本を読むと、さらに春を楽しむことができますよ。ぜひ手に取ってみてくださいね。
【おすすめ記事】「桜」がテーマの春を感じるおすすめ小説
今回ご紹介した書籍
『薔薇への供物』
中井英夫(著)、河出書房新社
『花束のように抱かれてみたく』
俵万智、稲越功一(著)、角川書店
『われも恋う』
堀田あけみ(著)、角川書店
『花日記』
白洲正子(著)、世界文化社
『植物図鑑』
有川浩(著)、幻冬舎