面白い!現代に歴史上の人物が登場するエンタメ小説
更新日:2016/10/26
「あの歴史上の人物が現代に現れたら?」
一度はそんなことを空想したことがある人は多いのではないでしょうか。
時代小説とはまた違った趣向のエンタメ小説で、現代に生きる主人公が過去にタイムスリップする作品は多いものの、過去に実在した人物が現代に甦る作品というのは意外と少ないものです。
今回はそんな「あの歴史上の人物が現代に現れたら?」を描いたおすすめのエンタメ作品をまとめてみました。
アドルフ・ヒトラーが未来で目覚めた
『帰ってきたヒトラー』
ティムール・ヴェルメシュ(著)、森内薫(訳)
河出書房新社
1945年にピストル自殺をして、ガソリンで遺体を焼かれたはずのアドルフ・ヒトラーが目覚めた先は、2011年8月30日のベルリンの空き地でした。
戦前の記憶はそのまま残っているヒトラー。名前を聞かれ「アドルフ・ヒトラーだ」 と答えるものの、誰一人ヒトラー本人だとは気づかず、ヒトラーの格好をしたコメディアンだと勘違いします。
キャラクターの強さが面白がられて、テレビ番組に出るようになるヒトラー。ヒトラーは昔のように演説を行いますが、「手の込んだ風刺だ」と周囲は喝采を贈ります。また、その様子がYoutubeにアップされると、みるみる再生回数が上がっていきます。
自分の時代にはなかったテレビやYoutubeの存在を知ったヒトラーは、それらを巧みに使い、人々を魅了し支持されるようになります。そして、政治家になって、戦前では果たせなかったことを叶えようとするのです……。
読んだあと、きっとあなたは背筋がぞわりとするでしょう。人々がいかに簡単に洗脳されるのかということに……。
ニーチェがわたしに会いに来た!?
『ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。』
原田まりる(著)、ダイヤモンド社
17歳のアリサが京都の祇園近くにある安井金比羅宮(通称・縁切り神社)で、新しい良縁に結ばれますようにと願ったその日、 「私はニーチェだ。お前に会いに来てやった」と一人の男が現れます。
それから、ニーチェ、キルケゴール、サルトル、ショーペンハウアー、ハイデガー、ヤスパースなど、哲学の偉人たちが現れ、アリサに哲学を教えてくれるようになります。
この作品が他の作品と違うのは、「著名な哲学者たちを現代にあったキャラクターにしている」ところ。作者が哲学者たちについて書かれた書籍を読み込み、生い立ちや性格、趣味・思考、外見などから得たイメージを、現代的キャラクターに落とし込んでいるのです。
ニーチェは、こだわりの強いスマホゲームの開発者。キルケゴールは、黒づくめのファッションを好む、孤高のカリスマ読者モデル。ハイデガーは京都大学の教授などなど……。
現代的に アレンジされているため、初学者でもイメージを持ちやすく、哲学者たちの発言が頭にスッと入ってくることでしょう。とっかかりにくい哲学を学ぶには最適の作品といえます。
森鴎外が21世紀にタイムスリップ!
『タイムスリップ森鴎外』
鯨統一郎(著)、 講談社
大正11年7月8日の夜中、61歳の森鴎外は自宅の観潮楼を抜け出して渋谷へ向かっていました。何者かの殺意を察知し、最後の作品を渋谷の宿で書こうとしたのです。
その途中、鴎外は崖から落下してしまい、気がついた先は80年後・21世紀の日本でした。
鴎外が現代の若者に因縁をつけられているときに、現れたのがミニスカートの女子高生二人組。鴎外が森林太郎と本名を名乗ったことより、アダ名はモリリンと呼ばれるようになります。
書店にいって自分の本が出ていることを確かめたり、現代の人気作家の小説を読んでみたり、ジーパンにTシャツを着こなし、ワープロに驚いたり、ファストフード店にひとりでいったり……。
知的好奇心の赴くままに現代をエンジョイしていた鴎外でしたが、ある日奇妙な事実に気づきます――。
見るもの聞くもの全てに戸惑いながらも、意外と適応していく鴎外にはつい笑ってしまうこと間違いなしです。ミステリー色も強いので、森鴎外と一緒に謎を解いている気持ちになれますよ。
現代に織田信長現る!
『殿がくる!』
福田政雄(著)、集英社
主人公は、気弱で小柄で善良な高校二年生・丹羽新一郎。高校で宿題を忘れ、ささいなミスでバイトをクビになり、返却されたテストも悪かった。そんなツイていないことが立て続けに行った日の帰り道、チンピラ二人組に突然殴られカツアゲされそうになります。
そんなとき、黒い和服を着た男が登場するのです。「わが名は織田上総介信長である!」と言って。
マクドナルドのハンバーガーを食べる姿を見て「うむ。信長も腹がすいた。馳走になろう」と立ち上がる信長。カウンターの向こうの食料の豊富さに驚きあきれ、ハンバーガーのカラー写真に驚嘆し、コーラが勢いよく出てくるのを見ては、そのつど声を上げている信長。想像するとつい吹き出してしまいますよね。
ヤクザの事務所を壊滅させるなど、信長らしい部分も存分に描かれており、ライトノベルならではの軽いタッチながらも読み応え十分の一冊となっています。
新撰組が降ってきた!
『まぼろし新撰組』
栗本薫(著)、角川書店
主人公は、家庭環境が理由でグレていた金髪の高校二年生・須藤ユキ。幼なじみの芦川佳奈とともに、毎日をつまらないと思いながら過ごしていました。
ある日、日本刀を持った侍が5人降ってきます。仰天するユキでしたが、男たちは自分たちを「新撰組」の近藤勇・土方歳三・藤堂平助・永倉新八・沖田総司だと名乗ります。
そう、5人は、芹沢鴨を暗殺した場所から、平成の世にタイムスリップしてしまったのでした!
アルマーニのスーツを着る土方歳三など、現代の時代にすんなりと馴染んだ姿は読んでいて面白いですよ。
ユキと沖田総司の恋物語も描かれており、今流行りの「歴女」の方には特にオススメできる作品となっています。
栗本薫さんといえば、「グイン・サーガ」などファンタジー小説で有名な作家で知られていますが、本書でもさすがの筆力で読者を魅了してくれますよ。
小説を読みながら歴史も学べて一石二鳥
今回は、あの歴史上の人物が現代に現れたら?を描いたエンタメ小説5作品を紹介しました。
どれもこれも面白いのでぜひ読んでみてくださいね。歴史も学べてタメになりますよ。ぜひ読んでみてくださいね!
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