香月日輪「妖怪アパートの幽雅な日常」あらすじ・内容|デトックス効果抜群の小説!
更新日:2016/8/7
『妖怪アパートの幽雅な日常』
香月日輪(著)、講談社
小説・漫画を含めた累計発行部数が370万部をこえる大ヒット作「妖怪アパートの幽雅な日常」。読んだことはなくても、タイトルは聞いたことがある…という人は多いのではないでしょうか。
通称「妖アパ」は、産経児童出版文化賞フジテレビ賞を受賞していることもあり、児童向け作品(ジュブナイル)と思われがちですが、描かれている世界は深く、大人でも充分楽しめる作品となっています。
読み終わると不思議と気持ちが軽くなる「妖アパ」シリーズ。その爽やかな読後感は、デトックス(体内に溜まった毒物を排出すること)効果を持つといっても決して大げさではありません。
本書を読んで、疲れた身体を軽くしてみてはいかがでしょうか?
『妖怪アパートの幽雅な日常』あらすじ
中学1年生の時に、交通事故で両親を亡くした稲葉夕士。
夕士は、親戚の家で肩身の狭い思いをしながら3年間を過ごしたため、寮ありの高校に入学することを決意します。そして、いよいよ寮のある高校に入学するという矢先に、寮が火事のため入居できなくなってしまいました。
一刻も早く親戚の家を出たい夕士は、”駅へ歩いて10分、間取りは2畳の板間と6畳の和室。トイレと風呂は共同で、まかない付きで家賃は2万5千円“の寿荘に入居することに。
実は寿荘とは、妖怪や幽霊、ヘンテコな人間たちが住む「妖怪アパート」でした!
メッセージ性の強い名言が心に響く
文中にはメッセージ性が高い名言も多く、私自身、ついノートに書き留めた言葉もたくさん。
特に、「君の人生は長く、世界は果てしなく広い。肩の力を抜いていこう。」という一言は、夕士の座右の銘となり、最終巻の10巻までことあるごとに出てくる言葉です。
この言葉は、妖怪アパートに入居したばかりの頃、妖怪たちの存在に困惑していた夕士に、登場人物の龍さんが言った言葉です。
そして、この言葉を機に、夕士の価値観は拡がっていきます。
俺の世界も、俺のいる世界も果てしなく広い。まだ見ぬ世界があり、俺自身まだ知らない「俺」がいるんだ。そう思うと、すごくワクワクする。(妖怪アパートの幽雅な日常 4 p26 )
四季折々の旬の素材を使った料理描写
妖怪アパートには、るり子さんという賄いさんが登場します。るり子さんは「手首」だけの幽霊。
生前、るり子さんは小料理屋を開くことを目標に資金を貯めていました。が、志半ばでバラバラ殺人の被害に遭い幽霊に。
そのため「手首」だけで料理を作り、妖怪アパートの住人たちが「美味しい!」と言って自分の料理を食べてくれることが何よりの喜びなのです。
年中腹ペコの夕士も、るり子さんの料理で心も体も健やかに成長していきます。
るり子さんが作る四季折々の旬の素材を使った料理は、読んでいるだけでお腹が減ってくる「飯テロ」の魅力を持っています。
桜鯛の刺身に塩焼き、トコブシの醤油焼き、蕪の琥珀蒸し、わかさぎのから揚げ、よもぎしんじょ、ぜんまいと蕗の煮物、生湯葉と菜の花の炊き合わせと、食卓はまさに春爛漫だった。おまけに鳥釜飯とサケ茶漬けとくれば、古本屋はもう大感激だ。
桜鯛の刺身は、細かく砕いた氷の上に桜の葉をしき、その上にイカとホタテの刺身とともに盛り付けられ、桜の花が添えられている。蕪の琥珀蒸しの上には、タンポポの花びらが散らされ、その黄色がとても映えた。よもぎしんじょの春緑には金箔がのせられている。なんてすみずみまで行き届いているんだろう。和食の真髄を見るようだ。(妖怪アパートの幽雅な日常 2 p50)
ね、おいしそうでしょう?
妖アパ読者の中にもるり子さんファンは多く、料理を再現するレシピ本まで発売されています。
レシピ本はこちら!『妖怪アパートの幽雅な食卓 るり子さんのお料理日記』
感涙必至!じんわりとした感動
妖怪アパートで起こることは、夕士の常識を覆すようなことばかり。
親戚の家では「それはわがままだから」と自分に言い聞かせ、自分の心を押し殺して生きてきた夕士。夕士のかたくなな心は、ユニークなアパートの住人たちの行動やあたたかさに溶かされていきます。
徐々に価値観や生き方を変えていく夕士の姿は感涙必至! じんわりとした感動をもたらしてくれます。
デトックス効果抜群!爽やかな読後感を味わおう
読後感が気持ちの良い「妖アパ」シリーズ。ぜひ味わっていただきたいと思います。
なお、「妖アパ」はシリーズ化されており、10巻で完結する構成となっています。1冊ごとの読み切り作品となっているので途中からでも読むことはできますが、興味をもった方はまず1巻から読んでみることをお薦めします。
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