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「桜」がテーマの春を感じるおすすめ小説


「桜」がテーマの春を感じるおすすめ小説

近頃はすっかりあたたかくなりましたね。冬が終わりを告げ、今年も春がやってきました。

今回ご紹介するのは「桜をテーマにした本」。春ならではの桜の情景を愉しめる作品を選びました。

ただ、桜は美しいばかりではありません。”薔薇に棘あり”という言葉が表現するように、その美しさの裏側には何かが潜んでいるかも……?

ぜひ、桜が持つさまざまな魅力を堪能してみませんか?

おうちで”プチお花見”を愉しんでみるのも良し、桜の木の下で読むのも粋なものですよ。

 

新海誠
『小説 秒速5センチメートル』

『小説 秒速5センチメートル』
新海誠(著)、角川文庫

「桜の花びらの落ちるスピードだよ、秒速5センチメートル」いつも大切なことを教えてくれた明里、そんな彼女を守ろうとした貴樹。小学校で出会った二人は中学で離ればなれになり、それぞれの恋心と魂は彷徨を続けていく――。(文庫裏表紙より)

『君の名は。』で一躍名を馳せた新海誠監督のアニメーション映画『秒速5センチメートル』の小説版。こちらは映画が上映された後に、新海監督によって書かれた小説となっています。

 

新海監督が、自身のホームページで以下のように語ったとおり、なにげない日常の中にある美しさに改めて気づかされる作品です。

我々の日常には波瀾に満ちたドラマも劇的な変節も突然の天啓もほとんどありませんが、それでも結局のところ、世界は生き続けるに足る滋味や美しさをそこここに湛えています。現実のそういう側面をフィルムの中に切り取り、観終わった後に見慣れた風景がいつもより輝いて見えてくるような、そんな日常によりそった作品を目指しています。

映画を見ていなくても、桜舞う情景がありありと浮かんでくる筆致はさすがです。

 

 

坂口安吾
『桜の森の満開の下』

『桜の森の満開の下・白痴 他十二篇』より
「桜の森の満開の下」
坂口安吾(著) 、岩波文庫

桜の森の満開の下は怖ろしい。妖しいばかりに美しい残酷な女は掻き消えて花びらとなり、冷たい虚空がはりつめているばかり…。女性とは何者か。肉体と魂。男と女。安吾にとってそれを問い続けることは自分を凝視することに他ならなかった。淫蕩、可憐、遊び、退屈…。すべてはただ「悲しみ」へと収斂していく。(表紙より)

 

鬼才・坂口安吾の代表作とも称される作品。多くの作家たちに影響を与えた作品として知られていますし、あまりに有名であるため、知っている人も多いのではないでしょうか。

この作品を、一言で言うと”大人向け寓話”。
グロテスクで残酷な表現も一部ありますが、神秘的なラストシーンは、美しさのあまり、ついため息をついてしまうことでしょう。

ちなみに、三浦しをんさんは「ロマンティックな作品」と評されています。

 

 

森見登美彦「新釈 桜の森の満開の下」
『新釈 走れメロス 他四篇』所収

『新釈 走れメロス 他四篇』より
「新釈 桜の森の満開の下」
森見登美彦(著) 、祥伝社文庫

近代文学の傑作五篇が、森見登美彦によって現代京都に華麗なる転生をとげる!こじらせすぎた青年たちの、阿呆らしくも気高い生き様をとくと見よ!

絶賛の嵐吹きあれる青春文学の愛すべき金字塔(裏表紙より)

 

人気作家・森見登美彦が、坂口安吾の「桜の森の満開の下」をパロディ化したもの。原作とは全くの別物となっています。

山賊は、現代風にアレンジされ「4畳半で小説を書く男」になっていますし、ラストシーンも大きく異なります。

ですが、森見さんがあとがきで「現代に置き換えて書くにあたっては、原典を形づくる主な要素が明らかにわかるように書こうとした」と言っているように、ところどころに原作の要素が織り交ぜられているので、ぜひ合わせて読むことをおおすすめします。何倍も愉しめることをお約束しますよ。

 

 

梶井基次郎「桜の樹の下には」
『檸檬』所収

『檸檬』より
「桜の樹の下には」
梶井基次郎(著) 、280円文庫

桜の樹の下には屍体が埋まっている!(冒頭部分より)

 

このフレーズに聞き覚えのある方は多いのではないでしょうか? 映画や漫画などでよく使用されるフレーズですが、実は元ネタはこの作品です。

坂口安吾「桜の森の満開の下」もこの作品に影響を受けて書かれたのだとか。

私はこの作品を読んで、桜に対する概念をがらりと覆されました。衝撃的すぎて……。

しかも、掌編(なんと4ページ!)なので、10分以内に読み終えることができますよ。

読後感が良いものとは決して言えませんが、普段とは違う桜の小説を読みたい方にはぜひおすすめします。

 

 

渡辺淳一
『桜の樹の下で』

『桜の樹の下で』
渡辺淳一(著) 、新潮文庫

桜の精に魅せられた愛

満開の桜の下で母と娘が同じ人に惹かれて恋した――

花の魔性に憑かれた人びとが織りなす悦楽と背徳の美を華麗精緻に描く渡辺文学の最新作(帯より)

 

『失楽園』や『愛の流刑地』などでおなじみ渡辺淳一さんの作品。

キーワードとなってくるのが、梶井基次郎の「桜の樹の下には屍体が埋まっている!」という言葉。

桜の下で狂っていく女性たちの姿は、悲劇的で、官能的で、切ないです……。

桜のはかない美しさ×ドロドロの性愛小説のギャップに、読者のみなさんもきっと魅了されることでしょう。

 

 

 桜にまつわる小説で春を感じてみては?

春の今だからこそ読みたい「桜」をテーマにした作品たちを紹介してきました。小説とともに春を満喫してくださいね。

この記事でご紹介した書籍

♦『小説 秒速5センチメートル』 新海誠(著)、角川文庫
♦『桜の森の満開の下・白痴 他十二篇』坂口安吾(著) 、岩波文庫
♦「新釈・桜の森の満開の下」
新釈 走れメロス 他四篇』所収 森見登美彦(著) 、祥伝社文庫
♦『檸檬』梶井基次郎(著) 、280円文庫
♦『桜の樹の下で』上下巻 渡辺淳一(著) 、新潮文庫

 

以下では、この他にもさまざまなテーマの小説をご紹介しています。
興味のある特集をぜひ覗いてみてください^_^