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日本に蔓延る妖怪たちの物語! おすすめ妖怪もの作品


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日本で、その存在を古くから言い伝えられている”妖怪”。ただただ恐ろしいものから、人間の道しるべとなってくれるものまで、その姿は多種多様。とても不思議な存在です。

夏になると、お祭りなどで夜に神社やお寺に行ったりするせいか、特に妖怪ものが読みたくなってしまう……という方もいるのでは?

今回は、妖怪ホラーや妖怪ミステリーの時代小説をご紹介します。日本の夜に潜む恐ろしい妖怪たち、その世界を少し覗いてみませんか?

 

虚弱体質の若だんなが、妖怪とともに事件を解決!

しゃばけ
畠中恵(著)、新潮社

大人気「しゃばけ」シリーズの第1作目にあたる長編小説です。

江戸の薬種問屋、長崎屋の若だんなである一太郎は、体の弱い虚弱体質。そんな一太郎を守るため、祖父は、犬神と白沢という二人の妖怪を連れてきて、長崎屋の手代として働かせることにしました。

ある日、月のない夜道を一太郎が歩いていると、物取りのような声が襲ってくるのを感じます。付喪神の鈴彦姫の力を借りて逃げ果せますが、その先で何者かに殺された男の死体を見つけます。

犬神と白沢は一太郎からその話を聞き、妖怪たちに人殺しの件を探らせることにしますが、やがて薬種問屋ばかりを襲う事件が相次ぐようになります。妖怪たちの力を借りて、一太郎は事件の謎に迫ります。

一太郎を取り囲む妖怪たちは、みんな個性豊か。優秀なようでいてちょっと抜けていたり、可愛らしい妖怪たちに、心がほっこりします。

■『しゃばけシリーズ』はこちら

 

事件・困難を「妖怪の仕業」に仕立てる「仕掛け」

巷説百物語
京極夏彦(著)、角川書店

ドラマ化やアニメ化もされた人気シリーズ「巷説百物語」の1作目。

戯作者志望の男、百介は、諸国の怪異譚を聞き集め、いずれ百物語本を出すことを志していました。ある日、百介は旅の途中に雨宿りのために立ち寄った小屋で、山猫廻しの女、御行の男、初老の商人、坊主の4人と居合わせます。御行の男・又市が、怪談話で夜を明かそうと持ちかけ、山猫廻しの女と商人が不思議な怪談を話し始めます。すると、話を聞いていた坊主の顔色が変わり、大声で叫びながら外へ飛び出していきます。

人の心の闇が生んだ事件を、「妖怪のしわざ」に仕立て上げて収める、又市の一味。そして、そんな又市たちと関わることになる百介。鮮やかで小気味良いテンポで進むストーリーに引き込まれます。

■『巷説百物語シリーズ』はこちら

 

天才陰陽師が、平安の世に潜むあやかしと対決

陰陽師
夢枕獏(著)、文藝春秋

舞台は平安時代。まだ闇が闇として残り、都にも“もののけ”が棲んでいた時代です。天才陰陽師である主人公・安倍晴明と、その友人、源博雅の二人組が、怨霊やあやかしが起こす事件を解決していく姿を描きます。

冷静で聡明な晴明と、武士であり武骨なところのある博雅の掛け合いが面白く、まるでホームズとワトソンの会話のよう。

平安の夜の闇とそこに潜むあやかしは、恐ろしくも悲しく、かつ美しく描写され、うっとりとさせられます。

野村萬斎さん主演で映画化もされ、陰陽師ブームを巻き起こした大人気シリーズ。妖しい平安ホラーの世界にどっぷりとのめり込むことができます。

■『陰陽師シリーズ』はこちら

 

連続殺人事件は、妖怪の仕業か、人間によるものか

東亰異聞
小野不由美(著)、新潮社

舞台は明治29年の帝都・東亰(とうけい)。ここでは、不可思議な連続殺人事件が起きていました。火に包まれて消える「火炎魔人」や、辻斬りをする「闇御前」など、どれも人間のしわざとは思えない奇怪なものばかり。新聞記者である平河新太郎と、大道芸師の万造は、この事件の謎を追ううちに、旧華族・鷹司家のお家騒動に行き当たります。

奇怪な事件の数々は、本当に妖怪のしわざなのでしょうか。それとも、事件には人の手が関わっているのでしょうか。明治という「江戸」と「近代」の移り変わりの時代を舞台に、平河と万造が事件の真相に迫ります。

ホラーとミステリーの両方の要素を兼ね備えたストーリー展開で、最後にはあっと驚く衝撃的な結末が待っています。

 

日本の妖怪小説の原形

口語訳 遠野物語
柳田國男(著)、佐藤誠輔(訳)
河出書房新社

明治時代の民俗学者・柳田國男が、岩手県の遠野に伝わる伝承や民話を蒐集し、収録した作品です。その多くは遠野出身の民話学者、佐々木喜善から聞き取り、書かれたものと言われています。

ザシキワラシや天狗、河童、雪女など、現在でもよく知られる妖怪の数々が登場し、民間伝承として古くから語り継がれてきた妖怪の姿を鮮やかに伝えてくれます。柳田國男は日本民俗学の始祖と呼ばれ、彼によって編纂された「遠野物語」は現在の日本の妖怪小説の原形ということもできるでしょう。

柳田國男によるオリジナルは文語体で、読みにくいと感じる方も多いかと思いますが、佐藤誠輔さんの手がけたこちらの口語訳はとても読みやすく翻訳されています。

 

少し、ゾクッとしたい方に

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今回ご紹介した小説の中には、人に悪事をはたらく妖怪から、人を助けてくれるちょっとユーモラスな妖怪まで、様々なタイプの妖怪が登場します。そして人間も、時には妖怪よりも恐ろしい存在になることも……。

どの本も、少し背筋がゾクッとなる恐怖や驚きを与えてくれます。ホラーやミステリーの好きな方、時代小説の好きな方におすすめできる作品ばかりですので、ぜひ一度手にとってみてくださいね。