ブックオフオンラインコラム
ブックオフオンライントップへ
ブックオフオンラインコラム > 本に出会う > 小説(テーマ別) > ホラー?ファンタジー?SF?独特の余韻を残す幻想小説4選

ホラー?ファンタジー?SF?独特の余韻を残す幻想小説4選


20160814-1

筆舌に尽くしがたい独特の余韻を残す幻想小説。ここでは、そういった物語がつまった作品集を紹介していきます。ホラーやファンタジー、SFなどいろいろな物語を用意しました。

 

都市伝説セピア』/ 朱川湊人

20160814-2

~あらすじ~

氷漬けにされた河童を見世物小屋で見た「私」。その河童はまるで人間の子供のよう……。
本当に河童なのか? 河童と前歯のない少女と「私」の物語「アイスマン」。

遠藤はかつて、ループする時間の中で、死んでしまう友人を何度も救おうとしていた。しかしそこでは毎回残酷な出来事が待っていて――残酷すぎるループを描いた「昨日公園」。

「私」は自らの手で都市伝説を作ろうとしていた。そこで一体の怪人を作りあげ、自らがそれに扮装する――怪人になり済ます「私」を描いた「フクロウ男」。

他2篇を収録した恐ろしくもどこか切ない作品集。


ノスタルジックな切なさと背筋が寒くなる恐ろしさ

本作は、直木賞作家朱川湊人さんのデビュー作で、ホラーあり、ミステリーあり、ファンタジーありの短編集となっています。

収録された5つの作品はジャンルがそれぞれ異なりますが、癖のない端正な文体で描かれているという共通点があります。本作は朱川湊人さんの作家性が滲みでていて、著者の魅力を知ることのできる一作となっています。

朱川湊人作品を読んだことのない方にまずお勧めしたい作品です。

都市伝説セピア朱川湊人(文春文庫)

 

龍宮』/ 川上弘美

20160814-3

~あらすじ~

とある男はタコと出会い、彼から話を聞いていく。女好きのタコの下品で生々しい話を描いた「北斎」。

毛むくじゃらでモグラのサラリーマンは、飛び降り自殺した無気力な人間を収拾していた。
モグラが人間を飼う話「鼹鼠」。

霊力を持つ祖母イトについて描いた不可思議な作品「龍宮」。

他五編が収録された日常と非日常を行き来する不思議な短編集。


圧倒的な幻想文学

本作は、エンターテイメントと言うよりは、純文学に近い作風となっています。
そのため、語られる話のどれもが静謐で、大きな起伏はありません。
ただ、芥川賞受賞作家の著者が描く文章が魅力的で、ついつい先を読みたくなる作品となっています。

どの話も日常と遊離した幻想的な世界を描いていて、読後に不思議な読み味を残してくれます。

龍宮川上弘美(文春文庫)

 

竜が最後に帰る場所』/恒川光太郎

20160814-4

~あらすじ~

シャランと錫の音が鳴った。家の前に「夜行様」がやってきたのだ。「ぼく」も「夜行様」が率いる人の列に加わり、彼らについていく――真夜中を旅する不思議な集団の物語「夜行の冬」。

携帯電話に偽装する蟻。ポストに化けたテントウムシ。生物が別の物に化けた「擬装集合体」について描いた「鸚鵡幻想曲」。

不思議な生物の一生を描き、作品タイトル「竜が最後に帰る場所」にもつながる話「ゴロンド」。

他2篇を加えた、日常と幻想の狭間を描いた作品集。


幻想的な世界観

著者の恒川光太郎さんは日常と非日常の狭間を描くことを得意とする作家さんで、そこが著者の大きな魅力です。本作でも、その魅力が全面に出ています。美しく幻想的な文章でつづられる本作はどこか浮世離れしていて、現実を忘れさせてくれるような作品となっています。

本作の中でイチオシは「夜行の冬」です。人々が列を作って、どこに向かうかもわからない旅をするこの話は読後に不思議な余韻を残す作品となっています。

竜が最後に帰る場所恒川光太郎(講談社文庫)

 

ジャイロ・スコープ』/ 伊坂幸太郎

20160814-5

~あらすじ~

「セミンゴ」という謎の生物が暴れる荒涼とした世界。そんな世界でバスに乗って移動する複数の老若男女を描いた「ギア」。

社会人の山本は、通勤途中のバスで、バスジャックに遭遇する。どうにかしてこの状況を乗り切ろうと考えるが、結局バスジャックに屈してしまう。
あの時ああしていれば……という後悔を解消してくれる「if」。

その日の新幹線は、なんだかおかしい。
もしかして車両が移動するたびに、時代を遡っているのでは……? おかしな新幹線から一人の女性の人生が見えてくる「彗星さんたち」。

全7編の短編に加え、著者伊坂幸太郎さんの特別インタビューが掲載されている珠玉の作品集。


新たな伊坂幸太郎

伊坂幸太郎さんといえば、伏線を巧みに操る緻密な構成を得意としたエンタメ作家です。
ただ、本作『ジャイロ・スコープ』は、そういった作品に加え、純文学的な色合いが強い作品もいくつか収録されています。
特に謎の生物セミンゴについて描いた『ギア』は、非常に難解な作品となっています。そういう意味で、伊坂幸太郎さんの新たな一面を見ることのできる作品であるといえます。

本作は、この他にも特徴があります。それは、不思議な読み味の作品が多いという点です。
ファンタジーなのかSFなのかあるいはそれらを装ったただのトリックなのか。終盤までそういった部分が曖昧なまま展開されていく物語が多く、どういった結末を迎えるのか読めない作品ばかりです。

SF、ファンタジー、ミステリーと話のバリエーションに富んでいて、この1冊でいろいろな楽しみ方のできる作品集となっています。

ジャイロ・スコープ伊坂幸太郎(新潮文庫)

 

まとめ

上述した4作は、中短編集なので、空いた時間にさくっと読めます。幻想的な読書体験をしたい方は是非参考にしてみてください。

川上弘美さんと恒川光太郎さんは、このほかにも幻想的な作品をいくつも書いているため、上述した作品を気に入りましたら、2人の別作品を手に取ることもお勧めです。

 

【関連記事】

ライター

ツナシ
青春小説とミステリー小説が好きな20代。ライトノベルから純文学まで読みますが、浅く広くといった感じです。小説は読むのも好きですが書くのも好きです。
先日某小説新人賞を賜り、現在出版に向けて作業中。